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【民意は訴える】⑥高齢運転者対策と公共交通
免許返納、個人責任か 生活の足、確保されず

2019年07月18日 00:00

  • ドライブレコーダー(手前)が作動する中、運転講習を受ける高齢運転者。受講者たちは「簡単には車を手放せない」と口をそろえる=羽島郡笠松町羽衣町、岐阜南自動車学校

 「まだ乗れる」つもりだった。昨年2月、関市の女性(94)は運転免許証を自主返納した。孫たちに「おばあちゃん、もうさすがに運転は...」と説得され、決断。「家族に迷惑をかけるわけにはいかないから」と自らを納得させた。しかし、生きがいだった週2回のグラウンドゴルフをやめざるを得なくなった。女性の家族は「世間の高齢ドライバーを見る目は、どんどん厳しくなってくる」とため息をつく。高齢者の運転を規制する流れが強まる一方、返納後の"足"となるべき県内の公共交通は都会と比べ貧弱で、不安ながら車に乗り続ける人も。それぞれが苦悩を抱えている。

 4月に東京・池袋で男性=当時(87)=の乗用車が暴走、母子2人をはねて死亡させた事故をはじめ、高齢運転者による悲惨な事故が後を絶たない。県内でも6月、男性(75)の軽乗用車が瑞穂市の国道21号を逆走し、2台に衝突。けが人はなかったが、現場は普段から交通量が多く大惨事になりかねなかった。

 相次ぐ高齢運転者の事故を背景に運転免許証の自主返納者が急増。県警運転免許課によると、5月の自主返納者数は820人(うち高齢者802人)、6月は905人(同886人)と月別の過去最多を更新。1~4月の平均値の1・5倍以上となった。国も高齢運転者の自主返納を推進しており、6月17日現在、県内では29市町が自主返納者にバスやタクシー、鉄道の回数券を支給するなどの支援に取り組む。県警も本年度、「シルバー・ドライビング・スクール」の指導にドライブレコーダーを導入。自身の運転を動画で確認し、加齢に伴う身体能力の衰えを自覚してもらうのが狙いで交通企画課は「運転に不安を感じたら警察に相談してほしい」と呼び掛ける。

 政府が6月にまとめた事故防止の緊急対策では、運転支援機能を備えた「安全運転サポート車」に限定した高齢者向け運転免許の導入を検討することなどが盛り込まれた。ただ、車は生活の足として欠かせないという声も多い。羽島市の男性(80)は「今のところ返納は考えていない。体が動くうちは乗り続ける」ときっぱり。老人クラブの役員を務めており、外出の機会は多く、「田舎で生活する上で車がないのはあまりにも不便」と訴える。

 内閣府が一昨年に実施した世論調査によると、「安心して運転免許証を返納できるために重要なこと」(複数回答)では、「公共交通機関の運賃割引・無償化」が64・9%、「地域の電車やバス路線など公共交通機関の整備」が59・4%と、公共交通の充実を望む声が上位を占めた。交通計画などが専門の岐阜大工学部の倉内文孝教授は「海外と比べて日本の自治体は公共交通にかける予算が少なく、生活に必要な交通網の整備が深く議論されていない」と指摘。「高齢運転者事故の問題を契機に、公共交通の必要性を見直す機運が高まることを期待したい」と語る。

(山田雄大)


【記者のひとこと】

「返納してから1年ぐらい、生きるのもつらかった」。運転免許証の自主返納を決断した女性はそう胸の内を明かしてくれた。車に乗らなくなったことで外出する機会も減り、「認知症になってしまうのが怖い」と。返納するよう説得した家族も「本当は(返納は)嫌だったと思う」と葛藤があった。思い出が詰まった女性の車は、乗れなくなってからもしばらく処分できずに自宅に残していたという。人と車のつながりは、公共交通では代えの利かない部分もある。一方で、事故を起こしてしまってからでは取り返しがつかないのも事実。いつか自分も、車が好きな父に「もう車に乗るな」と言わなければいけないのだろうか。取材をしながら胸が詰まる思いがした。


【課題への直言】

大野泰正候補(自民)地域交通の一層の維持・活性化のため、地域の連携と協働を支援

梅村慎一候補(立憲民主)地域公共交通への支援継続、自動運転の実験を積極的に誘致し協力