ふるさとへの便り
「独身の日」に光と影
中国

2019年12月27日 09:09

中国で普及するインターネット販売アプリ。消費市場は巨大化している=上海市

中国で普及するインターネット販売アプリ。消費市場は巨大化している=上海市

 数字の「1」は「独り」を連想させることから、11月11日は中国で「独身の日」と呼ばれています。この日にはインターネット販売セールがあり、今年も11回目のセールが実施されました。2009年から開始した中国電子商取引(EC)最大手の「阿里巴巴集団(アリババグループ)」の運営サイトでは、1日の取引額が昨年の2135億元を大きく上回る2684億元(約4兆1千億円)となり、過去最高を更新しました。セール開始後1分36秒で100億元を突破、約1時間で1千億元に到達するなどその速さにも驚かされますが、1日でこれほどの取引がされるのは想像を絶するスケールです。

 「独身の日」には、ネット販売セールが始まる時間に合わせて特別番組が放送され、さながら年越しのカウントダウンのように盛り上がります。このネット販売セールがここまで注目を浴びる背景として、三つの理由が考えられます。第1に電子決済の普及です。中国では「支付宝(アリペイ)」、「微信(ウェイシン)」など電子決済サービスの普及率が80%を超えています。第2に消費者を飽きさせない仕掛けです。通販番組のようなライブ動画の配信や拡張現実(AR)によるお試し、ゲームによるクーポンの獲得など多彩なサービスが展開されており、今年は特にライブ動画の配信が注目を浴びました。第3に消費者の購買行動データが収集できるというメリットがあることです。

 一方でさまざまな問題も指摘されています。今回のセールでは、アリババグループ傘下の物流プラットフォームにおいて、セール開始から1週間で世界の物流業界でも最高記録となる約18億8千万個の荷物を処理しました。これほどの量になると宅配処理能力の限界を超え、消費者の手元に届くまでにどうしても時間がかかってしまい、結果的に一般の郵便物にも影響が出ました。さらに、粗悪商品が流通しており、主催者も出品商品の審査を厳しくしているものの、残念ながら排除し切れていません。また、「セールなのだから出店されている商品の価格は安い」と思いがちですが、一部の商品は割引前の値段が高く設定されており、消費者が実際には安くない価格で買ってしまうといった問題も出てきています。

 ただ、問題はありながらも、これほどの金額の取引がたった1日で行われるネット販売は消費者にとっても事業者にとっても十分な魅力があります。さらに、中国における消費市場の大きさを考えれば、今後もネット販売がさらに伸びる余地はあると思われます。世界中から注目されている中国消費者市場が今後またどのような形で展開されていくのか楽しみです。

 稲熊剛史(いなぐま・つよし)さん 2013年大垣共立銀行入社。今年2月から中国語学研修生として上海財経大学へ派遣。愛知県出身。29歳。


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