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創作狂言で環境保全訴え 薩摩義士、千本松原の歴史学び熱演
海津市の大江小

2019年06月03日 09:13

  • 今年の春季例大祭で創作狂言「失せうろこ」を上演する児童=海津市海津町油島、治水神社
  • 例大祭でかつぐみこしを製作する児童=海津市海津町古中島、大江小学校

◆せりふ上手に、音色きれい

 海津市海津町油島の治水神社で4月に開かれた春季例大祭で、今年も地元の大江小学校(同市海津町古中島)の児童が創作狂言「失せうろこ」を熱演し、参拝者らを魅了した。薩摩義士の宝暦治水と千本松原の歴史を学び、木曽三川の環境保全を訴える狂言の上演は今年で10年を迎えた。現在の全校児童数は57人。年々、児童数が減る小さな学校で古里の歴史を学び、自然を大切にする心を受け継ぐ伝統が培われている。 

 同校では3年生が「農業」、4年生が「治水」、5年生は「福祉」、6年生は「歴史・文化」と、それぞれ総合学習で古里のことを学んでいる。その中で児童は、宝暦治水工事に尽力した薩摩義士の歴史を、地域住民が上演する紙芝居や、薩摩義士踊りを習って学習。以前は千本松原への松の植樹も行ってきた。毎年、全校児童が参加する例大祭では、地域のボランティアとともに作ったみこしを担いで薩摩義士の遺徳をしのんでいる。

 児童の狂言「失せうろこ」が初上演されたのは2010年4月。当時、児童数が減り、鼓笛隊なども組めなくなり、「新たに児童たちが学習成果として表現できるものを」と考えていた学校側が、木曽三川をテーマにした市民劇を手掛けた愛知県津島市の劇作家やまかわさとみさんに依頼。やまかわさんが脚本を書き、和泉流狂言師佐藤友彦さん=名古屋市=が演出、指導。能楽師の笛方、小鼓方も講師として協力した。道具や衣装は児童の家族や地域住民が手作りするなどして6年生が上演し、引き継がれてきた。

 毎年12月に6年生から5年生への引き継ぎが行われ、児童は翌年の上演に向けてけいこに励む。狂言独特のせりふ回しと所作、笛や鼓の鳴らし方やタイミングなど、佐藤さんとやまかわさんの指導に加え、児童同士でアドバイスしながら、繰り返し練習する。

 今年の例大祭では、11人の6年生がけいこの成果を披露した。木曽三川の千本松原で、失ったうろこを捜す龍の子が、川の汚れを悲しむ松の精や魚たちと出会い、川を大切にする心を持つという物語を見事に演じ、喝采を浴びた。松の精を演じた春井ほのかさんは「声の出し方など丁寧に教えてもらい上手にできた。最高の舞台となり、やってよかった」。笛の小粥朱莉さんは「きれいな音色を響かせることができたけど、課題もあり、さらに練習したい」と熱意をみせた。

 同校の伝統となった狂言は、例大祭のほかに市の市民文化祭、中津川市加子母の明治座の舞台などでも披露している。古橋徳昭校長は「川とともに生きる海津だからこそ生まれた狂言。薩摩義士への感謝の気持ちを忘れず、自然や文化を守る心を子どもたちが伝えていってほしい」と話す。