移動編集局 飛騨編
民泊、急増で岐路 手軽さとおもてなし両立なるか
ルポ飛騨

2017年05月01日 14:31

ゲストハウスでくつろぐヴォイチス・オットレウンバさん(右から2人目)ら。民泊やゲストハウスはここ1、2年で急増している=4月27日、高山市総和町

ゲストハウスでくつろぐヴォイチス・オットレウンバさん(右から2人目)ら。民泊やゲストハウスはここ1、2年で急増している=4月27日、高山市総和町

 窓から飛騨国分寺と桜が見える高山市街地のマンションの一室。観光でポーランドから元同僚と来日し、26日から同市に滞在しているヴォイチス・オットレウンバさん(40)ら6人は、夕食前にリビングでくつろいでいた。「部屋も大きくて風呂もきれい。宿泊予約サイトの口コミは間違いなかったね」と満足そうに語った。

 6人が泊まるのは、通訳案内士の川瀬淳一さん(40)=高山市=が市内の賃貸用マンションを借りて昨年夏にオープンした「タニャポーン・ゲストハウス」。利用者のほとんどが外国人だ。部屋は2LDKとゆったりしていた。客とのやり取りは、宿泊予約サイトでの連絡で完結する。部屋のドアの横にある小箱を暗証番号を使って開けると、箱の中に部屋の鍵が入っていた。客とオーナーが直接顔を合わせない仕組みだ。

 「名所からの距離と値段が決め手になった。気楽でいい」とヴォイチスさん。「日本ではホテルやゲストハウスなどいろんな所に泊まっているよ」と話した。

 宿泊予約仲介サイトの世界大手「エアビーアンドビー」の普及などで、外国人観光客が増えている高山市内を中心に民泊やゲストハウスが増加している。同サイトで検索すると、市内でおよそ70物件が該当。不動産仲介業の健栄住宅商事(高山市)の長瀬栄二郎社長は「国内で民泊事業の実績がある業者からの問い合わせがここ1、2年で急増している」と勢いを感じている。旅行スタイルの多様化に伴って宿泊へのニーズも変化し、安価で手軽な民泊の人気が高まっている。

 一方、「(民泊事業は)グレーゾーンが多い」と川瀬さんは指摘する。「(旅館業法の簡易宿所の営業許可を得て)きちんとやっているのは市内でも3割ほどだろう」。実際、民泊の営業をしているとみられる市内のアパートに、表札は見当たらなかった。宿泊場所の地図と部屋の鍵は、近くの飲食店で受け渡しをしていると聞いた。また、市観光課の職員は「公共交通のない別荘を紹介されてさまよう外国人観光客を、住民が見かねて車で送った例もあった」と話す。実態の把握は難しいようだ。

 国は、健全な民泊サービスの普及を目的に、住宅宿泊事業法案を国会に提出し、ルール作りを進めているが、民泊ビジネスは過渡期にある。高山市と飛騨市で古民家を改修したゲストハウス「iori」を展開する松場慎吾さん(32)=飛騨市=は「安かろう悪かろうの事業者が増えて飛騨のイメージを落としたくない」と話した。

【記者のひとこと】

 普通の民家から外国人観光客らが出てくるのは、高山では見慣れた光景だ。おもてなしの心を大切にしてきた既存宿泊施設からは、長年築いてきた飛騨高山のブランドにただ乗りしているとの印象がぬぐえない。ただ、ニーズの変化があるのも現状。「iori」のように社員がゲストを送迎したり、料理やサイクリングなどの体験ツアーを実施するなどサービスを広げている事業者もある。春と秋の高山祭などの際は毎回、宿泊収容人員を超える。陰に隠れた一部の民泊事業者も、地域の一員として飛騨高山の観光のこれからを共に考えるべき時に来ている。