県美は今
美術館の役割 SNSで企画、交流生む

2020年05月20日 08:16

 新型コロナウイルス感染症によって世界が一変したいま、美術館にできることは何か。

 岐阜県美術館では展覧会の他、学芸員による講座や、作家による実技講座、教育普及係による鑑賞プログラムなど、美術や教育の専門家がさまざまな過ごし方を提供してきた。しかし近年、こうした専門家以外の人々が関わる事業が増え、美術館はより多様な人々が集まる場所へと変貌を遂げつつある。

 例えば、2015年から始まった「アートまるケット」では、美術館を人々が交流することで文化が生まれる場所に、そして岐阜を"アートだらけ(岐阜弁で、まるけ)"にしたいという思いから、県内の教育・医療・福祉施設とのイベントや館を飛び出して地域と協働するアートプロジェクト、県内のアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)事業の紹介を行っている。ここでは作家や学生、地域の人々が主体的なプレーヤーとなって、職員と一緒にワークショップなどを企画・提供する。関わる人が増えることで、今まで美術館に来たことのない人も思わずふらっと立ち寄ってしまう魅力がこの場所から生まれてきた。

 休館が続いた状況下では、オンライン上でさまざまな人が気軽にアートを楽しみ、交流できる場を提供してきた。会員制交流サイト(SNS)での企画「#岐阜県美―私の元気はここから」では、元気が出るコトやモノをテーマに、ハッシュタグとともに写真を掲載することで、他の人の元気に触れ、心理的につながることのできる機会を提供している。また、ウェブサイトでは岐阜ゆかりの作品だけでなく、国内外の豊富な所蔵品が検索できるほか、過去の展覧会報告書を見ることもできる。

 いつもと異なる日々の中、他者との関係性を見つめなおす機会も増えてきた。共生するためには、自分も相手も安心できる環境が必要だ。多様な背景を持つ人々が出入りし、自分もこの世界にいていいと感じられる包容力を持つ"プラットフォーム(基盤)"こそ、美術館が担うべき社会的役割である。このプラットフォームを通して、アートだけでなく、普段接点のない人、そして世界とつながってみてはいかがだろうか。

(県美術館学芸員・芝涼香)

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 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、18日まで休館している県美術館。自宅でも美術を楽しんでもらえるよう、記事にちなんだ動画を配信中。


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