オグリの里
「花・花コンビ」 ダートグレード競走、始球式デビュー

2020年10月02日 13:32

笠松、名古屋で計11勝を挙げている深沢杏花騎手。夢舞台であるダートグレード競走の白山大賞典にも挑戦した(笠松競馬提供)

 今年4月、笠松競馬で20年ぶりの女性ジョッキーとしてデビューした深沢杏花騎手(18)と、笠松実習を経て昨年10月に岩手でデビューした関本玲花騎手(20)。2人は笠松競馬場つながりの「花・花コンビ」。9月29日にはそれぞれの「遠征先」「出張先」となった金沢競馬場とプロ野球のスタジアムでも「デビュー戦」を迎え、夢のステージで貴重な体験をした。

 ■深沢杏花騎手は、武豊騎手やルメール騎手とゲートイン

 深沢杏花騎手は地方・中央交流の「ダートグレード競走」にチャレンジするチャンスをもらい、白山大賞典(GⅢ)にリンクスゼロ(牡6歳、湯前良人厩舎)で挑んだ。JRA勢は5頭で、武豊、クリストフ・ルメール、川田将雅騎手らが騎乗。地元・金沢からは吉原寛人騎手、兵庫からは田中学騎手が参戦した。

 金沢競馬場でも観客入りレースが再開され、この日は1481人が入場。白山大賞典でのパドック前には、大勢のファンが見守り、競馬場らしい活気が戻った。リンクスゼロは中央2勝馬で、GⅠの朝日杯FSにも出走(16着)した実績馬。地方では高知から笠松に移籍し、深沢騎手が主戦を務めてきた。

 単勝11番人気。相手はJRAの強豪馬ぞろいで、厳しいレースになると分かってはいた。それでも、日本競馬界のトップジョッキーたちとゲートインし、好スタートを決めた深沢騎手。JRA勢には付いていけず、大差のしんがり負けになったが、名手たちの背中を最後まで懸命に追ってゴールした姿は立派で、素晴らしい経験になった。勝ったのは川田騎手騎乗のマスターフェンサー、2着は武豊騎手のロードレガリス。地方馬最先着は吉原騎手のリンノレジェンドで5着だった。

4月に笠松競馬場でデビューした深沢騎手。紹介セレモニーは無観客で行われた

 笠松競馬場では西スタンドも入場エリアに加わり、入場者の上限は先着480人になった。場内売店の営業も再開され、場外馬券を買う来場者の楽しみが増えた。笠松ファンの中には、深沢騎手の名前が印字された単勝、複勝の「がんばれ馬券」を100円ずつ購入した人もいたことだろう。的中する可能性は低くても、応援する人馬への思いが詰まった記念馬券のコレクターは多い。色あせないようにホルダーなどに入れて、永久保存したいものだ。ちなみに「マイお宝馬券」は、武豊騎手騎乗のハルウララ(高知)=連敗続きで当たらない交通安全のお守り=と、藤田菜七子騎手騎乗のタッチデュール(笠松)=盛岡・クラスターカップ12着=などである。

JRA勢が圧倒的に強いダートグレード競走。白山大賞典もダートグレード認定後は、JRA勢が22勝を挙げ、地方馬は金沢の1頭のみ(2007年のビッグドン)。近年、実力差は開いており、地方馬の場合、レース賞金よりも出走手当狙いで参戦するケースも多い。これには、レース間隔が厳しかったりして批判的な声もあるだろうが、競馬ビジネス的には「あり」だと思う。笠松にはトウホクビジンのように、全国の競馬場で歴代最多の重賞競走130レースに出走した「鉄の女」もいた。ダートグレードは若いジョッキーには、なかなか経験できない大舞台でもある。湯前厩舎は、ナラ(牝4歳)などもいて遠征競馬に積極的で、所属する深沢騎手の重賞参戦も今後増えそうだ。

 盛岡・ダービーグランプリ(10月4日)には、岐阜金賞馬ダルマワンサ(牡3歳、田口輝彦厩舎)が筒井勇介騎手で挑戦。東海ダービー馬ニュータウンガール(牝3歳、井上孝彦厩舎)は水野翔騎手の騎乗予定だったが、残念ながら出走を回避した。全日本2歳優駿Vのヴァケーション(川崎)も回避となり、ダルマワンサにも上位進出のチャンス十分。豪快な一発を期待したい。

関本玲花騎手はプロ野球・楽天―ソフトバンク戦の始球式に登板し、大きな拍手を浴びた(岩手競馬提供)

 ■関本玲花騎手は、楽天戦で始球式に登板
 
 関本玲花騎手は、楽天生命パーク宮城で行われた楽天―ソフトバンク戦で始球式にチャレンジした。岩手県競馬組合と競馬モール株式会社(楽天競馬)が協賛し「岩手競馬ナイター」として実施された。ライブ映像で見守ることができた。

 試合前のセレモニーでは、塚本涼人騎手と関本騎手による記念品贈呈、大抽選会や蹄鉄投げゲームも実施された。笠松で期間限定騎乗の経験もある岩手リーディングの山本聡哉騎手も4年前、始球式に登板。見事な「ストライク」を決めたことがあった。

 関本騎手はレースで着用する勝負服姿で始球式のマウンドに登場。笑顔を見せながら振りかぶると、思い切りの良いノーバウンド投球。左打者のソフトバンク・周東佑京選手に対し、外角に大きく外れて苦笑いとなったが、記念のボールを受け取ると一安心。大役を果たして場内の雰囲気を華やかに盛り上げ、スタンドのファンや両軍ベンチから大きな拍手を浴びていた。

 「練習で投げた時はうまくいったのですが、本番のマウンドでは意外に緊張してしまって、ボールがどこかに行ってしまいました」と岩手競馬のホームページでコメント。ダービーグランプリ、南部杯などビッグレースが続く岩手競馬への応援も呼び掛けていた。 

笠松競馬場での初勝利セレモニーで、ファンと交流する関本騎手

 ■来年1月には笠松で一緒にゲートインか

 深沢騎手に「笠松はいい所だよ」と所属を勧めたのが関本騎手。2人は、調教師の先生や先輩騎手のアドバイスを受けながら、騎乗技術をめきめき向上させて、勝利をこつこつと積み重ねている。9月末までで関本騎手が通算24勝、深沢は11勝。若手女性騎手には負担重量4キロ減の恩恵もあり、「花・花コンビ」と呼ばせてもらうからには、軽量を生かした好ダッシュで「ハナ」を奪って、ゴールでは「ハナ差」で勝利を飾ってほしいものだ。

 冬場の岩手競馬は年明けに開催休止となる。関本騎手は今冬、1カ月余り笠松で期間限定騎乗を行ってブレーク。名古屋も含めて5勝を挙げた。2月のお別れセレモニーでは「好きです笠松競馬。来年も期間限定騎乗で来たいです」とウイナーズサークル前に詰め掛けた大勢のファンに再会を約束していた。新型コロナウイルスの感染状況にもよるが、年明けの期間限定騎乗が決まれば、深沢騎手との「花・花コンビ」初対決、腕比べも実現することだろう。

 また、関本騎手はヤングジョッキーズシリーズ(YJS)で東日本・地方騎手の2位につけており、ファイナルラウンド進出(上位4人)の可能性がある。深沢騎手は西日本・地方騎手の13位だが、11月4日の笠松ラウンド(2戦)で頑張ってファイナリストを狙いたい。年末に開催される園田、阪神でのファイナルラウンドに進めれば、応援に駆け付けたい。