ぎふ財界人列伝 ぎふプラスチック工業編 この道を行く
植物由来、業界をリード

  • 植物由来のプラスチック製造元の米国ネイチャーワークス社と契約を結んだリスパック社長の大松利幸(左)=2006年、東京都
  • 植物が原材料と明記した食品容器
  • プラスチックをリサイクルした原料で製造した擬木の施工例

(9)環境問題への対応

 「課題に対応できなければ駄目になる。逆に対応すればビジネスチャンスになる」。大松利幸が社長に就任してから最初の大きな課題だったのが、食品容器の主要素材である塩化ビニールを他の素材へ切り替えるかどうかだった。塩ビはダイオキシン類を発生するとして、2000年前後に社会問題になっていた。そこで、リサイクルでき環境負荷も小さい素材のPET(ペット)への切り替えを決断。業界で最も早く達成したことで社業の飛躍のきっかけにした。

 素材を切り替えなければ生き残れないと判断したものの、乗り越えなければならないハードルは、品質条件や食品との適合性など11項目に上った。それをホワイトボードに書き出し、腕組みをして考えた。ゆっくり判断するほど時間はなかった。ピンチだったがチャンスにした。「何が飛んでくるか予見はできない。後ろからかもしれない。商売人は、飛んでくる課題を解決し次へ進むしかない」と、常に対処できるよう構える。

 環境問題への対応は岐阜プラスチック工業の歴史でもたびたび課題となり、克服へ知恵を絞った。プラスチックは利便性の高さから急速に普及したが、環境問題に社会の関心が集まると、ごみになった際、利点とされた耐久性や耐食性の特徴が問題視されるようになった。

 不要となったプラスチックのリサイクルを推進するために開発したのが、景観製品のプラスチック製擬木だった。1992年にリス興業が製品化。100%リサイクル原料を使用して、環境対応製品として市場での認知を目指した。コンクリート製品の約3分1の重量で輸送費を低減させたこともアピールし、全国販売した。岐阜県のリサイクル認定を受け、日本環境協会のエコマークも取得した。プラウッドと名付け、類似の簡易ステップも作った。リサイクル製品の活用に積極的だった官公庁に採用され、シェアを拡大して知名度を高めた。

 環境対応の先進的な取り組みの一つは、リスパックが他社に先駆けて2005年に本格的に発売した植物由来のバイオマスプラスチックを採用した食品容器だ。トウモロコシなどの植物を原料にした環境に配慮した素材に着目した。植物由来のプラスチック製食品容器には、100%植物由来のタイプや石油由来の混合のタイプがある。近年クローズアップされ、地球規模で深刻化している海洋プラスチックごみ問題に対応するため、18年には当時15%だったこの食品容器の採用率を、22年3月期売上高で25%にまで拡大することを決めた。100%植物由来の容器の場合、製造コストは石油由来のタイプに比べて3割ほど高いが、この取り組みも業界をリードする形となった。

 利幸は「石油資源はいつか枯渇することが、警告のように頭から離れない」と言う。このため、環境負荷が小さい植物由来のプラスチックの将来を見込み、リスパックは06年に生分解性プラスチック「ポリ乳酸」の生産世界最大手ネイチャーワークス社(米国)と、販売と商標使用許諾の契約を結んでいる。これにより原料の安定確保が可能となり、利幸は「両社が考える地球環境への思いが一致した。事業を発展させたい」と意欲を示した。

 「植物由来のプラスチックに神風が吹いている。世の中がそういうムードになっている」と世論の動向を注視する利幸。「ただ100%植物由来に置き換えられることはない。リサイクルで油化技術の研究も進んでいるから」と見通す。(敬称略)


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