ぎふ財界人列伝 ぎふプラスチック工業編 この道を行く
社会ニーズを成長力に

  • 社長時代の新分野への進出などについて語る大松利幸=6月、岐阜市神田町、岐阜プラスチック工業本社
  • 都市型洪水の被害を軽減する雨水処理システム
  • 医療分野へ進出し、開発した透析用エアフィルター

(6)新分野進出

 樹脂製品の国内メーカーは専業が多いが、岐阜プラスチック工業を中核とするリスグループは、幅広い分野での製品化を目指した。グループを率いる社長の大松利幸は、「安定した成長を続けるため」と強調する。「一つの事業に集中していると、その事業が好調な時はいいが、不調になると一気に業績が悪化する」とし、「幅広い分野の事業を手がけておけば、不調な事業が出ても他の好調な事業でカバーでき、全体として平準化して安定できる」と、創業社長幸栄の安定経営の考えを堅持。この経営方針で利幸は、医療などでプラスチック製品の新分野を開拓、参入した。

 岐阜プラの医療分野への進出は、社会問題となった医療廃棄物への対応が発端だった。医療機関で使用した注射針、手術着、包帯など感染性医療廃棄物について、厚生省(現厚生労働省)が1991年に処理に関するガイドラインを出し、密封容器に入れ容器ごと焼却処分することを義務付けた。これで取り扱いやすいプラスチック容器の需要が急速に増えた。

 対応は素早かった。感染性医療廃棄物の専用容器の医療ペールを開発。院内で移動しやすい20リットルサイズで本体とふたの密着性が高い丸形を発売した。その後処分量の増加とともに、トラックの積載効率の良い角形を発売。全国に供給するため本社、福島、福岡工場での生産に広げて対応した。

 この分野では医療研究用に飼育されたマウスやラットなど実験動物の輸送容器も開発した。従来は実験動物の生産会社から製薬会社や研究機関への輸送は段ボール箱が使われていたが、使用済みは産業廃棄物として処分され、処分費と環境面で問題視された。環境保全と資源の有効活用の観点からリサイクル可能なプラスチック容器が出番となった。使用済み容器を回収して粉砕し、再利用する仕組みを日本実験動物協同組合の指導を受けて構築し、全国一律回収で厚生省の指定を第1号で受けた。

 医療分野へ本格参入するため2005年には医療バイオ事業部を設立。透析用血液回路に使うエアフィルターを開発し、大手医療機器メーカーからは透析用医療機器キャップの受注にも成功。透析に関わる分野では血液浄化の治療方法に関わる製品も開発し、医療技術の進展にも貢献した。

 自然現象に着目した提案型の製品も製造した。集中豪雨の被害が全国的に増加していたことを受け、リス興業が02年に開発、販売を始めたプラスチック製の雨水処理システム。地表がコンクリートで雨水の浸透能力がないため起きる都市型洪水の被害を軽減する。プラスチック製パネルを箱形に組み立て、雨水の貯留空間を作って遮水シートで包み込み、雨水が排水路や河川に大量に流れ込まないようにする。商業施設の駐車場地下や公園、グラウンド地下に埋設し、主に関東の民間開発で導入された。

 リス興業は同時期、屋上緑化システムも開発した。東京都が自然の保護と回復に関する条例を01年に施行。一定基準以上の敷地で新築、増改築の建物に屋上を含む緑化を義務付け、需要が生まれた。02年、コンテナの中に給水センサーで一定の水位を確保し、木々や花類を植栽する緑化コンテナの販売を始めた。大学、介護老人福祉施設などで採用された。

 いずれも社会問題を注視して迅速に反応。「人に対して優しくない自然現象にも対応し、知恵を出して貢献できる商品として形にする」。利幸が着目する分野は広がっていった。(敬称略)


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