ふるさとへの便り
前国王への思い痛感
タイ

2018年02月15日 11:36

春節でにぎわう商業施設=タイ

 タイ・バンコクに赴任して1年4カ月、国王崩御前後という転換期に駐在しています。プミポン国王が崩御されたのは赴任直後の2016年10月。訃報が届くや否や同僚の100人以上のタイ人行員が一斉にテレビの前に駆け寄り、むせび泣く姿を目の当たりにしたことを、昨日のことのようにはっきりと覚えています。

 その後、葬儀が執り行われるまで約1年におよぶ服喪が始まりましたが、期間中は人々の服装が黒基調、街中の装飾がモノトーン基調、商業施設では各種イベントの中止が相次ぐなど、タイ全土が悲しみと自粛の雰囲気に包まれました。その様子は日本の報道でも何度となく取り上げられ、ご存じの方も多いかもしれません。

 17年10月29日をもって服喪期間が終わり、現在、街は崩御以前の様子を取り戻しています。今年1月には新年を祝う花火がバンコク市内複数の場所で盛大に打ち上がり、2月には春節(旧正月)を祝う華やかな装飾が至るところで見られました。本来タイが持っていた活気を肌で感じることができるようになっています。

 街の活気は戻りましたが、人々の心情はどうなのでしょう? 複数のタイ人知人から個別で話を伺うと、さまざまな答えが返ってきました。ある人は「人の気持ちは街の様子と違う、喪明けを境に急に切り替われるものではなく、悲しみは残っている」と答え、またある人は「気持ちを切り替え前に進むことが前国王へ感謝の気持ちを伝えることにつながる」と答えました。中には「まだタイ人にその話を聞くには早い」と諭してくれる人さえいました。

 印象に残ったのは返答に同じ表現が一つとしてなかったことです。借り物ではない自分の言葉で思いを語る一語一語に、心の内側から湧き出てくるタイの人々の前国王を慕う思いの強さを感じます。この国において私は外国人であり、タイの人々が背負っている悲しみの気持ち、前国王への思い全てを理解するということはできません。しかしながら、強く深い思いであるということに疑いはありません。タイに駐在する者としてタイの人々の心に寄り添う気持ちを忘れずに、日本とタイの相互の発展に力を尽くしていこうと、思いを新たにしました。

20180306143735-59c32f1a.jpg 【藤井裕史(ふじい・ひろし)さん】 十六銀行法人営業部海外サポート室課長代理。2003年十六銀行入行、東濃地方や名古屋市内の営業店勤務を経て、16年10月からタイ・カシコン銀行へ派遣。可児市出身。


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