いじめと向き合う
「普通の子」同士なぜ 暴行、金銭要求きっかけ見えず
〈第1部〉岐阜市中3自殺1年(1)

亡くなった生徒が通っていた中学校に登校する生徒ら=30日、岐阜市内(画像の一部を加工しています)

亡くなった生徒が通っていた中学校に登校する生徒ら=30日、岐阜市内(画像の一部を加工しています)

 岐阜市内の中学校の卒業アルバム。あるクラスのページには、白い歯を見せる卒業生33人が並ぶ。「いじめがなかったことになっている」。卒業生の1人の高校1年男子生徒は6月、アルバムに目を落としてこうつぶやいた。

 昨夏にいじめを苦に自ら命を絶った男子生徒、いじめに中心的に関わったとされる男子生徒の写真も名前もなかったからだ。「学校はいじめの事実に触れないようにしていた。このままみんな忘れてしまう」

 昨年7月3日朝、岐阜市のマンション駐車場で、近くに住む中学3年の男子生徒=当時(14)=が倒れているのが見つかり、同日夜に死亡した。マンションから飛び降り自殺を図ったとみられる。自宅から、いじめを示唆するメモが見つかった。

 市教育委員会は5日、生徒へのいじめがあったことを認めた。有識者らでつくる第三者委員会も調査に乗り出す。生徒や教職員らへの聞き取りなどを経て昨年12月、いじめが自殺の主な要因だったとする報告書を公表。暴行や金銭の要求など34件のいじめが認定された。

 亡くなった生徒の14年の歩みはどんなものだったのか。報告書には生徒の幼少期から中学生期までの様子が記されたが、公表時は遺族の意向で白紙になった。

 取材を進めていくうちにおぼろげながら人物像が浮かんできた。関係者は「普通の子ども」と印象を語った。子どもたちの間でいじめのきっかけになりがちな身体的な特徴もなかった。部活動に励み、仲良く遊ぶ友人もいたという。

 一方、同級生は「優しい性格で目を付けられたのかも」と推測する。周囲に悩みなどを積極的に相談するようなことはなかった。我慢強い一面が、苛烈ないじめに限界まで耐えさせていたのだろうか。

 岐阜地検は3月、生徒にトイレで土下座させたとして、同級生の少年3人を強要などの疑いで岐阜家裁に送致した。第三者委は、いじめに関わった生徒は10人ほどで、うち3、4人が中心的に関わったとみている。「やんちゃで威張っている」「クラスでリーダー格の存在」という声もあるが、関係者は総じて「普通の子ども」だったと捉える。

 かけがえのない命が失われたいじめは、そんな普通の子どもたちの間で起きていた。

     ◇

 いじめによる自殺は後を絶たない。いたたまれない事件を振り返るとともに、子どもや家庭、学校の「今」を探り、いじめに向き合いたい。


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