笠松競馬場でデビュー。レースを終えた関本玲花騎手

 「先輩たち、すごく優しくて、騎乗についていろいろと教えてもらっています」と爽やかスマイル。岩手競馬の関本玲花騎手が20日、期間限定騎乗(1カ月余り)で笠松競馬場デビュー。湯前良人厩舎に所属し、先輩騎手の背中を追って、ゴール目指して奮闘。2日目には積極的な騎乗で2着、3着もあった。勝利には届かなかったが、笠松初Vへ闘志を燃やしている。

 関本騎手は岩手県奥州市出身の19歳。元騎手で現調教師の父・関本浩司さんの厩舎(水沢)に所属。幼い頃から競走馬の姿を身近で見て育ち、ジョッキーになる夢を実現した。笠松では昨冬、騎手候補生として調教実習に励み、10月に盛岡競馬場でデビューし、2勝、2着2回。岩手競馬が冬季休業入りしたため、「お世話になった笠松で、今度は騎手として騎乗したい」との願いをかなえ、2月21日まで笠松競馬のレースに参戦する。

 笠松デビューを振り返って。「小回りコースで、水沢(同じ右回り)とも似てますね。でもまだよく分らないです」と緊張した様子だったが、馬群のインからも無我夢中で騎乗馬を追っていた。初日は4着が2回。3Rでは「3~4コーナーでムチを落としちゃいました。ムチがあったら、もうちょっと伸びていたかなあ」と、7番人気での4着にも残念そうだった。

パドックでもファンの注目を浴びた関本騎手

 1年前の笠松実習については「学校(地方競馬教養センター)の先生に勧められた。雪の岩手では、攻め馬自体が2月末までなくて、笠松に来て湯前厩舎でお世話になりました」。岩手デビュー後は、競走馬の禁止薬物問題で、3週間近いレース自粛。11月の笠松グランプリには、過去3連覇を飾ったラブバレット(山本聡哉騎手)が参戦できない事態にもなった。「休みが長く、毎日攻め馬をやってました。岩手は寒く、雪の中でのレースにも乗りました」と関本騎手。
 
 新年を迎え、笠松競馬にチャレンジ。騎乗馬とゲートインしてスタートを切れば、ゴールまで命懸けの真剣勝負。騎乗馬の脚質に合ったコースの位置取りなど、笠松でも学ぶことがいっぱいだ。初日は計5レースに乗ったが、「自分が下手くそ過ぎて...。先輩たちに早く追い付けるようになりたい」と、悔しさとともに前を向いていた。
 
 笠松、岩手ゆかりの競走馬といえば、盛岡デビューのトウホクビジン。笠松に移籍後は「鉄の女」とも呼ばれ、地方競馬全場で重賞計130レースに出走する日本最多記録をマーク。震災後の盛岡では重賞「シアンモア記念」(佐藤友則騎手)を勝った。昨夏、盛岡での「ジャパンジョッキーズカップ」で個人総合Vも飾り、「相性が良くて岩手大好き」という佐藤騎手。笠松、岩手競馬の太い絆を感じてか、明るい「チーム笠松」のムードメーカーとしても、関本騎手を温かく見守っている。

歓迎セレモニーで吉井友彦騎手会長(右)、水野翔騎手とポーズを決める関本騎手

 スタンドには「みちのくに咲く花 関本玲花騎手」を描いた応援の幕も掲げられ、パドックでファンの熱い視線を浴びた。歓迎セレモニーでは「少しでも技術を磨いて1勝でも多く勝てるように頑張り、成長していきたい」と意欲。ファンに花束をプレゼントしたり、サインや記念撮影で交流。吉井友彦騎手会長は「自分も岩手デビュー(2001年)。関本騎手のお父さんとは同じレースで騎乗したこともあり、思い入れがあります。水沢コースも河川敷近くにあって、笠松と似ていた。ぜひ頑張ってほしいですね」と。関本騎手と同じ勝負服で、セレモニーのプラカードを持った水野翔騎手も「ちょっとでもうまくなって(岩手に)帰ってほしい」とエールを送っていた。

 関本騎手は、地方競馬に所属する女性ジョッキーが腕を競う「レディスヴィクトリーラウンド」(1~3月)にも参戦。11日に開かれた「ばんえいエキシビションレース」では、現地の騎手と一緒に挑戦。「練習は楽しかったが、実際にそりに乗ってみたら、思ったよりスピードがあり、怖かったです」と振り返っていたが、新人騎手として貴重な体験ができた。

 今開催の笠松では14戦して1着ゴールはなかったが、自厩舎のサクラエでは4番人気で2着と好走した。2番手からの競馬で、一瞬「勝てるんじゃないか」という、見せ場十分のレース。「最後の直線では伸びなかったし、勝った馬の脚が上でした。でも同厩舎だったんで...」と悔しい2馬身差だった。1番人気の勝ち馬に騎乗していれば、「笠松初V」だったかも。

 次回開催では初勝利をゲットしたいが、新人騎手では有力馬への騎乗はまだ少ない。馬主さんや厩舎サイドのサポートで、1番人気になる「勝てる馬」に乗せてもらえるかどうかもポイント。2月3日からの開催に向けて、調教段階からじっくりと乗り込んで、騎乗馬の癖をつかみ、勝利へとつなげたい。笠松ではやはり、第1コーナーで先頭に立って、逃げ切る競馬が勝利への近道になりそうだ。

デビュー2年目の東川慎騎手。大みそかにはファンへの餅まきも行った

 ヤングジョッキーの姿が目立つようになった笠松競馬。デビュー2年目の東川慎騎手(後藤正義厩舎)は24日で19歳になった。昨年4月、デビュー日のメインレース「淡墨桜特別」では、バレンティーノ(尾島徹厩舎)で初勝利を飾った。7月に落馬骨折で休養。1年目は笠松で5勝(名古屋で1勝)に終わった。笠松、名古屋でのヤングジョッキーシリーズにも参戦できず、悔しい思いを味わった。11月に復帰後は元気な姿を見せ、大みそかには吉井騎手会長の年末あいさつの後、ファンへの餅まきも初体験し、楽しそうだった。

 2年目は心身を鍛えて飛躍の年にしたい。「今年は期間限定で道営(ホッカイドウ競馬)に行ってみたいです。2歳馬の調教に興味があり、一から馬を仕上げてみたい」と、新天地で武者修行にも意欲を見せている。実現すれば、道営には同期に昨年46勝を挙げた小野楓馬騎手もいて、刺激を受けそうだ。調教師の先生や父親の公則騎手ともよく相談して決めることになる。道営へは、厩舎先輩の藤原幹生騎手が5年前に期間限定で23勝を挙げており、成長につなげている。
 
 笠松では父親と同じ厩舎に所属しているが、「父がいてもやりにくくはなく普通です。(笠松では)大先輩でもあり、丁寧に教えてくれます」と慎騎手。今年は、深澤杏花候補生や長江慶悟候補生も笠松デビューを目指しており、新人騎手が増えるが「負けたくないです」ときっぱり。新年2日目には、3番人気のトーセンジャスパーで勝利。「馬場が軽く、逃げてスーッと行って、追うタイミングも良かったです。自厩舎の馬では初勝利でうれしかったです」とにっこり。20日には2勝目を飾り、好スタートを切ったといえる。父の公則騎手が調教師への転身も考えており、厩舎の慎騎手への期待は大きい。笠松には心強い先輩も多く、道営へのチャレンジは、笠松で勝ち星を積み重ねて、もう少し成長してからでも遅くはないだろう。

今年はともに「笠松リーディングを目指します」という水野騎手と渡辺竜也騎手(左)

 道営といえば、笠松移籍の水野騎手がかつて所属していた。昨夏はマカオで重賞Vを飾り、年末には地方競馬通算200勝も達成。今年の目標は「リーディングを目指します」と力強いひと言。それでも「疾風迅雷でいくんで」と、可能なら南関東(船橋)での期間限定騎乗にも意欲。4月から2カ月間の予定で申請を出したそうだが、実現するかどうか。笠松競馬は7、8月に馬場改修のため1カ月半ほどレース開催がないため、各騎手の他場遠征の動向も注目される。所属馬の毎日の調教は、誰かがこなさなければならず、期間限定でごっそりと「流出」することはないと思うが...。水野騎手には笠松や名古屋での有力な騎乗馬を増やし、地元重賞初Vも達成してもらいたい。

 4年連続リ-ディング・笹野博司厩舎ツートップのもう一人、渡辺竜也騎手も「リーディングは取りたいです。(地元で)こつこつと大切に乗っていきたい。結果がついてくるんで。1日1勝で、100勝以上したいです」と頼もしい言葉。各地方競馬場での勝利数上位(3月までの1年間)の騎手が腕を競う「ジョッキーズチャンピオンシップ」への出場にも意欲。昨年2位だったリーディング争い。今年は一気にトップの座を狙いたい。