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【民意は訴える】③人口減
「見捨てられた」過疎地 本巣市根尾、50年で3分の1

2019年07月15日 00:00

  • 過疎地の窮状を訴える小野島史郎さん=本巣市根尾市場、住吉屋

◆国の移住制度 「若者呼ぶ起爆剤に」

 「東京一極集中の是正はうたい文句だけ。今も冬は道路が閉鎖されて行き止まりのまちになる。地方は見捨てられていると感じる」。本巣市根尾市場の旅館「住吉屋」の代表小野島史郎さん(70)は人々の往来を促す基盤整備の必要性を訴える。根尾地域(旧根尾村)は人口が1971年から3分の1にまで減り、過疎化に歯止めがかかっていない。7代続く老舗旅館も客数が落ち込み、苦しい経営を強いられている。

 小野島さんによると、住吉屋の創業は江戸時代末期。近くの淡墨桜(国天然記念物)の存在を世に広めた小説家宇野千代さん(1897~1996年)がたびたび宿泊して小説を執筆した由緒ある旅館だ。根尾地域を通る国道157号が岐阜と金沢を結ぶ主要道だったため、旅館には行商人が泊まった。淡墨桜が注目されるようになった70~80年代は春先になれば、観光客で満室になった。

 その間に基幹産業だった林業は衰退し、59年の伊勢湾台風なども重なって人口は流出した。だが、公共事業がまちを下支えした。94年完成の上大須ダム(同市根尾)、2008年完成の徳山ダム(揖斐郡揖斐川町)など、長い年月がかかる大型工事が相次いだ。「旅館にも工事の関係者が連泊してくれた。根尾に不景気はなく、これがずっと続くと思っていた」

 ダム完成後、公共事業は減り、工事で訪れる人は少なくなった。淡墨桜の観光も95年の阪神大震災を境に関西方面からの客足が遠のいた。本巣市が誕生した04年の合併も旅館の経営悪化に追い打ちをかけた。団体も広域化し自治会や老人会などが開く懇親会の利用も減ったからだ。「80年代に比べて客数は10分の1に減った。特に国道157号が雪で北に抜けられなくなる冬はさっぱり」とこぼす。

 小野島さんには旅館の後継ぎがいないことも悩みの一つ。一人息子(38)は地元の森林組合で働き、継ぐ気はないという。「もうかっていれば継げと言えるが、そうではないから」

 そんな中、市は小野島さんの申請に基づき、住吉屋の後継ぎ候補となる「地域おこし協力隊員」の公募を始めた。協力隊は都市部から若者が移住し、1~3年の任期付きで過疎地域の活性化を助ける総務省の制度。県内では2010~16年度に協力隊員として任期を終えた44人のうち6割に当たる28人が住み続ける。市では18年度までに活動した8人中、7人が定住しており、市担当者は「協力隊が若者を都会から呼び込む起爆剤になれば」と狙いを話す。

 小野島さんは「自分の代で終わらせたくない。熱意のある人が新しい切り口でやれば客も来てくれるだろう」と自助努力の必要姓を語りつつ、「国も地理的な条件の不利を補うための公共工事はどんどん進めてほしい」と切実に願う。

(松浦健司)


【記者のひとこと】

 本巣市根尾では林業の衰退後、公共工事の受け皿となる建設業と観光産業が人口を維持するだけの基幹産業になり切れていない現状がある。政府は住宅や公共施設、病院などを集約する都市のコンパクトシティー化を推奨しているため、過疎地にはさらなる逆風が吹いているように感じる。

 小野島史郎さんは「待っているだけでは駄目だ」と言う。旅館の看板メニューとなった豆乳の十割そばを、人口の多い地域で売ろうと、昨年製麺機と瞬間冷凍機を買いそろえた。「後継者に収入の道を確保してあげなくちゃ」。決して時代を嘆いているばかりではない。国は過疎地を活性化させる有効策を示し、住民の挑戦を後押ししてほしい。


【課題への直言】

大野泰正候補(自民) 副業を含め、女性やシニアの活躍など社会全体で労働力人口を確保

梅村慎一候補(立憲民主) 若者が家庭を持てるだけの収入を得られるかどうかが最大の鍵