オグリの里
リーディング争い、筒井騎手を追う渡辺騎手

2020年10月16日 12:11

地方競馬通算300勝を達成した渡辺竜也騎手。セレモニーも行われ、今年はリーディング奪取に燃えている

 逃げ切るか筒井勇介騎手(37)、差し切るか渡辺竜也騎手(20)。笠松競馬の騎手リーディング争いは、昨年と同様、ナイスファイトを見せている2人に絞られた。筒井騎手が91勝、渡辺騎手が82勝で「9勝差」。筒井騎手が一歩リードしているが、残り2カ月半あり、渡辺騎手の逆転も可能な数字である。

 今年の笠松競馬は夏場に行われた1カ月半の馬場改修が、その後のレース日程に影響。8月以降は隔週(名古屋と交互に)での開催となり、12月は昨年よりも4日多い13日間もレースが行われ、リーディング争いを面白くしてくれる。

 渡辺騎手は9月24日、笹野博司厩舎のカントナで1着ゴール。デビュー4年目で「地方通算300勝」をスピード達成。ファンの前で行われたセレモニーでは「400勝、500勝を目指しており、300勝は通過点です。恵まれた環境で馬主さんや笹野調教師にたくさん乗せてもらっており、取りこぼしを減らしたい」と、若手のエースとして成長した姿を披露。体調管理を大切にして「来年は大型バイクの免許も取りたい」とプライベートタイムも充実させている。年内の目標はズバリ「リーディングになること」。また「同じ厩舎の水野騎手はとても刺激をもらう存在なので、切磋琢磨(せっさたくま)して笠松のレースを盛り上げたい」と意欲。地元でどっしりと構えて、笠松愛に満ちた騎乗ぶりを見せている。

クイーンカップをボルドープリュネで制覇した渡辺騎手。2着は筒井勇介騎手騎乗のチェリーヒック。2人のリーディング争いは年末まで続きそうだ

 ■爆発力を発揮、固め勝ちで逆転狙う
 
 昨年10月には5勝、4勝と2日で9勝の固め勝ちがあった渡辺騎手。若いエネルギーがはじける騎乗ぶりで、爆発力を発揮して逆転を狙いたい。一昨年の筒井騎手、昨年の渡辺騎手はともに初リーディングのプレッシャーを感じたのか、12月前半戦は1勝どまりと急ブレーキ。トップに大きく引き離されてしまった。その苦い経験を生かしたのが筒井騎手で、昨年12月には白星を量産して、初リーディングを奪取した。
 
 前開催の2日目は、お互い3勝ずつ挙げて譲らず。3日目には筒井騎手が4勝とゴールラッシュ。ハイレベルでの戦いを続けている。来場者からは「渡辺騎手にはリーディングを取ってもらい、JRAの舞台にも挑んで初勝利を飾ってほしい。(同じ笹野厩舎の)水野騎手と2人で競い合って、笠松競馬を盛り上げてもらいたい」と期待する声もあった。

 筒井騎手は7月9日(名古屋)、伊藤強一厩舎のサツキオーゴンで「地方通算1200勝」を達成。「大台である2000勝への通過点として、今年はさらなる重賞制覇、連続リーディングを狙っている。渡辺騎手は勢いがあり、水野騎手は南関東で活躍。大変刺激を受けており、後輩に負けないように騎乗していきたい」と意欲。10月1日の名古屋新設重賞・ベイスプリントを1番人気・ウラガーノ(田口輝彦厩舎)で制覇。うれしい初代王者に輝いた。

 笠松競馬の次回開催は20~23日の4日間。渡辺騎手には、調教師リーディングを独走する笹野厩舎の有力馬に騎乗できる有利さもある。筒井騎手は重賞戦線での「2着男」を返上。秋風ジュニアもベニスビーチ(牝2歳、田口輝彦厩舎)で制するなど勝負強さを発揮し始めた。2人のリーディング争いはマッチレースの様相となり、年末特別シリーズまで続きそうだ。

ニュータウンガールに初騎乗し、名古屋・秋の鞍に挑んだ水野翔騎手

 ■水野騎手騎乗のニュータウンガール「秋の鞍」6着

 笠松のスターホースであるニュータウンガール(井上孝彦厩舎)は足踏み状態。駿蹄賞、東海ダービーVで2冠達成後、岐阜金賞は2着で「東海3冠馬」を逃した。盛岡・ダービーグランプリは出走を回避し、名古屋の3歳重賞「秋の鞍」に参戦。2番人気で「逃げて良し、追って良し」の水野騎手が初騎乗し、ダービー馬復活が期待された。4番手からインを追走したが、3コーナー過ぎから一気にまくる競馬ができず、ゴール前では失速気味で6着に終わった。

 水野騎手は「返し馬からガツンとこなかった。気合を入れたんだけど...」と、本来の走りができなかった騎乗馬に無念の表情。陣営からも「久々の1400メートル戦で速い流れになったが、おとなしすぎたし、行く気がなかった」と。返し馬では、ふわふわした動きもあったし、夏負けが解消されずに、持ち味を発揮できなかった。ストーミーワンダーの旅立ちから5カ月。「笠松の大将格」への期待が高かっただけに、残念な結果に終わったが、まだ3歳で成長途上。寒くなる得意のシーズンに向けて、次走で復活を果たしたい。

 盛岡でのGⅠ「南部杯」には笠松勢3頭がチャレンジ。勝ったJRAのアルクトスからは、30馬身以上も離されて14~16着でのゴール。苦戦は予想はされたが、これが今の笠松勢の実力。注目された笠松・深沢杏花騎手(リンクスゼロ)と関本玲花騎手(ナラ)の「花・花コンビ」初対決は、4馬身差で関本騎手が先着。格上のナラを選んだ深沢騎手にとっては悔しい結果になった。次の「花・花」対決は来年1月の笠松開催か。お互い、逃げ粘るだけでなく、大外一気や馬群を割るような力強い競馬も見せて、存在感を示せるようになりたい。

笠松競馬場内で「大黒社」の屋号を掲げる場立ち予想屋の一岡浩司さん。再開初日には高配当も的中し、ファンの注目を集めた

 ■場立ちの予想屋さん復活

 コロナ対策での無観客開催から7カ月半。笠松競馬場では西スタンドに加え、20日からは中央、東スタンド(ユーホール含む)も入場可能エリアとなる(上限1000人)。21世紀に入って、バブル経済崩壊後の地方競馬サバイバルレースでは、「存続」のキーワードとともに懸命に走り続けてきた笠松競馬。観客入りの場内では飲食店の「競馬場グルメ」とともに、場立ちの予想屋さんも戻ってきた。2004年の存廃ピンチでは、屋根に書かれた「◎笠松競馬は永久に不滅」の文字が印象的で、「場立ちの心意気」を感じたものだ。「大黒社」の屋号を掲げる一岡浩司さんは、近鉄の運転士から転身した異色の経歴の持ち主。お弟子さんを全国唯一の女性予想屋「なでしこ」としてデビューさせ、全国的な注目を浴びたこともあり、廃止のピンチにあった笠松競馬の存続を長年サポートしてきた。
 
 観客入りでの場立ち再開となった5日。「久しぶりに常連さんにもお会いできて、うれしいです」。笠松を主戦場としており、この日は予想した買い目で「高配当が当たり、幸先良い」とご満悦。場立ちを続けるのは「笠松競馬が好きだからね。スタージョッキーが出て、全国で活躍できる名馬が誕生することが願い。ニュータウンガールなども地元(笠松、名古屋)だけ使っておらず、全国の競馬場へ」と語り、「名馬、名手の里」復活を期待する。

 場立ちの予想屋は、中央競馬では姿を消しており、地方競馬ならではの光景。かつて笠松では「もう一つの穴から狙ってみなさいよ」などと声を張り上げていた予想屋もいた。最近はコロナ禍もあって静かだが、レース展開や穴馬などを聞くのがファンの楽しみの一つ。「1レース100円」で予想を販売するスタイルは変わらず。場内の熱気が肌で伝わり、ネット観戦では味わえないライブの臨場感を高めてくれる。競馬場に足を運んで、秋競馬を楽しんでみよう。

 ■元調教師「馬券買った」と認める

 笠松競馬の元調教師1人、元騎手3人が競馬法で禁止されている地方競馬の馬券を購入していた問題が動きだした。関与していたとみられる元調教師の男性(36)は、岐阜新聞の取材に対し、「(笠松競馬の)馬券を買った」と認めた。動画投稿サイトでは「競馬ファンの皆さまを裏切る形になってしまった」と謝罪した。岐阜県警は共犯関係の有無も含めて不正な馬券購入の実態を慎重に捜査しているという。元調教師は、騎手が故意に着順を操作する八百長疑惑について「裁決委員が厳しく監視している」と否定し、「操作はしていない」と強調。「地方競馬は内部の人間しか知り得ない情報だらけ。(馬に関する)内部情報があれば、そういった馬が数頭出ているレースで、ある程度の点数を買えば当たってしまうのは事実」と話した。

 警察の捜査は長引いている。個人的には、強い馬を育ててくれる可能性が高い敏腕調教師として期待していただけに、今回の事件は非常に残念だ。
 
 「日本競馬の父」と呼ばれた安田伊左衛門さん(岐阜県海津市出身)は大正時代、禁止されていた馬券販売を再開させ、「競馬というものは、競走の施行面でも馬券販売でも『公正の保持』が最も大切」と信念を文書にした。そんな郷土の大先輩の言葉を胸に刻んで、捜査対象となっている4人には、地方競馬全国協会(NAR)や岐阜県地方競馬組合を通して、ファンにきちんとした形で「真実」を語ってもらいたい。