笠松グランプリを制覇した高知のケイマと、喜び合う関係者

 大外12番ゲートからV奪取! 21日行われた第15回笠松グランプリ(地方全国交流、1400メートル、SPⅠ)は、高知のケイマ(牡6歳、別府真司厩舎)が永森大智騎手の好騎乗で、2番手から鮮やかに抜け出して初制覇。単勝1.8倍の1番人気に応えることができた。追撃した笠松のストーミーワンダー(牡5歳、笹野博司厩舎)はゴール手前から伸び切れずに4着に終わった。2着に名古屋のアドマイヤムテキ(牡6歳、角田輝也厩舎)、3着には笠松のウインハピネス(牡4歳、尾島徹厩舎)が食い込んだ。

笠松グランプリの発走前、名鉄ブラスバンド部による生ファンファーレの演奏が高らかに響き渡った

 この日は爽やかな秋晴れに恵まれ、レース観戦日和となった。場内には安藤勝己さんをはじめ、全国の地方競馬関係者の姿も多く見られ、笠松グランプリへの注目度の高さが感じられた。発走前には、名鉄ブラスバンド部による生ファンファーレの演奏がウイナーズサークルであり、心地良い高らかな響きでビッグレース開催を盛り上げた。今秋から笠松競馬場でもスタートしたフルゲート12頭立てでの初めての重賞レース。各地のリーディング経験者は6人が参戦し、人馬とも豪華メンバーで競った。

笠松グランプリは12頭立て。4コーナー奥をスタートし、スタンド前から1コーナーに向かう各馬。激しい先行争いが繰り広げられた

 レースは、激しい先行争いで1コーナーへと突入。先手を奪ったのは、名古屋の快速馬エイシンテキサス。大外から内に切れ込んだケイマが2番手でぴったりとマークし、3コーナーから先頭に立つと、4コーナーからゴールへ一直線。4番人気で地元期待のストーミーワンダーは、5番手からケイマを追走。内から伸びてきたが、最後は力負けし差し届かず。ケイマが2着・アドマイヤムテキに3馬身差をつけて圧勝。JRAから高知移籍後7連勝、重賞は5連勝となった。

ラスト100メートルを過ぎて、勝ったケイマ(永森騎手)を追うストーミーワンダー(渡辺竜也騎手)

 優勝騎手インタビューで、永森大智騎手は「名古屋の重賞(ゴールド争覇)に続いて、さらにメンバーがそろった中で強い競馬をしてくれた。大外12番からで不安もありましたが、思ったよりいい位置が取れた。能力を信じて、頑張ってくれた馬に感謝しています。全国区の馬になったので、また騎乗が楽しみ。一流馬が相手だとマイルぐらいまでがベストです」と。集まったファンに対しては「高知代表として来ましたが、地方競馬はみんな一緒に頑張っているので、これからも応援よろしくお願いします」と力強いメッセージを送っていた。

 別府調教師は「大外は不利と言われていたが、馬がパワーアップしていると信じていました。ジョッキーには、逃げにはこだわらず、3番手ぐらいでもいいと。夏負けも取れてきたし、まだ良くなってくる。次走は、兵庫ゴールドトロフィー(GⅢ)が選択肢に入っており、面白いパフォーマンスを見せてくれそうです」と、笠松グランプリVで、ダートグレード挑戦にも手応えを感じていた。

ストーミーワンダーに騎乗し、4着に終わったが力は出し切った。レース後の渡辺騎手(左)

 4着・ストーミーワンダーに騎乗した渡辺竜也騎手は「ねじ伏せられた感じですね。ケイマの後ろにつけられてポジションは良かったですが...」。3~4コーナーで2番手に押し上げて、ケイマとのマッチレースに持ち込もうかというレース展開になり、地元ファンも力が入った。最後は差を縮めることができず、ケイマに突き放された。「2着はあったかなあ」という問い掛けには、「ケイマを負かそうと、勝ちにいっての結果が4着になった。前走(名古屋・ゴールド争覇)でも戦った相手が強かったです。ストーミーワンダーの調子は、追い切りも良くて前走以上にいい状態で臨めましたが...」と力を出し切ったレース内容に悔いはないようだった。

 笠松の大将を管理し、やれるだけのことはやって挑んだ笹野調教師。「うまく乗って、いい競馬をしたと思います。勝ったケイマの真後ろにつけてね...。自分の競馬はできたが、相手が別格に強かったです」。1600メ-トル戦はくろゆり賞など8戦8勝と最も得意としているストーミーワンダーだが、1400メートル戦はこれまで11戦5勝と、適距離ではなかった。「やっぱり距離がもうちょっと長い方がいいかな。次は年末の東海ゴールドカップを目指したい。1900メートル戦ですが、1度使ってみたいです。立て直します」と、大みそか決戦へと前向きだった。

東川公則騎手が騎乗したウインハピネスが健闘。レースでは3着に突っ込んだ

 勝ったケイマに続く2着争いは、ゴール前では3頭が横一線となった。ストーミーワンダーを外からかわしたのがアドマイヤムテキ(2着)で、ハナ差3着に突っ込んだのが東川公則騎手が騎乗したウインハピネス。前走オータムカップで重賞初Vを飾っていたが、8番人気と低評価に反発。後方からメンバー最速の37秒0(ラスト600メートル)で追い上げて、笠松勢の意地を見せてくれた。東川公則騎手は「いい感じで追走して、最後はインから外に出せた。あの馬なりにいい競馬でができました。1400メートルでもあれだけ反応してくれて良かったです」と満足そうだった。

 今開催から復帰した息子の東川慎騎手については「競馬に体を慣らして、まずは無事にレースを終えてくれればいい。(父親として)陰から応援するだけです。体幹などを良くして、こつこつと地道にやってほしいですね」と、心身の成長に期待を込めていた。隣で馬具の手入れをしていた深澤杏花騎手候補生には「キョンキョン」と呼び掛け、「そう呼ぶのは俺だけかも」と笑いながら、来春には慎騎手の1年後輩としてデビューするとあって、「夢に向かって諦めずに、一緒に頑張っていこう」と励ましていた。

笠松競馬の実況アナウンサーらによるトークショー&予想会。笠松グランプリの架空実況などで盛り上げた

  レース前には、笠松競馬実況アナウンサーら4人(大川充夫、西田茂弘、百瀬和己、長谷川満)によるトークショー&予想会が特設ステージで開かれた。笠松グランプリの架空実況も披露され、馬名をハイスピードと大迫力で連呼。個性派ぞろいで、思い入れたっぷりにそれぞれの名調子を聞くことができ、大勢のファンを楽しませていた。架空実況では、2人がケイマの1着ゴールを的中させたが、予想では2、3着を外しており、全員撃沈したもよう。笠松競馬場ならではの初めてのイベントで、来年「第2回」があるかも...。
 
 笠松競馬のレースでは、最も多く行われれているのが1400メートル戦。そのレコードホルダーは、岩手のラブバレット(山本聡哉騎手)で、3年前の笠松グランプリ(良馬場)で刻んだ1分23秒6。北海道のオヤコダカ(石川倭騎手)とのマッチレースは名勝負だった。地元での禁止薬物問題の余波を受けて、今年は参戦できなかったが、笠松グランプリ3連覇とコースレコード更新の偉業を達成。中央のGⅠ馬ヤマカツスズラン(阪神3歳牝馬S勝ち)が笠松・全日本サラブレッドカップ(02年)で記録した1分24秒3を、14年ぶりに破ったレース内容は圧巻だった。来年は9歳馬になるが、逆風に負けないで、これからも地方競馬に所属して、笠松グランプリでまた元気な姿を見せてほしいものだ。