教えてホームドクター
女性の便秘
黄体ホルモン、腸管に作用 「食べない」ダイエット避ける

2019年01月14日 14:17

産婦人科医 今井篤志氏

 厚生労働省は3年に1度、国民生活基礎調査を実施しています。調査項目の一つに患者調査があり、疾病分類の患者数や受診状況などの結果を提供しています。それによると、女性は男性の3~6倍のおなかのトラブルを抱えており、女性の便秘の訴えは男性の2倍です。しかも男性の便秘は60歳以降に急増しますが、女性では思春期以降から多いのが特徴です。便秘は生命の危機には直結しないのですが、日常生活の質を低下させます。今回は女性の便秘を考えてみましょう。

 成人女性になぜ便秘が多いのでしょうか。思春期以降になると、卵巣から女性ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、月経が毎月来るようになります。この黄体ホルモンが腸管にも作用し、便がたまったという情報を鈍らせると同時に、腸管の収縮を抑えると考えられています=図=。妊娠中はさらに多量の黄体ホルモンが胎盤で産生されるため、妊娠中に便秘が増加するのも、このためです。

 また、女性はダイエット志向が強く、食事を抜くことや食物繊維の摂取不足なども大便の量を減らします。すると、腸管は便がたまった刺激が分かりにくくなり、腸管の運動が起こりません。便秘を助長することになります。日常生活でストレスが過剰になると、腸の運動が異常になり、便秘になることがあります。自律神経が乱れて腸管運動が強くなりすぎると、便を押し出せなくなるからです。

 男性の生殖器は体外にありますが、女性は卵巣や子宮などがおなかの中に収まっています。臓器がぎっしりと詰まっていることになります。しかも、子宮内膜症といった腹腔(ふくくう)内の病気や分娩(ぶんべん)・帝王切開を経ると、臓器が癒着して腸管の運動性が低下します。このように女性は男性に比べ、便秘になる要因がたくさんあります。

 食べたものが消化され排泄(はいせつ)するまでは24時間が目安ですが、長期間大便が滞ると腸内細菌の悪玉菌が増殖し、硫化水素やアンモニアなどの有害物質が産生されます。便秘後の大便が臭いのはこのためです。有害物質は発がん物質として働くのみならず、腸壁から吸収され、血流を介して肌荒れや口臭・体臭の原因となります。また、大腸の80%は水分ですが、長期間大腸に滞ると、水分がどんどん吸収されて便が硬くなり、大腸内で動きにくくなるという悪循環に陥ります。

 食べる量を減らすのは大便の材料が不足するので便秘になります。「食べない」ダイエットではなく、適度な運動を取り入れ、腸管の運動も保つようにしましょう。最近、便秘に対する新薬が続々と登場しました。3日以上便通がない便秘が続いたら、専門家の助言を受けながら日常生活を快適に送りましょう。

 (松波総合病院腫瘍内分泌センター長、羽島郡笠松町田代)


過去の記事