NIE いま 学校で
端末を「教具」から「道具」に
松井徹 岐阜女子大准教授

2020年04月20日 08:26

タブレット型端末を使って九九学習に取り組む児童たち=山県市高富、高富小学校

タブレット型端末を使って九九学習に取り組む児童たち=山県市高富、高富小学校

 国のGIGAスクール構想により、岐阜県内の小中学校に1人1台のタブレット型端末が、2023年度までに整備される。これにより、新学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」が現実のものとなる。

 一番大きな変化は、これまで、ICT(情報通信技術)機器を「教具」として活用していたものが、児童・生徒の「道具」としての活用になっていくというもの。

 全国でも先進的に1人1台のタブレットを導入し、成果を挙げている熊本市では、児童・生徒のアウトプット(発信)を大切にした授業を工夫。新学習指導要領が育成を目指す資質・能力の一つの柱、「思考力・判断力・表現力等」を授業の中で具現化している。

 4学年国語では、「ごんぎつね」の朗読にBGMをつけたビデオ作成が課題になった。学習した「兵十」や「ごん」の気持ちをもう一度、確認しあって、その気持ちに応じた朗読の工夫やBGMを作成し、ビデオ化。これまで朗読の宿題をあまりやってこなかった朗読役の子は家で10回以上、練習したという。学習後の定期テストにより、学級全体の学力向上の根拠も示されている。

 県内でも、先進的に1人1台のタブレットを導入した大野郡白川村の村立白川郷学園(義務教育学校)では、熊本市と同じようにアウトプット重視の学習が始まっている。

 学園の9年生が、お菓子メーカーとコラボレーションして開発・販売している村産米粉製の巻きせんべい「ゆいのわ」のプロモーションビデオ(販売促進用の動画)を作成中だ。この取り組みに先駆け、東京芸術大学の教員などから「デザイン」の基本やビデオ作成ソフトの使い方を習得。作成されたビデオは、もうすぐ土産物店などで見られるという。

 もう一つの大きな変化は、「個別最適化学習」。最近よく聞かれるAI(人工知能)ドリルが代表例となる。

 岐阜女子大学では、認知心理学の知見を生かし、「想起練習効果」を取り入れた九九学習教材を開発した。ビデオで示される「九九カード」より先に答えを言うという単純な作りだが、「想起の場」を与え、児童一人一人のペースや選択で学習を進めていくところが特徴。事前・事後の調査から九九習得の顕著な成果が現れた。学習を終えた児童からは、「プリントだと時間が余ってしまうけれど、タブレットだと自分のペースでできるので面白かった」という感想。AIは使っていないが、個別最適化学習の成果が示された。

 最後に、児童・生徒の意見が可視化され、共有が容易になることも大きな変化となる。2学年算数で直角を探そうという学習場面がある。2人一組となり、ロッカーに貼られた名前シールに三角定規を当て、写真撮影。他の組は、窓枠に定規を当て撮影。それらを先生に送信する。電子黒板には、児童が集めた身の回りの直角が多数、映し出され、意見が共有される。

 こうした授業場面が、県内のどの小中学校でも現実となり、主体的・対話的で深い学びが実現されていく。