NIE いま 学校で
対話による学び、授業が変わる
柘植良雄 岐阜聖徳学園大教授

2020年04月06日 09:08

柘植ゼミの卒業論文発表会=岐阜市柳津町高桑西、岐阜聖徳学園大

柘植ゼミの卒業論文発表会=岐阜市柳津町高桑西、岐阜聖徳学園大

 新学習指導要領が4月、小学校で全面実施となった。中学校、高校と続く。「主体的・対話的で深い学び」により資質・能力の育成を目指すこれからの教育について、識者や専門家に、新しい教科や取り組みを切り口に寄稿してもらう。

 昨年度末のゼミの卒論発表会で、「学校の授業が変わった!」と発表した学生がいます。彼女はこの4月から静岡県の教員になりましたが、卒業研究で今年3月までの新学習指導要領移行期間(小学校)の2年間に、県内で実施された公開授業と、新学習指導要領告示前のものとを学習指導案で比較しました。そして、いわゆる「アクティブ・ラーニング」が、45分間の授業のどの授業過程で実施されているかを調査・分析したのです。
 その結果、例えば社会科の授業では、単位時間の学習の中で資質・能力の育成に向けての指導方法の改善として、「対話による学びの深まりを意図した授業過程」の占める割合が21ポイント増加したと述べています。学生は入学してから毎年県内外の学校で、ふれあい体験、実践観察、教育実習、インターンシップと4年にわたって学校現場の先生方のご指導を受けています。「学校の授業が変わった!」と言ったのは、卒業研究による学習指導案の分析だけではなく、4年間の自らの体験を通して感じ取ったものだと思われます。
 学習指導案は「つかむ―やってみる-まとめる」のように、45分間の授業を三つから五つの段階に分けて表記するのが一般的です。今回は、2016年度の本ゼミ生(現石川県教員)の卒論を基に、授業過程を「発意」(課題設定)、「構想」・「構築」(解決に向けての段取り・計画)、「遂行」(観察実験・調査・作業等)、「省察」(交流や次課題の設定)の五つで調査、分析しました。
 新学習指導要領告示前は、われわれはどの教科においても、「遂行」の過程が「アクティブ・ラーニング」と考える傾向が強かったことが本ゼミの卒業研究で明らかになっています。今では教員の誰もが、「遂行」以外の授業過程で主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)が求められていることは周知の通りです。
 つまり、「遂行」の過程でよく見られる「解決方法や手順等が明確な検証実験」や「用意された資料の読み取り」、解決方法がほぼ同じ「ドリル的な学習や練習問題」などは、たとえ子供同士の対話があっても新学習指導要領の意図する深い学びにはなかなかつながりにくいということです。
 いよいよ小学校では全面実施です。もうすでに、教科等間の指導内容の関わりを明らかにして単元の指導に軽重をかけたり、地域の人的・物的な教育力を活用したりして指導計画を作成した学校もあると思います。また、3月からの臨時休校の影響を考慮し、実質的な学期の初めは学年間や学校間で子供の学びを再確認することから始める学校もあるでしょう。目標論・学力論が大きく変わった新学習指導要領は、子供たちの学び方を変えることで達成できるものであり、私たちは日々の授業がこれまでとどこが違うかを意識して臨まなければならないと思います。
 例えば、「あなたは(この授業の)いつからそう考えるようになったの?」「この時間に明らかになったことは何? まだ調べたいと思うことは何?」など、子供自身が自らの学びの過程を振り返り、学びを自覚できるような「声がけ」が必要でしょう。そして、子供の評価は指導するわれわれ教師が自らの手で評価内容や方法を決め、実施することがカリキュラム・マネジメントの一つであり、結果として私たちの意識改革・働き方改革に大きくつながるものだと考えています。