オグリの里
ストーミーワンダー、安らかに
笠松の大将、嵐のように駆け抜けた

2020年05月30日 10:53

飛山濃水杯のパドック、重賞5勝馬ストーミーワンダー最後の雄姿

 笠松の大将・ストーミーワンダー(笹野博司厩舎、馬主・結城喜一)が、5月22日の第2回飛山濃水杯のレース中、右後ろ脚を骨折するアクシデントに遭い、競走を中止し、天国に旅立った。牡6歳で誕生日を迎えたばかりだったが、嵐のように駆け抜けて、去っていった名馬。力強い走りをファンは忘れない。

 笹野調教師や厩務員さんは、管理する馬たちをわが子のように大切にし、脚元のケアなどにも愛情を注ぎながら懸命に育ててきた。レース中、競走馬と騎手はいつも馬体故障や落馬事故の危険と隣り合わせで、体を張った命懸けの戦いに挑んでいる。笠松久々のスターホースとして思い入れが強かった馬で、活躍を知る多くのホースマンや応援したファンたちのショックは大きい。それでも、けがと闘いながら頑張って走ってきた。多くの重賞Vをもたらしてくれた。悲しいが、地元コースで人馬ともに全力を注いだ結果である。安らかに眠ってほしい。

 馬主さんはツイッターで「飛山濃水杯に出走した愛馬ストーミーワンダー号は、レース中の骨折で帰らぬ馬になってしまいました。今まで応援していただきました皆さま 本当にありがとうございます」とメッセージ。「常に脚元との戦いの中、懸命にケアしていただきました先生(笹野調教師)をはじめとする厩舎スタッフの皆さま、攻め馬をつけていただいた藤原幹生騎手、佐藤友則騎手、渡辺竜也騎手、本当にありがとうございます」と伝えた。悲しみの中での誠意にあふれる言葉は、胸を打つものがある。ファンは活躍をしのんで「大好きでした」「たくさんの夢や感動をありがとう」などと感謝の言葉を送っている。

白銀争覇で重賞初Vを飾ったストーミーワンダー

勝利は笹野博司調教師(中央)への誕生日プレゼントにもなった

 飛山濃水杯は昨年創設されたレースで、ストーミーワンダーは初代王者となり、1番人気で連覇を目指した。距離は昨年の1600メートルから1400メートルに短縮された。フルゲート12頭立てにするためでもあったが、1600メートル戦を9戦9勝と得意にしていただけに、微妙な影響があったのか。笠松では装鞍所騎乗が多かったストーミーワンダーだが、この日は渡辺騎手の騎乗でパドックを周回。無観客で入れ込みもなかった。

 1、2コーナーを4、5番手で回り、勝負どころの3コーナーへの下り坂辺りでアクシデントが発生。ズルズルと後退し、渡辺騎手は懸命に止めて下馬。4コーナー過ぎで厩務員さんと馬運車に乗り込む姿が競走馬としての最後になろうとは...。右第1趾骨粉砕骨折と診断され、予後不良となった。

 昨春は高知・黒船賞、東海桜花賞での出走を脚部不安のため取り消し。今年に入っても、捻挫などで脚元の不安をいつも抱えながらの調教、本番レース。前走から中1週で日程的にややきつかったこと、12頭立てでの速い流れの中、内目の3番枠で窮屈な展開になったことも影響したのか。

 父・ストーミングホーム、母・ラッシュウインドという血統。3戦とも完敗続きだった中央から笠松・笹野厩舎に移籍し、秘めた才能が開花。9連勝もあり、地方競馬では30戦18勝と勝率6割の好成績。カツゲキキトキト、タガノゴールドを倒して、東海地区を代表するトップホースに成長。ラブミーチャン以来となる「笠松10年周期の超大物」として応援し、さらなる飛躍を期待していた。多くのファンに愛されたストーミーワンダー。昨年の「オグリの里十大ニュース」では堂々の1位だった。


 ①ストーミーワンダー重賞5勝、カツゲキキトキト倒す
 「強豪を次々撃破、笠松の大将だ」。1月の白銀争覇を制覇し重賞初V。夏から快進撃が始まり、飛山濃水杯、くろゆり賞、遠征先での金沢スプリントC(金沢)、姫山菊花賞(園田)を含めて重賞5勝。くろゆり賞では、東海地区最強馬のカツゲキキトキトを一気に抜き去る強い競馬。「キトキトと並んで、早めでも手応えがあり、勝てると思いました」と渡辺騎手。姫山菊花賞でもロングスパートを決めてタガノゴールドを圧倒。馬名の通り「嵐のような驚き」の走りを見せてくれ、「笠松にストーミーワンダーあり」をアピール。各地のエース格を次々と倒し、全国区の強豪馬になった。佐藤騎手で2勝、渡辺騎手で3勝。1600メートル戦に強く9連勝(前走含め)。笠松のスターホースとして、JRA馬と戦うダートグレード競走でも嵐を巻き起こしたい。


 笹野調教師の誕生日(1月10日)に重賞を勝ち、渡辺騎手にも重賞初Vをプレゼントした。

 白銀争覇で騎乗した佐藤騎手は「4コーナーで先頭に立って『先生への誕生日プレゼントになったなあ』と。余力たっぷりのVでした。笠松にとっても期待が大きい馬で、オープンで勝っていく力がある」と、スター誕生を喜んだ。

昨年の飛山濃水杯では渡辺竜也手に重賞初Vをプレゼントしてくれた

 昨年6月の飛山濃水杯、渡辺騎手がファンの大声援に背中を押されて、歓喜のゴール。6番人気だったが「ようやく重賞を勝ててうれしいです。こんないい馬に乗せていただけ、反応が抜群に良く、勝負どころでしっかりと伸びてくれた」と喜びに浸った。

 笠松競馬場にファンがまだ来場していた今年2月。昨年の成績優秀者表彰が行われ、ストーミーワンダーは年度代表馬ともいえる「4歳以上最優秀馬」に選ばれ、馬主さんも出席し、重賞5勝の活躍がたたえられ、祝福を受けた。調教師部門では4年連続リーディングの笹野調教師(3回目の受賞)が表彰を受けた。

嵐となったくろゆり賞では勝負強さを発揮し、カツゲキキトキトを倒した

 最後のレースとなった飛山濃水杯。ストーミーワンダーは「馬体故障のため競走中止」とだけしか発表されていない。JRAではレース中の馬体故障などで競走馬が亡くなれば発表されるが、地方競馬ではほとんどない。応援していた馬が「行方知れず」になっているケースも多いが、競走馬あっての競馬場であり、生死に関わるような人馬の動向はできる限りオープンにしてほしいものだ。

 笠松競馬の名馬では、1989年に全日本サラブレッドカップ連覇を目指したフェートノーザン(牡6歳)が、レース中の骨折が原因で亡くなった。2010年、東海ダービーなど年間重賞8勝を挙げたエレーヌ(牝3歳)は過酷なローテーションが響いたのか、「笠松競馬場の厩舎にて心不全により死亡した」と県地方競馬組合から発表された。ラブミーチャンとともに3歳最優秀馬として表彰された名牝だった。

ナイターで行われた姫山菊花賞ではタガノゴールドに完勝。渡辺騎手はストーミーワンダーで重賞3連勝を飾った

 ストーミーワンダーが5着だった2月のウインター争覇。優勝したキタノナシラ(セン馬5歳、森山英雄厩舎)、3着・ニューホープ(牡4歳、田口輝彦厩舎)はともに4月30日のレース中に馬体故障を発生。ゴール手前で失速し、騎手が下馬したキタノナシラは予後不良となり、亡くなった。笠松はダートコースではあるが、800メートル戦で47秒台が出るなど、近年は高速馬場化も進んでいる。フルゲート12頭立てになり、第1コーナーへの先陣争いは激化。小回りでコーナーはきつく、競走馬の脚への負担が増しているように思える。

 重賞ウイナーたちの相次ぐ馬体故障。6月下旬から笠松では馬場改修が行われるが、競走馬の脚元には、より優しいコースであってほしい。「レースでは、勝つこと以上に無事に戻ってくることが一番」。厩舎スタッフたちの思いは皆同じだ。笠松競馬に関わる全てのホースマンは、騎手や競走馬の安全確保を第一に、毎日の業務に励んでいただきたい。

 ストーミーワンダーの最後の手綱を取った渡辺騎手は、飛山濃水杯直後の12Rを勝利。24日の佐賀ヴィーナスカップには、笹野厩舎のヴィクトアリー(牡5歳)で挑戦。5番人気で3着に食い込み、遠征競馬で好結果を残した。気持ちを切り替えて、自厩舎の馬で前を向いて戦う姿にホッとしたし、頼もしく感じられた。スターホースを失った笠松競馬だが、東海ダービー優勝候補のニュータウンガールら新世代の成長も期待できる。4年連続リーディングの「チーム笹野」は、優秀なスタッフで新たなヒーロー、ヒロインを育てていきたい。
 
 ありがとう、ストーミーワンダー。悪天候や遠征など、過酷な条件でもたくましく駆け抜けた雄姿はもう見られないが、オグリキャップら歴代名馬とともに大空を駆けながら、笠松競馬場を見守っていってくれることだろう。