NIE いま 学校で
「深い学び」への実践例を紹介/次期学習指導要領
岐阜市で新聞活用セミナー

2017年09月04日 16:21

次期学習指導要領の実施を見据え、学習への新聞活用を考えたセミナー=岐阜市司町、みんなの森ぎふメディアコスモス

次期学習指導要領の実施を見据え、学習への新聞活用を考えたセミナー=岐阜市司町、みんなの森ぎふメディアコスモス

 「主権者教育」と「アクティブ・ラーニング」に注目した「次期学習指導要領の新聞活用セミナー」が先月22日、岐阜市司町のみんなの森ぎふメディアコスモスで開かれた。県NIE推進協議会が初めて開催。関口修司日本新聞協会NIEコーディネーター、宮崎三喜男東京都公民科・社会科教育研究会事務局長(都立国際高校主任教諭)、植田恭子日本NIE学会常任理事(大阪市立昭和中学校指導教諭)が講師を務めた。講義では、次期学習指導要領の重点に重なるNIEの効果を示すデータや、新聞を活用した主権者教育の授業例、新聞をはじめ多様な情報源を生かして深い学びを追究する実践例などを紹介。熱心に聞き入っていた県内各地の教師らは、「とても参考になった」「授業に生かしたい」などと、早速実践への意欲をみせていた。講義の概要を紹介する。

◆新聞で言葉のシャワー 関口修司氏(日本新聞協会NIEコーディネーター)

 2020年度の小学校から中高校へと順次、全面実施される次期学習指導要領。今回もポイントとして挙げたいのが言語能力だろう。その確実な育成を求めている。ある教育者が「本や新聞で子どもたちに言葉のシャワーを浴びさせて」と述べていたが、同感。語彙(ごい)の習得に力を入れたい。指導要領の新旧比較を表にしてみた。小中では(教科全般の基本的な考え方を説明する)「総則」で、適切な活用を図るものの一つに「新聞」と記された。これは大きなことだと考える。社会科の項目では「新聞は平素から親しみ、適切に活用できるもの」という記述もある。

 私は以前、校長で赴任した都内の小学校で、朝の始業前に新聞に触れる「NIEタイム」を導入した。記事を切り抜き、ワークシートに貼ってコメントを書くなどする取り組みだ。実践を重ねて感じるのは、無理しては駄目で、こつこつと継続させることが大切だ。それが力になっていく。

 子どもが主体的に取り組むには、教師の役割が重要。子どもの背中を押し、『さあ、自分たちでやってごらん』と導きたい。

 アクティブ・ラーニングへの新聞活用を提唱したい。「こども新聞サミット」(今年4月、東京)を見てきたが、その一例があった。記事を読み、生徒一人一人が考え、話し合うようにしたい。他者の意見を聞くと悩むことになるが、これからの学習はあえて悩ませることを一つの狙いにしてもよいのではないか。

◆図書館との連携が大切 宮崎三喜男氏(東京都公民科・社会科教育研究会事務局長)

 高校の社会科・公民科の教師として、当初から新聞を使った授業を行ってきた。しかし初任の高校では、授業内容の根拠付けのために使い、また、社説の写しが学力を上げると聞いて力を入れるが大失敗。何のために新聞を授業で使うのかが分かっていなかった。結果、無理して新聞を使うのをやめようと思った。

 異動した学校では、新聞を定期購読していない家庭が73%ということもあり、無理をせずできることから実践した。例えば、政治・経済(現代社会)の授業で、テレビ欄の性差別と思う部分に線を引き、話し合うなど、きっかけ作りに新聞を活用した。

 3校目となる現在の学校の生徒は、社会事象への関心が高く、新聞を読む生徒が多い。そこで、本校だからこそ行う意義がある実践に取り組んだ。例えば、外国と日本の新聞の読み比べ、外国語科との異教科連携授業なども行った。本校でしかできないことを突き詰めると、実はどこの学校でも、環境に合わせて工夫する考え方は同じだと分かった。

 主権者教育は、▽制度説明▽リテラシー▽話し合い▽合意形成▽政策作り▽請願▽模擬選挙▽模擬議会-と整理でき、リテラシーと話し合いは新聞を使いたい。新聞をいつ使うかは、テーマによって判断が必要となる。

 また、新聞の活用には、図書館との連携が大事だと考える。本校では、図書司書が始めた新聞展示やファイリングを、現在は生徒が行うようになった。

◆情報とどう向き合うか 植田恭子氏(日本NIE学会常任理事)

 私が育休の際、新聞が社会との隔絶感を埋めてくれた。仕事に復帰して、個々の子どもに応じて何ができるかと考え、新聞を活用した。1枚の写真から感じることを尋ねると、どの子も前向きで、教室の風景が変わった。こうしてNIEを続けてきた。現在は、新聞をはじめタブレットなど多様なツールが整っている学校図書館を学習情報センターと位置付け、子どもにとって居心地が良く、知的好奇心が喚起される場にしたいと考えている。

 「主体的で対話的な深い学び」いわゆるアクティブ・ラーニングを実現するには、協働的な学びの場とツールの特性を理解した継続的な取り組みが必要である。子どもたちは自分と違う他者の存在を理解し、多様なものの見方、考え方を知り、情報を取り出して適切に活用する力を付ける。大切なのは、情報とどう向き合い、自らの生き方に生かすか。

 東日本大震災を取り上げた授業で、新聞を読み、取材記者から話を聞き、テレビ会議システムを使って現地の人たちと直接話した。子どもたちは、災害報道の葛藤を知り、新たな疑問を持つなど、深い学びにつながった。

 新聞は、信頼性の高い最新の情報を、比較・継続して読むことができる。学校図書館には複数の新聞があり、開かれた学びの場である。情報をうまく活用しながら「他者」と出会い、対話・交流する中で、物事の本質を見極め、背景を考えて、生涯にわたって自ら学び続ける人を育てたいと思っている。