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上腸間膜動脈症候群

2020年09月23日 08:20

消化器内科医 加藤則廣氏

 食後におなかが張ったり、気持ち悪くなったりする症状はさまざまな病態で出現します。その一つに、十二指腸が、上腸間膜動脈と大腸脈や脊椎による圧迫のために通過障害を来して生じる「上腸間膜動脈症候群」と呼ばれる病気があります。今回はこの病気について話をします。

 十二指腸は胃から続く消化管ですが、解剖学的には大動脈と上腸間膜動脈の間を通過して小腸である空腸に移行します=図1=。多くの人では、上腸間膜動脈と大動脈の間には十分な脂肪があり、上腸間膜動脈-大動脈の角度が十分に開いていて十二指腸が二つの動脈で圧迫されることはありません。しかし、やせた人では脂肪が少ないため、上腸間膜動脈-大動脈角が狭くなって十二指腸を圧迫し、通過障害を来す「上腸間膜動脈症候群」が発症します=図2=。

 患者さんは10代から30代のやせた若者にみられます。主な症状は食後の胃もたれ感や腹痛、嘔吐(おうと)などです。特に食後にあおむけになると増悪します。腹ばいになったり左側を下にして横になったりすると改善しますが、これは上腸間膜動脈-大動脈角が開いて十二指腸を圧迫しなくなるためです。なお嘔吐した後では自覚症状は速やかに消失しますが、食後に症状が再燃します。

 特に10代の発育期では、急に身長が伸びて相対的に腹腔(ふくくう)内の脂肪が減少することにより、一時的にこの病気が出現することもあります。また、やせ願望のある若い女性で、食後に嘔吐を繰り返す神経性食思不振症などの心療内科的な疾患との鑑別が難しいこともあります。食べられないと体重がさらに減り、脂肪もより少なくなって上腸間膜動脈-大動脈角がさらに急峻(しゅん)になり、十二指腸を圧迫して症状が悪化します。また急激なダイエットによって出現することがあります。

 背骨が横に曲がっている側湾症の患者さんや、あおむけで寝たきりのやせた高齢者にもみられます。高齢者でこの部位に腹部大動脈瘤(りゅう)が出現・増大して上腸間膜動脈症候群を発症、腹部動脈瘤の診断に至ったという報告もあります。

 一方で、自覚症状があって病院を受診しても診断に至らない患者さんも少なくありません。診断は、この病気を念頭に置いた消化管造影検査や、造影剤を使用した腹部CT(コンピューター断層撮影)によって行われます。

 治療法として、多くの患者さんでは太ることによって脂肪がつくと症状が改善・消失します。また、まれですが外科的にバイパス手術が選択されることもあります。

(岐阜市民病院消化器内科部長)

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