笠松競馬の未来を担う若手騎手、騎手候補生たち

 「渡辺竜也、水野翔騎手の活躍に続け」と、笠松競馬でデビューを目指すヤングジョッキーたち。半年間の競馬場実習を終えたのは「笠松のフカキョン」とも呼ばれている深澤杏花騎手候補生。1月7日から新たに加わったのが長江慶悟騎手候補生。地方競馬教養センター(栃木県)の第99期生と第100期生で、2人が騎乗技術を磨いて地方競馬騎手免許を取得できれば、今年4月と10月、笠松競馬に新人騎手が誕生することになる。

 調教師への転身などで、笠松所属騎手は一時13人にまで激減し、乗り役さん不足が深刻だった。渡辺騎手と東川慎騎手がデビュー、移籍で水野騎手と松本剛志騎手が加入し、計17人にまで回復した。それでも1990年代には36人ほどの騎手がいたから、当時に比べればまだ半数以下。このため、若手育成に理解がある厩舎では、騎手候補生や新人騎手の受け入れを進めており、期間限定での騎乗も歓迎。昨年1、2月に笠松で騎手候補生として実習に励み、10月に岩手競馬でデビューした関本玲花騎手(水沢)は、2月21日までの期間限定で笠松競馬のレースに騎乗する。

笠松コースで調教に励んだ深澤杏花騎手候補生

 笠松実習でよく頑張った深澤候補生は、兵庫県出身の18歳。昨年7月から、競馬場内で競走馬の調教や厩舎実習に励み、先輩ジョッキーのアドバイスを受けながら騎乗技術を向上させてきた。10日の新春シリーズまでで無事「合格」となり、教養センターに戻った。今後、3月末までの修了試験をクリアすれば、騎手免許を取得できる。湯前良人厩舎に所属し、4月に晴れてデビュー戦を迎えれば、笠松所属では中島広美さん(1992~2000年在籍)以来20年ぶりの女性ジョッキーとなる。

 半年間の実習については「短かったと感じました。(騎乗方法など)先輩騎手にいろいろと聞きましたが、しっかりと答えてもらえたし、すごく優しくて冗談も言ってくれて楽しかったです。馬乗りではうまくいかないことも多かったです。でも少しずつ乗れるようになって、自信がつきました。デビューしたら、もっと力のある馬に乗れるようになりたいです」と振り返った。

 所属する湯前厩舎には、ムスターファ(牡3歳)などの有力馬がいる。門別でデビュー戦を勝ち、笠松移籍後は2歳特別(名古屋)など3勝を挙げている厩舎の期待馬。「4月にデビューしたら乗せてもらえそうで、(自厩舎の馬で)初勝利できるといいです」と夢を膨らませる。教養センターの第98期生だった関本騎手から「笠松はいい所だよ」と教えてもらい、所属先に選んだという深澤候補生。今回、笠松で会うことはできなかったが、デビュー後は「レディスヴィクトリーラウンド(LVR)」などで腕を競うことになりそうだ。

 地方競馬の女性ジョッキーは関本騎手をはじめ、宮下瞳、木之前葵(愛知)、濱尚美(高知)、岩永千明(佐賀)、中島良美(浦和)、竹ケ原茉耶(ばんえい)の各騎手で計7人。JRA・藤田菜七子騎手の活躍もあって、この1年で3人増えた。今年のLVRは11日に開かれた「ばんえいエキシビションレース」で宮下騎手が優勝し、関本騎手は5位だった。例年、女性ジョッキーが所属する競馬場3カ所でレースが行われており、深澤候補生は「いろいろな競馬場で乗りたいです。笠松でも開催されれば盛り上がりますね。すごく楽しみです」と早くも闘志。

笠松での4月デビューが楽しみな深澤騎手候補生と、実習に励み10月デビューを目指す長江慶悟騎手候補生

 デビュー後の笠松での目標は「1年目は30勝したいですね。直線の追い込みで、ステッキの持ち替えもバンバンできて、きれいに追えるようになりたいです」。先行馬有利な笠松コースだが「逃げ切りより、ためてためて最後の直線で差し切る競馬が、かっこいいと思います」と力強い言葉。「ムスターファにはまだ乗ったことはないのですが、(調教では)佐藤友則騎手が乗っていて、『口向きが悪くて矯正中で、仕上げてあげるよ』と言われました」。教養センターでの修了試験を合格できれば、ジョッキーとして笠松に戻ってこられる。早朝の調教では20頭ほどに乗っていたが、「笠松のレースに早く出て、まずは初勝利を目指したいです」と満面の笑みで意欲を示していた。

 笠松では長江候補生の実習もスタート(7月9日まで半年間)。愛知県春日井市出身の20歳で、後藤佑耶厩舎が受け入れた。東海地区の競馬場での騎乗を希望。「最初は名古屋競馬が第1希望でしたが、教養センターの教官さんと相談。性格なども考えてくれて、笠松競馬の方が騎手が少なくて、たくさん乗れるということで、希望を笠松に変更。後藤佑耶先生に手を挙げていただきました」と話し、厩舎でお世話になっている。

 「小中学校の頃は、スポ少や部活動で野球をやっていて、二塁や外野を守っていた。教養センターへは深澤候補生の半年後に入り、木馬でのトレーニングやサッカーなども一緒にやりました」という。9日午前2時から笠松での調教がスタート。「初日は3頭に乗りました。緊張したがすごく楽しかったです。厩務員さんには『今度、これに乗ってね』などと言われて」と声を弾ませた。実習生として「たくさんの馬に乗って、一頭の馬から多くのことを吸収して、自分の技術を高められるよう頑張ります」と力を込めていた。調教師の先生や先輩騎手から騎乗技術を学び、10月には笠松デビューの日を迎えることになる。

期間限定騎乗の関本玲花騎手は、20日に笠松デビュー。1着ゴールへ闘志を燃やしている(笠松競馬提供)

 笠松での期間限定騎乗に挑む関本騎手は、岩手県出身の19歳。父である関本浩司厩舎に所属。笠松実習を経て「今度は騎手として笠松で騎乗したいです」との希望通り、11カ月ぶりに戻ってきた。岩手競馬では競走馬の禁止薬物問題で開催自粛があり、騎乗は少なかったが、デビュー3日目に1番人気のスカイルークで5馬身差の逃げ切りV。同馬で2勝目も飾った。笠松実習では、レースを終えた騎手たちの馬具の手入れなども頑張っていた。憧れの存在でもある木之前騎手からもアドバイスを受け、笠松がより好きになったようだ。木之前騎手は、昨年67勝のうち9勝は笠松での勝利。地方競馬全国協会のNARグランプリ2019では、優秀女性騎手賞にも選ばれた。

 岩手競馬は冬季休業入りしており、1カ月余り笠松に所属する関本騎手。女性ジョッキーとしては、深澤候補生より2カ月余り早く笠松デビューを果たす。20~24日の睦月シリーズから参戦。20日には第2レースから計5レースに騎乗予定で、6レース終了後には場内で歓迎セレモニーも開かれる。騎乗は笠松での3開催(各5日間)と短期間だが、負担重量4キロ減で挑める有利さを生かして、逃げ馬などで思い切ったレースをして笠松初Vを飾りたい。

京都・エリザベス女王杯にミスマンマミーアを参戦させた寺島良調教師(中央)。新年は調教師リーディング上位で、好スタートを切った

 年明けの中央競馬では、調教師リーディングに驚かされた。開業5年目の寺島良調教師が6勝でトップ。5冠馬アーモンドアイを管理する国枝栄調教師が4勝で2位。東西には180人以上の調教師がいるが、何と、まさかのワンツーではないか。2人は、本巣郡北方町出身で小中学校も同じ。人口1万8000人余りの小さな町から生まれた「ミラクル」。寺島調教師の実家である書店とは近所でもあり、県勢としてこれまで注目してきたが、今年の躍進ぶりは本当にすごい。前開催の3日間で5勝を飾ったが、14、7、5、4、4番人気の馬での1着。調教から仕上がり良好で、人気のない馬を勝利に導き、大波乱も呼んだ。特に13日は3戦3勝と絶好調。今年はまだ始まったばかりだが、この調子を少しでも長く続けてもらいたい。

 昨秋のエリザベス女王杯(京都)では、寺島調教師がミスマンマミーア(馬主・吉田勝利さん)、国枝調教師がフロンテアクイーンで参戦。結果は残念だったが、レース前には2人並んで仲良さそうに談笑される姿もあった。寺島調教師は北海道大学で馬術部主将を務めた。国枝調教師は東京農工大学・獣医学科卒。ともに研究熱心で競走馬への情熱を注ぎ続ける2人。ダービー調教師の夢を追い続け、GⅠレースでいつかマッチレースを繰り広げてほしい。