ぎふ財界人列伝 ぎふプラスチック工業編 この道を行く
超軽量、世界初の量産化

  • 知財功労賞の特許庁長官表彰を受ける大松利幸=2015年、東京都
  • 2013年に稼働した高強度、超軽量のテクセル製品を製造する専用の事業所=揖斐郡大野町
  • テクセルの軽量防音パネルを機械に装着したメーカーの工場

(8)新素材「テクセル」

 2004年夏、先端技術戦略を手掛ける部門を持つ商社から大松利幸のもとへ1件の情報がもたらされた。「世界最軽量の樹脂構造体があった。軽くて、強くて、面白い素材がベルギーの大学で発明された」。蜂の巣状に並んだ六角形のセル(小部屋)の集合体。このハニカム構造体は、中空構造で特殊成形で単位重量当たりの強度はあらゆる構造体の中で最高とされた。

 社会では、自動車の燃費の効率化や、建築資材も環境負荷のかからない軽量化のニーズが高まり、省資源や二酸化炭素削減につながる製品の軽量化が模索されていた。「環境配慮型企業としての新しいモノづくりへの挑戦」を経営方針に掲げていた利幸。この素材が開発本部の課題にあった、地球環境に配慮した軽量素材に当てはまった。

 新たな構造体は研究段階だが、可能性を感じ、開発部長を現地に派遣して調査を指示した。「産業の基礎素材のあらゆる分野で使える」との報告を受け、技術に魅力を感じて事業化に向けてかじを切るが、欧州の政府、企業、研究機関の産学連携プロジェクトだったため参加企業に優先権があり、具体的な一歩を踏み出すまでに1年半待たされた。

 07年、発明者が設立したベンチャー企業から、技術を紹介した商社がアジア、中東、オセアニアでの独占製造、販売権を取得し、岐阜プラと商社は物流・梱包(こんぽう)資材分野で日本国内の独占製造・販売権を取得した。

 新素材の道は開け始め、量産設備の検討、マーケティングを開始。ブランドネームを技術のテクノロジーと六角形のセルを融合させ「テクセル」とした。世界に類をみない製造方法のため、機械メーカーと検討を進め、本社工場内にテスト設備を設けて製造ライン1号機を完成させ、良品ができるまで試行錯誤を重ねた。09年に量産を開始し、事業化に自信を持ったが、製造、2次加工、営業は拠点が点在していた。

 業務を集約して効率化を図るため、本社の開発部隊と生産部隊とが一体となって事業を進められる事業用地を探した。揖斐郡大野町のパナソニックデバイス岐阜工場跡地を取得し、テクセル専用の事業所に充て13年に稼働させた。テクセルは高強度、超軽量が最大の特徴。これを生かせるコンテナ、ボックス、パレットの物流資材分野で製品化を始めた。

 これにとどまらず各種素材との貼り合わせによる複合化でも製品を開発した。テクセルとアルミで電車車両ドア芯材、化粧板と組み合わせた和室用テーブル天板、不織布と合わせた自動車内装材などに広がりをみせた。吸音効果があることに着目した軽量防音パネルの採用も進んでいる。工場の製造機械を囲うことで近隣などへの騒音防止の改善や、労働者への労災防止につなげている。

 世界で初めて量産化したテクセルの量産技術や商品開発によって、15年には、経済産業省などが主催するものづくり日本大賞の経済産業大臣賞を受賞。さらにこの年、知的財産権制度の発展に貢献したとして、経産省などの知財功労賞で特許庁長官表彰を受けた。これは特許や商標の年間出願件数が県内1、2位のトップクラスを誇り、知的財産の保護や活用に積極的な姿勢が評価された。

 成長分野と位置付けるテクセル事業。利幸は「素材のテクセルは将来1千億円以上の市場規模が見込める」と成長を見通す。現状の事業見込みは年間18億円だが、提案中の案件も多く、事業の大きな柱への足がかりになるとみる。(敬称略)


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