大勢のファンでにぎわった昨年の東海ゴールドCデー。勢ぞろいした笠松競馬のジョッキーが年末のあいさつや餅まきを行った

 有馬記念が終わっても、年末年始は重賞レースがギュッと詰まった地方競馬が熱くなる。笠松競馬の年末特別シリーズは27日、29~31日の4日間開催。1年で最もにぎわい、30日にライデンリーダー記念、大みそかには年越しへの運試しにもなる東海ゴールドCが行われる。

 年末の大一番・東海ゴールドCには、岐阜金賞Vのニューホープ(牡3歳、田口輝彦厩舎)など10頭が出走する。昨年の水沢・ダービーグランプリを勝ち、地方競馬3歳チャンピオンになったチャイヤプーン(牡4歳)が、船橋から笠松の花本正三厩舎に移籍。東海ゴールドCの選定馬として参戦予定だったが、ストーミーワンダー(牡5歳、笹野博司厩舎)とともに残念ながら出走を回避した。両馬の対決は年明け以降になりそうだ。

 28日にはJRAの2歳GⅠ・ホープフルSや、地方・中央交流のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)ファイナルが行われ、笠松にも余波が...。以前は年末年始の4~5日間連続開催が当たり前だったが、一昨年から中1日休みの変則日程となった。これは「大入りになる年末年始を、地方競馬だけに任せておけない」と、JRA側の思惑が絡んでのこと。地方競馬にとっては収益面で痛いが、日本競馬の発展のためにも、地方・中央が手を取り合って、より質の高いレースをファンに楽しんでもらい、馬券販売アップにつなげてもらいたい。

令和初の有馬記念は、ゴールまで残り200メートルを過ぎて抜け出したリスグラシュー(中央)が制覇。アーモンドアイ(左)は馬群に沈み、9着に終わった=中山競馬場

 2番人気のリスグラシューが5馬身差で圧勝した令和初の有馬記念。平成元年と同じく雨の中山となった。本命馬がいくら人気を集めても競馬に絶対はなく、嫌な予感もあった。オグリキャップは単勝1.8倍の1番人気で5着に敗れたが、アーモンドアイは1.5倍で9着完敗。2500メートル戦で、コーナーを6度回り、初体験のコースでまさかの失速となった。「最初のスタンド前、外を回って、ファンの歓声でスイッチが入ってしまった。リラックスして走れずに、最後は疲れていた」とルメール騎手。国枝栄調教師も「ガス欠でした。ぼうぜん自失ですよ」とがっくりだったが、レース後の脚元には問題なく一安心。

 有馬記念では、安藤勝己さんもダイワスカーレットの引退レースで勝っている。騎手時代には「馬に負担をかけないで、いかに楽をさせて、いいコースを通らせるか。最後の直線で脚を残しているかってことが大事」と語っていた。アーモンドアイは東京競馬場のような高速馬場を得意としているが、中山のような消耗戦になるタフな競馬を経験しておらず、ラストの切れ味勝負で余力が残っていなかった。脚をためてリズム良く走ることができず、名手ルメール騎手でもお手上げ状態。最後の200メートルで馬群に沈んでしまった。まずは放牧でリフレッシュ。今後については未定ということだが、ただ強いだけでは、劇的なドラマは生まれない。負けることで、オグリキャップのように復活Vへの新たなストーリーが始まるもの。このまま現役を続けて、ジャパンカップや天皇賞・秋でファンを魅了した圧巻の走りをまた見せてほしい。

昨年の東海ゴールドCは、花本正三厩舎のダイヤモンドダンス(筒井勇介騎手)が制覇した

 今年を締めくくるのは、笠松競馬・年の瀬名物の東海ゴールドC。昨年は、6番人気の9歳馬ダイヤモンドダンス(花本厩舎)が名古屋勢を圧倒し、4馬身差の完勝。筒井勇介騎手が騎乗し、笠松馬による6年ぶり制覇。2着にフロリダパンサー、3着にカガノカリスマと笠松勢が上位を独占。 ゴール後には「やったな、夢がかなった」と重賞初制覇の花本調教師ら関係者が歓喜に浸った。

 今回、東海ゴールドCを回避したチャイヤプーン。「出走を予定していましたが、じっくり調整しようという結論になりました。1月には出走予定です。応援に来てくださるというメッセージをたくさんいただきましたが、がっかりさせてごめんなさい」と花本調教師。

昨年、水沢で行われたダービーグランプリを制覇し、地方競馬3歳チャンピオンになったチャイヤプーン。笠松の花本正三厩舎に移籍した(NAR提供)

 チャイヤプーンは岩手、南関東で重賞6勝を飾り、新たな活躍の場を求めて笠松に転入してきた。東海地区をはじめ、園田、高知のダートグレードなど重賞戦線に狙いを定めての当地移籍か。岩手では千葉幸喜厩舎に所属し、昨年のダービーグランプリを制覇したが、2着に入ったのが、岐阜金賞Vのクリノヒビキ(兵庫)だった。チャイヤプーンは岩手ダービーダイヤモンドCでも勝利。南関東では、船橋の川島正一厩舎に所属し、昨年の戸塚記念を圧勝。今年は南関東のオープンクラスを4戦して2着1回と、やや伸び悩んでいるが、環境を変えて心機一転。新天地・笠松から、重賞戦線で実力を発揮したい。

 古くは中央からワカオライデン、フェートノーザン、ロングニュートリノといった実力馬が笠松に移籍し、重賞を勝ちまくった。南関東から笠松への移籍では、ステートジャガーという強い馬がいた。1984年の東海ゴールドCを勝っており、中央入りした85年にはサンケイ大阪杯(現GⅠ)で、ミスターシービーにハナ差勝ちする金星を挙げている。

 チャイヤプーンとストーミーワンダーの回避で、有力になったのは丸野勝虎騎手が騎乗するニューホープ。岐阜金賞で吉田勝利オーナーに地元・笠松でのうれしい重賞初Vをプレゼントした3歳若駒。10月の盛岡・ダービーグランプリでも5着に健闘。JRAの堺Sに挑戦(12着)した後、笠松に戻って地元勢との一戦に挑む。名古屋勢では10歳馬メモリージルバが笠松を得意にしており、今年も重賞2勝(ウインター争覇、マーチC)を飾っていたが、レース前日に出走を取り消した。6連勝中の3歳馬リーガルマインドは重賞初挑戦だが、勢いでは一番。笠松勢で先行力があるドリームアローやスティンライクビー、末脚勝負のバレンティーノもチャンス十分。昨年は大荒れとなったが、今年も穴馬が突っ込んでくるかも。スタンド前の外らち沿いも大勢のファンで埋まる年末の大一番。競走馬との距離が近い笠松競馬場で、1周目の先陣争いから迫力あるレースを楽しんでほしい。

ライデンリーダー記念に出走するニュータウンガール。ジュニアキングでは向山牧騎手の騎乗で完勝した

 2歳牝馬によるライデンリーダー記念には、地元期待のニュータウンガール(井上孝彦厩舎)が参戦。牡馬を相手にジュニアクラウン、ジュニアキングを制覇。ラブミーチャン記念も2着で、今回は堂々の主役。向山牧騎手の円熟の手綱さばきに応えて、1番にゴールを駆け抜けるか。

 競馬場内外で1年間いろいろあった笠松競馬だが、まずは無事に新年を迎えたい。年末特別シリーズでは、前開催休んでいた4人のジョッキーが復帰。2カ月間の南関東遠征で9勝を挙げた佐藤友則騎手は、笠松では岐阜新聞・岐阜放送杯が行われる29日から登場。この秋、50歳になった東川公則騎手は、将来の調教師への道を目指して、競馬学校で3週間、試験勉強に励んだそうだ。病気のため休んでいた東川慎騎手も復帰し、親子で元気な姿を見せている。水野翔騎手も負傷欠場から再始動。年末の笠松を盛り上げてくれている。

 来年4月の騎手デビューを目指して、7月から攻め馬などに励んで騎乗技術を磨いてきた深澤杏花騎手候補生は、笠松での実習は1月10日までの予定。半年早く10月に岩手競馬でデビューした。関本玲花騎手が、1月12日から2月21日まで笠松競馬場で期間限定騎乗。岩手では父である関本浩司厩舎に所属し、デビュー3日目に初勝利を挙げている。笠松では今年1~2月、騎手候補生として実習も行っており、湯前良人厩舎に所属する。1月20日からのシリーズ(5日間)で笠松デビュー予定で、ファンの応援が当地初勝利へ後押しになりそうだ。