2019ぎふ参院選
【民意は訴える】①人手不足
人材流出、嘆く企業 「新規採用、非常に厳しい」

2019年07月13日 00:00

  • 引きこもりだった若者の相談を受ける中川健史さん。「就労支援の前に、若者が自信を取り戻す居場所が大事」と語る=岐阜市学園町、社会的居場所いっぽいっぽ

◆大手並み初任給でも苦戦

 人口減少や少子高齢化が進む岐阜県。地域が抱える課題の中には、国の政策と密接に関わるものも多い。21日投開票される参院選を機に、現状を住民らの声を交えてリポートするとともに、県内各地を回って舌戦を繰り広げる岐阜選挙区(改選数1)の与野党候補にもコメントを求めた。

 「新規採用は非常に厳しい」。発泡樹脂製品を手掛けるDAISEN(中津川市)の林彰社長(67)は、深刻な人手不足を嘆く。

 発泡プラスチック成形機の国内トップシェアで、業績は好調だが、今年4月の新規採用者は初めてゼロだった。現時点の人手は足りているが、5年、10年先を考えると、採用は大きな課題だ。今年は岐阜市の合同企業展に初めてブースを出したものの、企業展自体の来場者が減少し、苦戦を強いられている。

 東濃地域では、自動車用自動変速機世界最大手のアイシン・エィ・ダブリュ(愛知県安城市)が瑞浪市に工場を進出。愛知県のトヨタ系企業を含め、待遇の良い大手企業に地元の人材が流れている。新入社員の初任給は4年間で上場企業並みに上げたが、「新規採用がなければ意味がない。当面は中途採用で対応したい」と苦しい実情を明かす。

 県内の有効求人倍率は2008年のリーマン・ショックを受け、09年に0・51倍まで下がったが、緩やかな景気回復や人手不足を背景に年々上昇。18年には1992年以来の高水準の2・00倍に達し、高止まりが続いている。岐阜労働局は「県内の人材が賃金の高い愛知県に流れる傾向がある」と分析する。

 政府は人手不足を解消するため、30代半ばから40代半ばの就職氷河期世代向けに就職の支援体制強化を打ち出した。非正規労働者の正社員化やニート、引きこもりといった無業者を就労につなげ、3年間で約30万人の正社員化を目指す計画だ。

 一方、こうした数値目標には、疑問の声も上がる。25年にわたって引きこもりの若者らの支援に関わってきた岐阜市のNPO法人仕事工房ポポロ代表の中川健史さん(64)は「就労の前に、自信を取り戻す場が必要」と強調。国の施策が就労支援に特化することを懸念し、「生活支援や若者の居場所づくりにも取り組むべき」と注文を付ける。

 9年間の引きこもりの経験がある揖斐郡池田町の40代前半の男性は「今から社員として働くのは正直厳しい」と不安を明かす。20代は工場の製造ラインで働いたが、職場の人間関係が苦になり、退職後は自宅に引きこもった。現在は支援団体でパートとして働くが、「理解のある職場だから続けられた」と振り返る。

 国の就労支援拠点「県若者サポートステーション」の金武和弘センター長(46)は「引きこもりだった若者の就労には、受け入れる企業の理解も必要。企業が単なる労働力として見ていては定着につながらない」と指摘している。

(河合修)


【記者のひとこと】

 「引きこもりの支援に数値目標は違和感がある」。支援団体の取材を通じて聞かれた共通の声だ。

 引きこもりの原因はさまざまだが、年齢を重ねるごとに就労の機会は減っていく。国が全国に設置した就労支援拠点の地域若者サポートステーション(サポステ)は39歳までが対象で、40歳以上の公的支援は極端に少なくなる。

 背景には、企業のニーズもある。人手不足に悩む企業は20代、30代の働き手を求めている。国はサポステの年齢上限を50歳ごろまで引き上げる方針を打ち出しているが、数字ばかりを追い求めれば、就労しやすい若者優先の支援に偏る恐れもある。

 就労につなげるまでには相当の時間と周囲の協力が不可欠だ。安易な目標を掲げ、支援現場や当事者が振り回されることは避けるべきだ。


【課題への直言】

大野泰正候補(自民) 女性やシニア層が働きやすい環境整備や支援策の充実を図る

梅村慎一候補(立憲民主) 仕事と家事、育児、介護、通院との両立可能な企業への支援を充実