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宇宙の謎「反物質消滅」に迫る/本社でサイエンスカフェ
早戸・東大准教授、Sカミオカンデの実験解説

2017年11月06日 13:21

  • 高校生を中心に幅広い年代が参加したサイエンスカフェin岐阜市=岐阜新聞本社
  • 加速器ニュートリノで宇宙誕生の謎に迫る実験について話す早戸良成東京大准教授=同

ニュートリノ「振動」の違い解析

 宇宙誕生で、「粒子」と、電気的な符号などが逆だがほとんど同じ性質の「反粒子」が同量生まれたと考えられている。しかし、現在の宇宙には反粒子で作られる反物質がほとんどない。この謎を解くため、飛騨市神岡町の東京大宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設は、検出器「スーパーカミオカンデ(SK)」で「ニュートリノ」を使った実験を行い、成果を上げている。このほど岐阜新聞社で開かれたサイエンスカフェでは、同施設の早戸良成准教授が「加速器ニュートリノから宇宙の謎に迫る」と題して、実験の仕組みや成果について解説した。参加者は高校生を中心に年代が幅広く、中には小学校4年生も。早戸准教授は「実験物理の研究で多く使うのは、高校で学ぶ数学です。他に海外の研究者と一緒に研究するので、英語とコミュニケーション力も大事。皆さんはぜひ多くの事に興味を持ち、遊び心を大切にしてほしい」と激励。若い世代に期待を寄せていた。講演の要旨を紹介する。

 「ニュートリノ」は何でも突き抜ける素粒子の一つで、「電子ニュートリノ」「ミューニュートリノ」「タウニュートリノ」の3種類ある。小柴昌俊先生が超新星爆発から飛んでくるニュートリノを神岡の地中に建設したカミオカンデで、世界で初めて観測、ノーベル物理学賞を受賞した。

 規模を拡大したSKでは、梶田隆章先生が、宇宙線が大気にぶつかってできる大気ニュートリノを研究。飛んでいる間にニュートリノが別の種類に変化する「ニュートリノ振動」を発見し、ニュートリノが質量を持つことを明らかにした。その功績で、一昨年ノーベル物理学賞を受賞した。

 1999年から2004年までは、茨城県つくば市のKEK(高エネルギー加速器研究機構)の陽子加速器から人工のニュートリノをSKに打ち込む「K2K」実験を、その後は同県東海村に造られたJ-PARC(大強度陽子加速器施設)から打ち込む「T2K」実験を行っている。

 SKは直径、高さともに約40メートルの円筒形タンクに超純水を蓄えている。ニュートリノが、ごくまれに水にぶつかって作る粒子が前方に出す「チェレンコフ光」の輪を光電子増倍管で観測すると、どのニュートリノがどのくらいエネルギーを持って飛んできたかが分かる。

 宇宙誕生のビッグバン直後、物質と対となる反物質が同量できたといわれているが、現実は反物質がほとんどない。その原因を求めてニュートリノと反ニュートリノの対称性の研究を行っている。

 T2K実験で、ミューニュートリノが電子ニュートリノに、反ミューニュートリノが反電子ニュートリノに変化する数を測定した。

 2010年から今年4月までのデータを解析すると、ニュートリノと反ニュートリノに違いがなければ、電子ニュートリノが67個、反電子ニュートリノが9個見えるはずが、実際は電子ニュートリノが89個、反電子ニュートリノは7個だった。このようなことはニュートリノと反ニュートリノが同じ性質なら100回実験して5回程度しか起きないと予想されるので、ニュートリノと反ニュートリノの「振動」(振る舞い)に違いがある可能性が高いということが分かった。今後約9年で観測量を10倍以上に増やす予定で、違いの有無をさらに精度よく確かめることができる。

 また、3種類のニュートリノのうちどれが一番重いかも、実は分かっていない。次世代の実験として、SKの20倍規模の「ハイパーカミオカンデ」を提案しており、この謎についても挑もうとしている。「陽子」がどれくらいの寿命を持つのかを調べることで、陽子や中性子をつくる素粒子の「クォーク」と、電子やニュートリノなどの「レプトン」の間の関連づけも解明するなど、素粒子の標準模型を超えた物理の研究へ向け頑張りたいと思う。