ふるさとへの便り
水不足、技術力で克服
シンガポール

2018年03月29日 15:17

ニューウォーターの仕組みを見学できる施設=シンガポール

 自然豊かな故郷、岐阜からシンガポールに赴任して約1年が経過しました。私がふと故郷を思い出すとき、いつも脳裏に浮かぶのは岐阜が誇る長良川などに代表される清流です。

 今回は、シンガポールの水事情についてお話をしたいと思います。赤道直下に位置するシンガポールは、熱帯雨林気候に属し年間降水量が多いため、水には困らない国家ではないか、と多くの方が思われるかもしれません。しかし、国土面積は日本の淡路島程度であり、山地がなく保水力が乏しいため、全住民が使用する水をシンガポール一国で賄うことができません。そこで多くの水を隣国のマレーシアから購入しています。

 マレーシアからの水の受給については、1965年の国家独立以来しばしば外交問題にまで発展したため、シンガポール政府が国の最重要課題として水不足の解決に取り組んできました。水不足の解決策の一つとして挙げられる画期的な事業がニューウォーターです。

 それは、下水を最先端の高度な技術を駆使して浄化し、水を再利用する事業です。実用化までに歳月はかかりましたが、2003年に本格的に稼働、現在国内に5か所の施設を設置し、国内の水需要の約30%を賄うまでに至っています。ニューウォーターは、主には半導体などの工業用水として使用されますが、一部は貯水池に戻され、それから浄水場へ、そして水道水として各家庭に供給されています。

 一般開放されているニューウォータービジターセンターに行き、実際にニューウォーターを飲んでみましたが、特に違和感なく飲むことができました。シンガポールで普段何気なく使用している水が、こうした背景で供給されているのだと考える時、この国の水不足の解決に向けた努力を肌で感じる一方、故郷の岐阜の水はなんて恵まれているのだろうと強く感じます。

 世界には水不足の地域や安全な水を確保することが難しい地域が多くあります。シンガポールのニューウォーターに関する技術は世界から注目を集め、現在、ニューウォーターで培った水処理技術を国外に売り込むことも行っています。これはシンガポールの水不足という弱点の克服が、自国の産業競争力の強化につながった好事例ではないでしょうか。資源の不足を最先端の技術力でカバーし、国家としてさらに繁栄を図っていくシンガポール。その底力を感じざるをえません。

20180329151930-43c01a49.jpg 武藤成弘(むとう・なりひろ)さん 2017年4月に日本政府観光局(JNTO)シンガポール事務所に赴任(岐阜県庁から出向)。主な業務はシンガポールから日本への観光客誘致。山県市出身。


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