大井競馬場でのYJS出場騎手紹介式で、入場する笠松競馬の渡辺竜也騎手

芦毛馬に騎乗し、パドックを周回する渡辺騎手=大井

 最終日の中山競馬場で2着。最後のレースに勝てば総合V、3位以内でも表彰台の可能性はあったが、勝利の女神はほほ笑まなかった。「2018ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)」ファイナルラウンドに挑んだ笠松競馬所属の渡辺竜也騎手は総合Vには届かず、力尽きて9位(31ポイント)に終わった。

 笠松など全国の地方競馬場で熱戦を繰り広げ、トライアルラウンドを突破した地方騎手7人、JRA騎手7人が栄冠を目指して、大井と中山で計4レースを戦った。

 18歳の渡辺騎手は笠松競馬で昨春デビュー。名古屋ラウンドで2連勝を飾り、地方・西日本地区トップの成績でファイナルへ進出。地方騎手ではただ一人、2年連続の出場を果たした。昨年総合8位で、ラストチャンスとなる今年は総合Vを狙っていたが、厳しい戦いとなった。

 ジョッキー戦は騎乗馬のくじ運次第でもあり、当日いかにその馬の得意とするレース運びができるかがポイント。渡辺騎手は初日の大井で9着、6着と出遅れ。中山では初戦2着と意地を見せたが、最後は12着に敗れた。

第7レースの芝コースでルックスマート(3)に騎乗。差し脚鋭く、2着に食い込んだ渡辺騎手=中山

好走したルックスマートと渡辺騎手=中山

中山競馬場での出場騎手紹介式で、西日本地区の地方騎手を代表してあいさつする渡辺騎手。笠松競馬とともに岐阜の観光もアピールした

ファイナルラウンドで健闘した渡辺騎手=大井

 初日の大井2レース目では1番人気馬に騎乗したが、6着という結果。「悔しいです。3コーナーから早めに行ったが、ジリジリという感じでうまく追えなかった。笠松と違って直線が長く、砂が重たかった。技術不足ですね」と残念がった。

 ダート3戦は掲示板を外したが、中山での芝コースとは相性が良く、昨年の3着に続いて好走。6番人気だったルックスマートで差し脚鋭く2着に突っ込み、JRAのファンにも「笠松の渡辺」をアピールできた。

 連続出場の渡辺騎手は、中山での出場騎手紹介式でも存在感を示した。詰め掛けた大勢のファンを前に、トークで盛り上げて大受け。西日本の地方騎手を代表して「昨年もこの場に立たせてもらいましたが、緊張して何も言えなかったんで、今年も来ました。白川郷で有名な岐阜県から上京しました」と話したところで、司会者にあいさつを止められるハプニングがあり、スタンド前は爆笑の渦に。

 「3日前から(笠松で)攻め馬をしながら考えてきた」というメッセージ。「僕は白川郷に行ったことはないですが...」と続けられずに残念そう。それでも、この日の紹介式では一番目立っていたし、トーク力もアップ。「両親のほか、先生(笹野博司調教師)も応援に来てくれて『楽しんでこい』と言われた。レースでは集中して落ち着いて乗れそうです」と気合を入れていた。

 日頃の笠松競馬では「馬券を買ってもらえる騎手になりたい」という渡辺騎手。中山での最初のレースでは、馬券圏内(2着)を確保できて、うれしそうだった。「JRAの馬は馬力もいいし、ゴール前で伸びてる感じがあった。ギアがもう一つ上がっていれば、突き抜けていたかも」と笑顔を見せていた。

表彰式のクライマックス。総合Vを飾った桜井光輔騎手を真ん中に、ファンの祝福を受けるヤングジョッキーたち

ファイナルラウンドで腕を競った14人のヤングジョッキーたち=大井

サインを求めるファンたちと交流する渡辺騎手=中山

 総合Vを飾ったのは、川崎所属の19歳・桜井光輔騎手(56ポイント)で、大井での1着、2着で先行し逃げ切った。2位はJRA・栗東の荻野極騎手(49ポイント)、3位は高知の松木大地騎手(44ポイント)だった。表彰台の真ん中に立ち、2代目チャンピオンに輝いた桜井騎手は「チョー気持ちいい。ヤングジョッキー全員で競馬界を盛り上げていきたい。頑張ります」と歓喜の表情で、高らかにヴィクトリーポーズを決めていた。

 渡辺騎手の2年間のYJS挑戦は幕を閉じた。「最後のレースは力み過ぎました。乗りやすい馬でしたが、自分の方が大丈夫じゃなかった。YJSは、モチベーションとして頑張ってきた。出られなくなるのは寂しいですが、貴重な経験を糧にして、笠松で頑張っていきたいです」と話し、夢のステージを完走し充実した表情だった。
 
 また、渡辺騎手は競馬場に足を運んでくれたファンを大切にする姿も素晴らしい。中山でのレース終了後にも、サインを求める大勢のファンたちの激励に応えていた。気の早いファンからは「柴山雄一騎手のようにJRAに来て頑張って」などと声援も飛んでいたが、まずは笠松で大きなレースを制覇して、ウイナーズサークルでファンとの交流を深められるといい。リーディング・笹野厩舎の管理馬で、重賞初Vをゲットする日もそう遠くないだろう。

 笠松では騎手候補の東川慎君が2019年4月にもデビュー予定。渡辺騎手の活躍に続いて、笠松勢としてYJSファイナルを目指してほしい。けがのためファイナル進出を断念した水野翔騎手も若手の成長株で、このところの活躍が目覚ましい。笠松への移籍2年目の飛躍が期待されている。

 12月29日は降雪の影響で開催中止となった笠松競馬だが、東海ゴールドカップ(31日)から新春シリーズには、馬券を買って運試しをする大勢のファンでにぎわう。存続問題に揺れ続けた平成から、新たな時代へ向けて、ベテランと若い力のぶつかり合いで笠松競馬を盛り上げていきたい。