ふるさとへの便り
脱貧困へ小規模支援
フィリピン

2018年02月22日 11:32

マンヤン族への能力開発訓練施設の引渡式=フィリピン

 「暴言王」「フィリピンのトランプ」として、日本でも有名になったロドリゴ・ドゥテルテ氏が大統領を務めるフィリピン。年7%に迫る経済成長を遂げており、首都マニラでは高層ビルが乱立し、高級ブティックや世界各国のレストランが軒を連ねます。他方、裏の道に入れば、絵に描いたような途上国の風景が広がります。地方に目を向ければ、多くの人々が、学校や病院もない地域で貧しい生活をしています。

 私はフィリピンの日本大使館に昨年5月に着任し、こうした貧しい地域のさまざまな課題を解決する政府開発援助(ODA)事業を担当しています。鉄道を整備したり、幹線道路を建設したりといった大規模な支援ではなく、地域のニーズにきめ細やかに応える小規模支援です。

 マニラにある大使館から車で南に2時間のバタンガス港。そこからフェリーに2時間揺られ、ミンドロ島にたどり着きます。車に乗り換え、辺ぴな道を2時間走り、でこぼこな山道を1時間ほど登っていくと、先住民族であるマンヤン族が暮らす集落があります。

 マンヤン族は、米、コーヒー豆、ココナッツなどを生産して生計を立てています。町から離れた山間部に住んでいるため、商売の機会に乏しい上、農業生産に係る知識・技術が不足していることから生産量も低く、彼らの平均月収は日本円で3000円程度で、住民は貧困状態にありました。

 そんな中、冒頭で紹介した小規模支援により、マンヤン族に対して、能力開発訓練施設を建設しました。およそ3800人のマンヤン族に対して、農業の生産性向上などの研修が実施され、彼らの生活向上を狙っています。日本国民の税金が、こうした地域の人々の生活を良くするために使われています。施設の引渡式に立ち会った際、マンヤン族のみんなが伝統の踊り、歌、食事で私を歓迎してくれました。彼らの笑顔は今でも忘れられません。

 私はこの先、ミンダナオ島への支援を実施したいと考えています。ミンダナオは長い歴史の中、政府軍とイスラム過激派との間で激しい衝突を繰り返してきた地域で、昨年5月には大規模なテロが勃発し、大統領によって現在に至るまで戒厳令が発令されています。

 日本政府は、ミンダナオへの支援を重視しており、昨年秋に行われた日比首脳会談でも、安倍晋三首相は一層の支援を表明しました。昨年、フィリピンは東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国を務め、一連の会議を成功に導き、確実かつ着実に成長の一途を進んでいます。一方で、ミンダナオには紛争と貧困という現実の課題があります。治安情勢を見極めながら、できる限りの支援を実施していきたいと考えています。それがフィリピンと日本、緊密な2国間関係のさらなる強化につながるものだと信じています。

20180306143550-30e1072e.jpg 【小林篤(こばやし・あつし) さん】2017年5月赴任。在フィリピン日本大使館3等書記官(岐阜県庁から出向)。経済部に所属し、主に政府開発援助(ODA)、日比間の地方連携などを担当。


過去の記事