2019ぎふ参院選
【民意は訴える】②年金問題
2000万円 夢のまた夢 介護や医療…出費の不安

2019年07月14日 00:00

  • グラウンド・ゴルフに汗するお年寄りら。老後資金2000万円問題について聞くと、暮らしへの不安の声が漏れた=本巣市内

 公的年金だけでは老後の備えが2千万円不足するとした金融庁審議会の報告書を巡って、にわかに参院選の大きな争点の一つとして浮上した年金問題。「2千万円なんて夢のまた夢やわな」。本巣市内の運動公園でグラウンド・ゴルフに打ち込んでいた瑞穂市の男性(75)は、吐き捨てるように言った。

 男性は製造業向けに機械部品を設計する事務所を営んでいた。2008年のリーマン・ショックを境に受注が半減、技術革新が進む分野ながら設備投資の余裕はなく12年に廃業した。貯金の多くは私立大学へ進んだ子2人の学費に消えた。独立前に会社勤めをしていた10年間分の厚生年金と国民年金を合わせた月8万6千円を頼りに暮らす。「生活はできている。でも、もっと悠々自適な老後を思い描いていた」とこぼす。妻との2人暮らしで、「夫婦そろって健康だが、これから介護や医療が必要になった時のことを思うと...」。

 14年の全国消費実態調査によると、県内の勤労者世帯の貯蓄額の平均は1396万円で、全国7位と高い。一方、県が18歳以上の県民3千人を対象に聞いた昨年度の県政世論調査によると、生活面での不安に関する項目では悩みの要因に約6割が「収入・貯蓄」を挙げている。年代別では70代こそ4割程度にとどまるものの、60代は6割近くを示し、30代と40代は約7割に上るなど、将来不安が渦巻く。

 金融庁審議会の報告書では、国民に資産運用による自助努力を促していたことが火種の一つになった。名古屋市のファイナンシャルプランナーの男性(53)は「自分の身を自分で守らなければいけない時代になっていることは確か。ただ、国も現状を伝えるだけでなく正しい知識を学ぶ場を提供するなど、今回を契機にして資産を守ってもらうための施策に本腰を入れるべきなのでは」と指摘する。

 「ニュースであの2千万円という数字に触れて、自分の未来が見えなくなった感じがした」と話すのは、岐阜市内の介護施設に勤める男性職員(47)。月収は残業代を含めれば30万円台になるが、大学進学を考える高校生を含む3人の子を育てる身としては心もとないと感じている。

 深刻な人手不足にありながら全産業平均より10万円ほど低い介護職員の待遇面での課題に直面し、職場を離れていく同僚を何人も見てきた。「『100年安心』も大事だけれど、目先の厳しい現実をどう乗り切るかで、もがき苦しんでいる人は多いはずだ」。処遇改善など、現状の変化に直結する政策を望んでいる。

(山田俊介)


【記者のひとこと】

 老後資金2千万円問題について質問するや、はつらつとグラウンド・ゴルフを楽しんでいた高齢者たちの表情に怒りの色が浮かび、それぞれの口から国への不満や年金制度への疑問の声が噴き出した。手を止めてしまって申し訳ないと思いつつも、高齢者たちは「今はプレーなど二の次」とばかりに話し続けてくれた。皆、制度を信じて年金を払い続けてきた人たちだった。

 情報弱者という言葉があるが、投資や資金運用のすべを知っている人だけが救われて、知らない人には手が差し伸べられない社会だとすれば何と寂しいことだろう。年金制度そのものの存在意義と今後の在り方を見つめ直す契機とすべきだ。


【課題への直言】

大野泰正候補(自民)人生100年時代でも安心の年金制度やセーフティーネットを充実

梅村慎一候補(立憲民主)中間所得層を厚くする政策実行、福祉と負担のバランスを十分議論