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機能温存目指したがん治療

2018年07月16日 11:42

放射線治療医 田中修氏

 がん治療というと、日本人は胃がんが多いこともあり、手術を思い浮かべるかと思います。もっとも胃がんは消化管なので、基本的には手術で治療することが多いです。では、最近増加傾向の前立腺がんや肺がんではどうでしょうか。ポケットベルが携帯電話、そしてスマートフォンに変わったように、技術の進歩はすさまじく、放射線治療の機械も急速に高度化し、手術と同程度にがんを治せるようになってきました。

 治療では主に3種類の方法で使います。①放射線のみ(喉頭がん、早期肺がん、骨転移、脳転移)②抗がん剤と併せて(食道がん、進行期肺がん、子宮がん)③手術と組み合わせる(乳がん、頭頸部(けいぶ)がん)。このように放射線治療は、他の治療方法と組み合わせることで治癒を目指します。放射線治療の最大の利点は機能が温存できることです。例えば声帯を取ると声が出せなくなります。食道を取ると小腸などで再建するのですが、ご飯が飲み込みづらくなります。臓器を温存したい場合は、放射線治療が向いています。

 放射線治療は、患者は台に寝ているだけで機械が動いて放射線を照射します。治療時間は10分ほどです。脳や頸部を治療する時は顔を専用のマスクで覆い、精度を高めます。1ミリ以内の誤差の範ちゅうでピンポイント照射する際に用います。ピンポイント照射は脳転移のほか肺がん、肝臓がんに使います。

 ほとんどが通院治療で、日常生活を送ることは可能です。通常週5日治療を行います。どのくらいの回数治療するかは、治療の目的などにより異なります。期間中は照射する位置の確認を毎回行い、診察を看護師は毎日、医師は週1回行います。

 副作用は放射線治療中、または終了直後(急性期)と、半年から数年後(晩期)に現れるものがあります。基本的には治療部位に起こる局所的なものがほとんどですが、全身に起こる場合もあります。ただ、副作用ができるだけ少ない方法で治療計画を立てるので、重篤な副作用は少数の人にしか現れていないです。しかし個人差があるため、絶対大丈夫とは言い切れません。

 副作用を軽減するために、ピンポイント照射や強度変調放射線治療という高度な放射線治療が使われているのですが、その上をいく重粒子線治療があります。前立腺がんの強度変調放射線治療=図上段=と、重粒子線治療=同下段=を比べてみます。赤いところが強く放射線が当たっており、青色は当たっている放射線が少ない部分です。強度変調放射線治療でも、正常な前立腺の周囲臓器に照射される範囲は小さいのですが、重粒子線を用いると、さらに正常の周囲臓器に照射される範囲が小さくなります。

 ただ、重粒子線治療は高度先進医療の適用で、自己負担が約300万円必要になります。現在、県内に重粒子線治療施設はありませんが、この治療について知りたい場合は、放射線治療専門医に相談してみましょう。

(朝日大学病院放射線治療科准教授)

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