ふるさとへの便り
少数民族問題に注視
ミャンマー

2018年01月25日 11:43

ミャンマーのラカイン州北部でムスリム住民と対話する河野太郎外相=1月13日(外務省HP出典)

 現在、ミャンマーといえば、「東南アジア最後のフロンティア」というフレーズより「ロヒンギャ」問題の方が注目されているかもしれません。西部ラカイン州に居住するムスリムで固有の民族と主張する「ロヒンギャ」は、ミャンマー国民の大部分からベンガル人の不法移民とみなされ(学術的にも見解が分かれています)、長年の無国籍状態と医療や教育の行政サービスや移動の自由の制限などが続いています。英国植民地時代からの歴史的経緯、宗教、民族、コミュニティー間の不信の増幅などが複雑に絡み合った根深い問題です。

 アウン・サン・スー・チー国家最高顧問率いる2016年発足の現政権は、国際社会の助言を受け入れ、根本要因の包括的解決のための取り組みを開始したところでしたが、同州北部における16年10月および昨年8月の武装勢力による連続襲撃事件とその後の国軍による掃討作戦により、65万人以上の避難民がバングラデシュに流出しています。メディアから住民殺害、放火等人権侵害の証言などが出ていますが、現地へのアクセスは限られ、真偽のほどは分かりません。

 当地にいれば一目でうそだと分かるフェイクニュースも会員制交流サイト(SNS)を通して大量に出回っています。報道も「可哀想なロヒンギャを迫害するミャンマー政府・軍」といった一方的かつ単純な論調が多く、根深く複雑な本問題を取り上げることも少ないとも感じます。少なくとも襲撃から掃討作戦という短期の視点においては、もちろんその程度はあれ、国家主権維持と治安回復のための当然の行動だったと思います。

 他方で、移動の自由もなく行政からも半ば放置され、未発展と極度の貧困が長年続いてきたことに対しては、それは責められても仕方のないことかも知れません。将来の展望が持てない者への「武器を取れ」というリクルートは非常に容易であったと思います。今後の課題は、治安回復、人道支援アクセスの確保、避難民の帰還・再定住、社会経済開発、国籍調査の促進、コミュニティー間の融和の実現ですが、恐らく何世代にも渡る超長期の取り組みが必要となります。

 国全体の民主化と国民和解(少数民族武装組織との和平)も同時並行で進めるミャンマーにとって国際社会からの理解と支援は必須です。その取り組みを全面的に支援していく日本も、何ができるかを学ぶため、河野外務大臣も現場を視察しました。

 現地にいる末端の人々のために何ができるのか、それがミャンマーのためになるのか、そして最終的に日本の国益につながるのかを考えながら、その最前線にいるメンバーの一人として、激動ミャンマーの今後の選択に一層注目し、職務に当たっていきたいと思います。(※今回の寄稿は個人の見解を記載したものであり、日本政府の立場を述べたものではありません)

20180306144434-39259bba.jpg 【尾関有希子(おぜき・ゆきこ)さん】 2016年10月に赴任。在ミャンマー日本大使館2等書記官として勤務(岐阜県庁から出向)。政務班(外政、ラカイン州情勢=いわゆる「ロヒンギャ」問題、人権分野など)を担当。各務原市出身。


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