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動物の妊娠期間

2020年08月05日 09:40

産婦人科医 今井篤志氏

 皆さんはヒトの妊娠期間は280日であることはご存じでしょう。動物の中で最も妊娠期間が長いのはゾウです。650日にもなります。ハツカネズミという動物がいるように、ネズミの妊娠期間はほぼ20日です。動物の妊娠期間は寿命、体重や生まれる子の数などに左右されそうですが、一緒に考えてみましょう。

 よく知られた動物の妊娠期間と寿命をグラフ化しました=図=。そのうち一部をもう少し詳しく紹介します。クジラの中でも体重190トンのシロナガスクジラは1回に1頭の幼獣を産みます。妊娠期間は350日、寿命は80~90年です。出産間隔は2~3年といわれています。天敵は幼獣や老獣に対するシャチ以外にはほとんどいません。一方、シャチは寿命30年、体重数トンです。その妊娠期間は約500日、幼獣の生存率は50%といわれていますが、シャチの妊娠や子育てには未知な面が多く残されています。

 ゾウは哺乳動物の中で最も妊娠期間が長く、650日、2年弱の妊娠期間です。1頭を出産します。寿命は60~70年ですが、4~9年ごとに1回だけ産みます。ゾウは少産で一生の間に多くて3頭の子を産みます。

 寿命が25年ほどのキリンは妊娠期間が460日前後で、1頭出産します。自然界では生後1年以内の死亡率は、60~70%といわれています。他の肉食獣に捕食されることが多いためです。

 ライオンの妊娠期間は110日ほどで、1回に数頭の幼獣を産みます。授乳期間は7~10カ月ですが、他の肉食獣に捕食されることがあります。百獣の王といわれるライオンですが生後1年以内の死亡率は60%以上、生後2年以内の死亡率は80%以上といわれています。

 類人猿に属するゴリラ(妊娠期間は250日、寿命40~50年)は知能が高いので恐怖や痛みに極めて敏感です。捕食獣に対する警戒心も強く、1頭産みます。

 5~11年生きるウサギは多産で(一度の出産で4~7頭、妊娠期間28日)繁殖力が高い動物です。天敵はキツネなどの小~中型の肉食獣と猛禽(もうきん)類です。

 イノシシも寿命は10年です。妊娠期間は115日で、一度の出産で4~7頭産みます。イノシシの幼少期は天敵が多いため、多産で繁殖力が高いのですが、害獣として田畑を荒らすこともあります。

 有袋類の妊娠・出産については他の哺乳動物とかけ離れている部分があり、今回は図に記載しませんでした。カンガルーの妊娠期間は30~40日で体重1グラム前後の小さい1頭を産みます。未熟なので、生まれるとすぐに母親の袋である育児嚢(のう)の中に入り約8カ月間袋の中で成長します。袋の中も妊娠期間の延長かもしれません。

 ヒトは妊娠期間280日、日本人の寿命は80歳を超えます。以前、本欄で紹介したように(2012年5月28日付11面)、動物も植物も寿命は、ほぼ生殖可能な期間と一致します。子孫を残せなくなると、寿命が尽きるのが自然の摂理です。閉経後余命の長期化は生物としては不自然ですが、医学の発達とともに日本人女性は健康で長生きするようになりました。人間の寿命を55~60歳として図を書き直すと動物の妊娠期間と寿命は相関があるように見えます。

(松波総合病院腫瘍内分泌センター長、羽島郡笠松町田代)

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