移動編集局 飛騨編
スーパーから絆育む 駿河屋魚一社長 溝際清太郎さん
飛騨を拓く

2017年05月03日 12:02

「スーパーを住民同士の交流を生み出す場にしたい」と意気込む溝際清太郎さん=高山市松之木町、エブリ東山店

「スーパーを住民同士の交流を生み出す場にしたい」と意気込む溝際清太郎さん=高山市松之木町、エブリ東山店

「食」テーマ、住民の交流拠点整備

 先人たちが大切にしてきた「食」をテーマに住民の絆を育みたい-。高山市、飛騨市でスーパーを展開する駿河屋魚一を経営する溝際清太郎さんは昨年5月、高山市松之木町のエブリ東山店にキッチンをしつらえた交流拠点をオープンした。「多くの人が訪れるスーパーの、場所としての価値を高めることで、持続可能な地域づくりに貢献できないか」。そんな思いからだった。

 交流拠点は「Fresh(フレッシュ) Lab.(ラボ)Takayama」。ガラス張りの一室にある豊富な調理機器を備えたキッチンには、店で購入した食材を一緒になって調理する若者たちの姿がある。

 店は多くのファミリー層が暮らす住宅地に程近い場所にある。週1回の料理教室のほか、飛騨牛100%のハンバーガーづくり、大手食品メーカーと協力しての香辛料の講習会、著名な料理人を招いたトークショーなど次々とイベントを企画し、地道に住民たちを呼び込んできた。

 開設の背景には、「家庭の味が伝承されにくくなっている」という危機感がある。訪日客を含め年間450万人以上の観光客が訪れ、市内がにぎわう一方、核家族化による世代間の分断が地方においても人ごとではなくなってきた。「人と人とのつながりや温かみこそが観光客を呼び込む原動力だと思う。でも、その魅力がこの先も守られていくだろうか」

 高山祭に屋台組の一員として参加するなど人一倍熱心に地域の行事に関わる。それが高山の良さだと思うからだ。同じように、住民同士が一緒になって何かに夢中になれる空間をスーパーにつくれないか。「食を通じて地域の幸せをつくる」。たどり着いたのは、1933年創業、65年設立の駿河屋魚一の理念だった。

 市内には郷土料理を中心に、独特の食文化が根付く。年越しに各家庭で食卓に並べる塩ブリや煮イカなどのごちそう、厳しい寒さの冬に焼いて食べる漬物の味...。海外からも脚光を浴びる観光地の原点には、人々の素朴な暮らしがある。「お金と物のやりとりだけならインターネットでできてしまう時代。だからこそ、人と人との交流を生み出す場所づくりにこだわりたい」。そのための手段を、ひたむきに模索していく。

 東京都内の大学を卒業後、飛騨地域でスーパー「駿河屋」「エブリ」など5店舗を展開する「駿河屋魚一」(高山市岡本町)に入社。副社長を経て、2010年3月に社長に就任。食を通じた幸せの創造をモットーに、年越し料理に欠かせない塩ブリの仕込みなど、郷土の味の伝承に励む。高山市出身。32歳。