NIE アドバイザー通信
NIE全国大会名古屋に参加して

2017年08月28日 13:29

  • 熱心に公開授業を参観する原田結花NIEアドバイザー=名古屋市熱田区、名古屋国際会議場
  • 公開授業の展開に注目する細江隆一NIEアドバイザー=同
  • ワークショップで指導する奥田宣子NIEアドバイザー=同

 第22回NIE全国大会・名古屋大会は3、4の両日、名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開かれた。「新聞を開く、世界をひらく」をスローガンに記念講演、座談会、公開授業、実践発表、特別分科会と、充実したプログラムを展開。岐阜県NIEアドバイザーの原田結花教諭(山県市立高富中)、細江隆一教諭(美濃加茂市立西中)、奥田宣子教諭(山県市立富岡小)も、新聞記事を活用して深い学びを求める取り組みに参加し、意見交換した。閉会後のアドバイザー会議を含め、それぞれ印象に残った取り組みについて、報告を寄せた。

夢との出会い新聞から 原田結花教諭 (山県市立高富中)

 大会初日の講演、シンポジウムは、ユーモアいっぱい、笑いがいっぱい、夢いっぱい。「中学生棋士藤井聡太四段の29連勝とノーベル賞受賞と、どちらが素晴らしいか」。藤井四段にあこがれ、日々関連記事を収集している小学校5年の男の子からの質問。みなさんならどう答えますか。

 「工学とは人と人とを結ぶ学問だ」という大学の先生の一言から、青色発光ダイオード(LED)の研究につながったノーベル賞受賞の天野浩名古屋大教授。オリンピックでの女子柔道の活躍を見て自分も出たいと思った吉田沙保里選手。2人とも「夢を持てたから学びが主体的になった」という。

 「世界で活躍するために大事なことは」という問いに、吉田選手は「世界一の練習をする」。天野教授は「心の元気を持ち続ける。成果がなかなか上がらなくても『楽しい』という思いで研究をやってこられたのは、心の元気があったからです」。天野教授は、講演の中で「新聞は未来を照らす羅針盤」「新聞記事は現在の世界や日本を映し出す鏡」とも述べられた。

 2日目、夢に出会う高校生の新聞を活用した授業を見せてもらった。名城大学付属高校3年の「10年後の君は ~新聞を通して、自己のキャリアプランを考える~」である。

 授業では、10年後の友人を新聞の人物紹介記事にならって「他者紹介」する形で行われた。例えば「笑顔と輝きを届ける化粧品販売員」「中東と日本の懸け橋となり、国連職員」と、ペアを組んだ友人がスピーチする。

 生徒らはこの学習の前に、10年前の社会情勢を新聞で調べ、今後10年間で世の中はどう変わるかを予想し、社会と職業について関連付けて考えた。聞き手の生徒も素晴らしい。「日経新聞の何月何日には、人工知能(AI)が~とありましたが、化粧品販売を人がやる利点についてどう考えますか」「サプリメントの記事で~」など、その職業の変遷について、社会情勢の記事から質問がどんどん出てくる。その場で本人が受け答えをして内容を深めていた。夢の実現を、新聞記事を読み解く、新聞記事にまとめる、そして友達と話すことで、より現実味の増すものにしていた。

 NIE推進に、私も意欲を新たにした大会となった。

先生方の熱意一層強く 細江隆一教諭 (美濃加茂市立西中)

 名古屋大会のスローガンは「新聞を開く 世界をひらく」。この意味が「新聞を毎日開く」と「世界を開く」「世界を拓(ひら)く」だと講話にもあった。なるほど昨今新聞の購読数が伸び悩むなか、まずは若者が「新聞を開く」ことが大事だし、同時に情報を得て世界を「開く」「拓く」ことは、これからの国際社会で求められる力だと感じた。スローガンがグローバルな視点で掲げられていることが本大会の新しさの一つだ。

 私は大会後のアドバイザー会議にも毎年出席しているが、今年は三つの視点で新しさがあった。

 第1は、参加者の多さ。アドバイザーはもちろん、NIE推進協議会や新聞社の方も含め総勢70人以上が参加した。閉会式後だが、毎年この会議の話し合いの熱気はすごいと感じる。今年は、先生方のNIEにかける熱意を一層強く感じた。

 第2は、いつもならアドバイザーだけの話し合いに、多くの新聞関係者が加わったこと。私のグループでは、記者から「皆さんが学校でNIEを進めていく上で『新聞社にこうしてほしい』という要望は」と問われた。これに対して先生方からさまざまな意見が出たが、新聞社側からのアプローチが新しかった。今後も学校と新聞社との連携を密にする必要を感じた。

 第3は、今後は「NIEを広める」と同時に「NIEを深める」ことにも力点を置くべきという視点。この提案は関口修司NIEコーディネーターから出された。NIEの重要性は新学習指導要領に位置付けられ、拡大の兆しがある。本大会でもNIEの意義や価値が確認された。紹介された主管新聞社発行の新学習指導要領に基づいた「NIE学習カリキュラム」(小学校編・中学校編)は、国語科・社会科の教科書との準拠を図る資料付きで、画期的な内容だ。とすれば、教師はNIEの実践者を増やす(量の向上)とともに、その内容を深める(質の向上)ことが求められる。

 アドバイザー会議の2時間はあっという間で「全国にこれだけ熱心な先生方がいる。私も頑張らないと」と決意を新たにした。全国大会最多の参加者を誇った今大会。その成果は全国の先生方の努力によって受け継がれていくに違いない。

記事収集で思い豊かに 奥田宣子教諭 (山県市立富岡小)

 名古屋大会では、先生方や新聞関係者の方から貴重な話を伺うことができた。特に、記者の方から「新聞の役割」「文体の吟味」など、情報を伝える新聞が担う責任という点で、私にとって学び多き大会となった。

 毎日届く新聞は、記者が取材をし、限られた紙面の中に情報が詰まっている。この作業過程は、読み手を意識したものであり、文体が何度も見直された集大成である。見出しはメッセージ性があり、心を引き付ける言葉が吟味され、記者の鋭い視点が読者の心を動かす。こうした記事であるからこそ、子どもたちはもちろん、私たち教師が、NIEを通して心を耕し、学ぶべき点が多いと感じた。

 今回私は、「社会に目を向け、自分の思いを確かにするNIE」と題し、特別分科会「新聞切り抜き作品の教育効果」を伝えた。作品のベースは、朝の会の1分間スピーチ。このスピーチを継続することによって、子どもたちの日常に新聞が位置付く。さらに自分が気付かなかった社会の出来事を仲間と共有しながら、自分の思いをより豊かに、より確かなものにしていく。子どもたちは、この日常によって、自主的にノートに記事を貼り、思いや感想を書きためる。見出しや記事だけでなく、写真や図表、グラフの効果、またグラフの推移から考察する力も身に付けていった。

 作品づくりは、テーマごとの3人チームで取り組んだ。動物をテーマに記事を集めたチームは「役立つ」「癒やす」「危険」「絶滅」という点で分類。3人は、動物好きであった段階から、動物と人との関係を見つけ始めた。仲間と話し合っているうちに漠然とした思いが主張へと変わっていった。記事を収集し、読み込んだチームには貫く思いがあり、仲間と作ることで、一人では難しさを感じていた子も、自信を持って自分の思いを語るまでに変わった。ここに、どの子もが伸びる学び方、アクティブラーニングを実感した。

 興味関心から始まった記事の収集活動。新聞切り抜き作品と共に、自分の思いを確かなものにしていく子どもの意志ある言葉には、説得力のある主張が伝わる。子どもたちは、新聞と出会い、将来に対する志を抱き始めた。