海外遠征にも意欲的な水野翔騎手

 笠松競馬の飛んでる男・水野翔騎手(22)=笹野博司厩舎=がアラブ首長国連邦・ドバイに初遠征。「愛馬」と再会できた喜びを爆発させて、好スタートから先頭を奪って駆け抜けた。

 昨夏のマカオ遠征で重賞Vをプレゼントしてくれたファスバ(マカオ、せん馬6歳)に騎乗。2月20日、ドバイ・メイダン競馬場での6R(ダート、1400メートル)、最後の直線では力尽きたが5着に踏ん張った。

 所属厩舎の笹野博司調教師は、水野騎手のドバイ参戦について「なかなか行けないからね。笠松を1開催休みますが、いい経験をして頑張ってきてほしい。1週間で帰ってきますから」と気持ち良く送り出した。レース当日には「頑張れ。世界の水野翔になりなさい」とエールを送っていた。笠松競馬の開催中だったが、若手の成長を温かく見守る親心がよく伝わった。

 現地3RのUAEオークス(GⅢ、ダート1900メートル)には、JRAの武豊騎手も参戦。1月の中山・呉竹賞(3歳、1勝クラス)を制したセラン(牝3歳、松永幹夫厩舎)に騎乗。勝ち馬には大きく離されたが、3着に食い込んだ。

水野騎手と愛馬のファスバ。ドバイでのレースに挑み、5着だった(水野騎手提供)

 ファスバには、国際レース経験豊富な「世界の武豊」に騎乗依頼があってもよかったのだが、マカオの調教師M C Tamさんから「ぜひ水野騎手に」とラブコール。重賞を含めて2勝を挙げた「かける&ファスバ」の最強コンビ再結成が実現した。

 水野騎手は、昨夏には3カ月間の短期免許でマカオのタイパ競馬場へ遠征。6月29日、ファスバに騎乗し、重賞レース(G2・サマートロフィー)でマカオ初勝利を飾り、ファンや関係者を驚かせた。ダートコースで積極的なレース運びを見せて、2着に2馬身近い差をつけて逃げ切り。国内でもなかった重賞初Vを海外競馬で達成。調教師らの信頼を得て、ドバイでの騎乗につながった。

 ファスバはここ2走が9着、7着だったが、水野騎手とのコンビで重賞Vの再現を狙った。実績馬が多かったが、持ち味を発揮できる先行策で勝負し、見せ場たっぷり。人馬ともに力を出し切って、日本のファンを十分に納得させるレース内容だった。

 水野騎手は自身のツイッターでドバイ遠征を報告。

 「結果としては5着でしたが、世界最高峰の競馬場で一流の騎手たちと乗れて、とてもいい経験でした。武豊騎手や平松さとしさん(フリーライター)と一緒にご飯も食べさせてもらい、夢のような6日間でした。これからも頑張っていくので応援よろしくお願いします」と充実感あふれるコメント。

笠松移籍3年目で、飛躍が期待されている水野騎手

 応援しているファンから「一流騎手の仲間入りかな。でも身近な存在でいてね」「武豊さんとお酒を飲めるなんてすごい。昔の水野騎手のイメージはチャラかったのに。雲の上のような存在になっていく」といった声には、「そんなことないです。今もチャラいです。僕なんてまだまだです。ドバイ遠征を許してくれた先生(笹野調教師)と、乗せてくれたトレーナーと、ファスバには感謝しかないです。僕の腕がもっとうまければ、ファスバはさらに上の着順を目指せました。(一緒に食事はしましたが)肩を並べるほど、僕はすごくないです。武豊さんからは、いろいろな話も聞けました」と貴重な体験に満足そう。

 笹野調教師は「果敢に逃げて5着でした。スタートを決めて、悔いのないレースはできたのではないでしょうか」と、水野騎手のチャレンジをたたえていた。

 メイダンといえば、3月にはドバイワールドカップが行われ、日本のファンにもおなじみの世界的競馬場。水野騎手のワールドワイドな挑戦と活躍は、今後もファンの夢も広げてくれそうだ。4月からは南関東での期間限定騎乗にも意欲。笠松発で全国へ、世界へと羽ばたくとともに、ホームでも元気な姿を見せて、派手なルックスとパフォーマンスでファンを楽しませてほしい。

ニュータウンガールでスプリングカップを制覇した佐藤友則騎手(名古屋競馬提供)

 名古屋競馬場では、佐藤友則騎手騎乗のニュータウンガール(牝3歳、井上孝彦厩舎)が躍動した。2月24日の3歳重賞スプリングカップ(SPⅠ、1800メートル)で1番人気。好位から2周目4コーナーでは、先行馬を一まくり。2着のジェネラルエリア(牝3歳、川西毅厩舎)に1馬身半差をつけて完勝した。

 ライデンリーダー記念、名古屋・梅桜賞に続いて重賞3連勝。「東海ダービーまで負けられない」との陣営の意気込み通り、今年最大の目標に向かって視界良好となる走りだった。

 名古屋重賞V2で佐藤騎手は「思ったより反応が良くて、びっくりした。どこからでも競馬ができる馬で、前を行く加藤聡一騎手の馬(ジェネラルエリア)をかわせばと、自信を持って乗った。でも先頭に立つのが早過ぎて、1頭になると直線で遊んじゃって...。井上厩舎に入厩以来、この馬で東海ダービー制覇を意識してきた。どっしりと構えて乗っていきたい」と前を見据えていた。

 この前日、佐藤騎手は東京競馬場で騎乗し、JRA通算10勝目を飾っていた。笠松からの出張馬ナーリー(井上厩舎)は、1勝クラスのレースで8着に終わったが、JRA馬の能力を引き出してみせた。ダート3歳戦で5番人気のブレイクザボーダー(畠山吉宏厩舎)に騎乗。前走の新馬戦は芝で切れ負けし4着だったが、ダート向きのスピードを発揮。1馬身半差で逃げ切りVを決めてくれた。「早めに動いていった。仕上げも良くて、能力で勝ったような感じ」と佐藤騎手。新馬戦からJRA馬の騎乗依頼を受け続け、2戦目で勝っちゃうところが素晴らしい。全国のどこかで、きょうも乗ってる重賞ハンターは今年も健在で、その動向に注目していきたい。

4日からは無観客レースが実施される笠松競馬場

 岐阜県地方競馬組合は2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、3月4~6日の笠松競馬場で行う弥生シリーズ(前半)のレースを無観客で実施すると発表。馬券の発売は、電話とインターネットのみになる。名古屋競馬は10~13日も無観客レース。12日のレディスヴィクトリーラウンドは、名古屋が最終ラウンドで「女王」が決まり、大勢のファン来場が期待できただけに、無観客は残念だ。地元の木之前葵、宮下瞳両騎手をはじめ、笠松での期間限定騎乗で活躍した関本玲花騎手も出場予定で、盛り上がっただろうに...。

 無観客といっても、笠松競馬場といえば、のどかな立地条件で、名鉄電車内や木曽川堤防沿いなどからもレースを眺めることはできる。家に居るよりは外に出て、「健康のためにも」と競馬場に通い続けてきたのは、オールドファンの笠松競馬おじさんたち。日頃は馬券をインターネットで買わない人も多いから、無観客で競馬場に行けなくて戸惑うことだろう。パドック映像やファンファーレ、実況放送など、テレビやインターネット向けのライブ中継は通常通り。ただ、ジョッキーたちは無観客は初めての経験で、らち沿いやスタンドにファンの姿がなく、やじや声援を受けないと張り合いがないし、寂しいことだろう。ファンはライブ中継で応援するしかない。