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土木と命 関わり実感/関商工高・建設工学科
災害記事を読み、課題探る

2018年07月02日 10:32

  • 災害情報など、新聞を活用した授業を行う浅野伸保教諭=関市桐ケ丘、関商工高校
  • 情報発信班を立ち上げ、技術者の在り方を考える新聞づくりを始めた建設工学科3年生ら

 「教材となる新聞を隅々まで読み込むのが日課になっている」と関商工高校(関市桐ケ丘)の浅野伸保教諭(36)。教科書と新聞をリンクさせ、土木と社会との関わりを生徒たちに伝えている。先月18日には「土木技術(を学ぶ)者として必要な防災を考える」をテーマにした研究授業も公開。建設工学科で社会基盤工学を学ぶ3年生17人が、災害記事を読み、防災の視点から土木技術者がどうあるべきかを考えた。

 浅野教諭が本格的に新聞を授業に取り入れたのは2011年3月の東日本大震災以降。震災直後、記事には被害の様子や原因などが連日、現在進行形で出ていた。これらが教科書に掲載されるまでには当然、タイムラグがある。土木技術者を目指す生徒たちが災害を再検証する必然性を感じ、記事を生徒と読んで現実を知り、原因、課題を探った。産業や社会生活の基盤である土木と命、社会との関わりを見つめ直す授業を日常化させた。

 知識を得るとともに疑問も湧き、もっと知りたいという生徒の意欲が高まる。「日本は島国で、国土の真ん中が隆起し、火山国ゆえ土がもろい。河川勾配も急で、梅雨期や秋雨期に豪雨が偏り、土砂災害や洪水への備えが必要となる。岐阜県は約8割が山地で、県内に約4千カ所ある砂防関係施設の老朽化も懸念される」。これまでに学んだ日本の自然、気象、地形の特徴と、想定される災害を「関商工オリジナルの相関図」にまとめた。

 研究授業を行った先月18日、大阪府北部で震度6弱の地震が起きた。授業の冒頭、ネットで新聞社や放送局の情報に触れ、災害が今、現実に起きていることを生徒と共有。教科書にもある土木技術者の倫理「技術で実現できる範囲とその限界を社会と共有し、専門を超えた幅広い分野連携のもとに、公衆の生命および財産を守るために尽力する」(「社会安全と減災」から)を読み上げ、教科書と現実の災害をリンクさせた。

 また、14年8月の広島土砂災害や15年9月の関東・東北水害の記事を読み、土砂災害の発生原因なども検証。「過去にもさかのぼれる新聞は授業のパートナーとしても欠かせない」と浅野教諭。「生徒たちの考えを発信する場としても新聞学習はいい成果を生む」という。

 授業では防災の課題についても考えた。「砂防ダムや擁壁、避難場所の整備や老朽化対策が必要」「ハザードマップの周知徹底や見直し、作成に住民が参加し防災意識を向上させるソフト面の強化も重要」とした。大半が土木技術者を目指す生徒たちは「建物を造って終わりではなく、その後も安心して暮らせる物にしなければ」「災害を無くすのは難しいが2次被害を減らすことはできる」「誰もが災害情報を得られる手段を考えなければ」など、幅広く能動的な意見を発表した。

 同科3年の広報委員会は「工学科ニュース」として学習や活動を校内に掲示、ホームページでも紹介している。また、新聞の表現方法(見出し、記事、写真、イラストなど)にも興味を持った生徒らは情報発信班を立ち上げ、「建工新聞」を発行することも決めた。学習や活動報告、災害時に役立つ情報も掲載していく予定だ。生徒らは情報の受け取り方も重視する。浅野教諭は「技術者は人と人、情報のまとめ役を求められる。専門分野とともに社会人としての一般教養も身に付けてほしい」と、さらに新聞活用の授業に取り組んでいく考えだ。