NIE いま 学校で
自分と他者と深くかかわる 道徳の「特別の教科」化
河合宣昌 元全国小学校道徳教育研究会副会長

2020年06月22日 11:46

 道徳が、前倒しで「特別の教科」になって小学校は3年目、中学校は2年目となる。これまでの道徳の授業を振り返ると、教材の読み取りになったり、教師と児童生徒の一問一答で進められたりすることがよくみられた。そこで、道徳科で豊かな心を育てるこれからのキーワードをあげると「自分とのかかわり」と「議論(交流)する」となる。この二つのキーワードについて、具体的に述べてみたい。

 一つ目のキーワードは、「自分とのかかわり」である。道徳が読み取りになっているという課題がある中で、自分とのかかわりをもたせる指導が必要になってくる。

 まず、教科書の教材を扱うときに、自分とのかかわりをもたせるために、登場人物に自分を投影して、つまり、登場人物になりきって考えや気持ちを語ることが大切である。また、仲間の発言を聞いて、自分はその考えについてどう思うかということでも自分とのかかわりが生まれてくる。そのために、教師は、教材提示を工夫したり、板書に場面絵を位置づけて共感しやすくしたりする。また、仲間の発言を捉えて「○○さんの意見についてどう思う?」と問いかけたりすることが手だてになる。

 また、道徳で学んだ心を日常生活や今後出合うであろうさまざまな場面や状況に生かすことができるよう教材から離れて、本時のねらいから自分はどうであったかを見つめ、これからの実践への意欲を高めることが大切になる。道徳科は心の育成であることを考えると、これからどうしていくか(学級活動)ということをねらっているのではなく、過去と今の自分を見つめることが大切であり、これが教科になっても変わらない道徳科の特質である。

 二つ目のキーワードは、「議論(交流)する」である。道徳科の議論とは、討論をして一つのことを導き出すことではなく、多様な考え方や感じ方を交流する中で、最初の自分の考えがどのように変わったかを確かにすること、つまり、交流することで自分の考えを深めていかなければならない。

 道徳の授業の中で、教師と児童生徒の一問一答ではなく、児童生徒同士が仲間の考えを聞いて、自分はその考えをどう思うかということが大切になる。そのために、教師は、児童生徒の異なる考え方や感じ方を板書で整理して、自分はどちらの気持ちが強いかを問いかけたり、ある児童生徒の発言を取り上げて、この意見についてどう思うかと問いかけたりしていくことが必要になる。決して、授業でねらっている価値を押し付けるのではなく、児童生徒が仲間と交流する中で、価値の大切さに気付く指導が求められる。

 道徳科の二つのキーワードについて、詳細は拙著『知りたいことがきっとわかる道徳教育Q&A』(日本文教出版)を参考にしていただければ幸いです。

 かわい・のりまさ 1956年名古屋市生まれ。岐阜大卒。岐阜市内の小学校長などを経て現在岐阜聖徳学園大非常勤講師。県小学校長会長、県小中学校教育研究会道徳部会長などを歴任し現在同部会顧問。「『私たちの道徳』活用のための指導資料」(文部科学省)など執筆多数。