移動編集局 飛騨編
地域の当たり前が宝 小坂の炭酸泉シュワシュワ会会長 伊藤博子さん
飛騨を拓く

2017年05月02日 12:05

無理なく楽しい地域おこしを目指す伊藤博子さん。炭酸泉の美容効果に注目し、新たな客層を開拓している=4月、下呂市小坂町落合、仙游館

無理なく楽しい地域おこしを目指す伊藤博子さん。炭酸泉の美容効果に注目し、新たな客層を開拓している=4月、下呂市小坂町落合、仙游館

天然炭酸泉、料理やツアーに活用

 天然の炭酸泉が湧く下呂市小坂町。炭酸泉による地域おこしに取り組む「小坂の炭酸泉シュワシュワ会」の会長伊藤博子さんは「無理せず、楽しみながらが一番。続けやすいことを観光の売りにする」と語る。背伸びをしない取り組みの積み重ねに、高齢化が進む温泉地の活性化の活路を見いだす。

 年間宿泊者数100万人を維持する下呂温泉から、車で北へ約40分。御嶽山の麓に、伊藤さんがおかみを務める旅館「仙游館(せんゆうかん)」はある。小坂川など豊かな自然に囲まれ、古くからの湯治場としても知られる下島(したじま)、湯屋の両温泉は、日本有数の飲用可能な天然炭酸泉だ。

 子どもの頃から毎日のように炭酸泉を飲んで育った伊藤さんだが、観光資源としての価値に気付いたのは10年ほど前。「天然の炭酸泉はとっても珍しい」という宿泊客の一言だった。泉質を絶賛する宿泊客の反応を見て、炭酸泉で地域を盛り上げようと、2004年に両温泉のおかみ4人で会をつくった。

 炭酸泉を料理に取り入れると、湯豆腐はふわふわになった。美容にも着目し、炭酸泉を使った化粧水を商品化。町内限定で販売する予定だ。今年4月には1泊での飲泉体験ツアーを企画し、全国から若い女性が集まった。

 14年秋の御嶽山噴火直後は宿泊客が半分以下に。地道な取り組みを続け、2年以上かかってようやく噴火前の状態に戻った。

 試行錯誤をする中で分かってきたのは、地元での"当たり前"の中に「宝」があること。「地元の人なら誰でもやれることを商品にすれば、簡単に引き継ぐことができる」と、宿泊客が住民と一緒に郷土食作りを体験するプランを提供している。かつては若年層の入り込みを増やそうとカフェの開設を考えたこともあったが、いまは地域を巻き込み、活動を続けていくことが活性化の鍵と感じている。

 最近は、御嶽山麓の滝巡りを楽しんだり、温泉でくつろいだりと、旅先でのんびりと過ごす若者グループが目立ってきた。「心と体を癒やしに来ている。ストレス社会で、若い人たちが求めるものが小坂にはある」と思う。日常の中に隠れている"本物"に磨きをかけていくつもりだ。

 御嶽山の麓にある下島温泉(下呂市小坂町落合)の旅館「仙游館」の長女に生まれる。39歳で5代目おかみを継ぎ、1男1女をもうける。「小坂の炭酸泉シュワシュワ会」の会長として、名物の天然炭酸泉を活用した料理や化粧品の開発、イベントの企画などに取り組む。59歳。