2019ぎふ参院選
【民意は訴える】⑦防災
豪雨被災地 安心感まだ

2019年07月19日 00:00

  • 「安心・安全なまちづくりのため、復旧にとどまらず改良を急いでほしい」と支流の小那比川と津保川がぶつかる地点を指さしながら語る宇佐見勲さん=関市上之保

 「気付いたら家の前の道は濁流。とにかく自分や家族の命を守ることしか頭になかった」。昨年の7月8日未明。関市北東部を流れる津保川流域の広範囲で川が氾濫した。当時上之保の川合下自治会長だった宇佐見勲さん(68)は濁流を目にした瞬間、焦りを隠せなかった。避難指定場所の上之保小学校には氾濫する川を渡らないと行けない-。自宅近くの上之保生涯学習センターに家族と駆け込んだが「まさに脱出だった。避難指示の連絡態勢がもっとしっかりしていれば、命の危機を感じるまでにはならなかったはずだ」と憤る。

 水害から1年。避難指示の発令遅れを認めた市は災害時の情報伝達の複層化に本腰を入れるが、行政による河川改良などハード面の機能強化はまだこれから。住民が安心感を抱く"真の復興"には至っていない。

 関市の検証結果によると、上之保の下流の水位計を過信したため、避難指示の発令に遅れがあったとされる。さらに防災無線を中心とした発令の伝達方法も、豪雨の中では聞こえにくいという市民の声も出た。

 そのため市は、本年度から防災無線を各戸に直接配信する「戸別受信機」の購入補助を始めた。本体価格の2分の1と、設置費用全額を補助する。さらに携帯電話に防災情報などを送信する「関市あんしんメール」の利便性を高めようと、今月からスマートフォンアプリLINE(ライン)の市公式アカウントの運用も開始した。

 国は5月、豪雨で危険が予想される際、生き残るための行動を5段階表示する「大雨・洪水警戒レベル」の運用を始めた。自宅が床上浸水した宇佐見さんは導入を歓迎しつつ「避難は行政頼みにせず、自分たちの判断で事前に行動したい。空振りでも仕方ないぐらいの気持ちが必要」と語る。

 発災の約2週間後に国は、上之保を含む全国の広範囲を激甚災害に指定した。復旧工事の補助率が引き上げられ、護岸工事や農地の復旧などが推進された。ただ宇佐見さんは「災害前の状態に戻りつつあるだけ」と手厳しい。津保川と支流・小那比川がT字状に合流し、流量が急増する箇所近くの下流側に住んでおり「川がぶつかる所の堤防を隅切りする(角を削り水が流れる面積を増やす)など河川改良が必要」とインフラの機能強化を訴える。

 国も手をこまねいているわけではない。今年3月には津保川を「浸水対策重点地域緊急事業」に採択し、治水事業に交付金を出す方針を決定。それを受け、川を管理する県も長良川圏域河川整備計画を変更し今後5年間で集中的に河道掘削などを進める。だが宇佐見さんは「(復旧に比べて)スピードが遅い。ここは昨年の豪雨に耐えられなかった。次は想定外では済まされない。もう雨期は来ているのに...」と厳しい表情で川を見つめる。

(富樫一平)


【記者のひとこと】

 宇佐見勲さんが嘆くように、河川改良がなかなか進まないことへの焦りを、多くの住民が異口同音に語っていたのが、実に印象的だった。〝真の復興〟を成し遂げるために、国レベルでも、今まで以上に住民の声に寄り添うことが必要だ。

 さらに集落や里山を歩くと、まだ取り壊されていない廃屋、山奥に残る倒木など、次なる災害の引き金になりかねない危険性と依然隣り合わせで暮らしている現状も見えてきた。最悪の状況をふと想像した時、宇佐見さんの「次は想定外では済まされない」という言葉が、それまで以上にずしりと響いた。


【課題への直言】

大野泰正候補(自民) 地域の防災組織の充実や防災情報提供手段の多様化・高度化を図る

梅村慎一候補(立憲民主) 設備面の強化、地域が克服すべき課題の積極的な公開と議論