オグリキャップとアンカツさん(安藤勝己元騎手)が「笠松育ちの永遠のヒーロー」であることを改めて実感した。

オグリキャップ記念で笠松競馬場に里帰り。トークショー&予想会で、レースを盛り上げた安藤勝己さん

 エンパイアペガサスが圧勝したオグリキャップ記念当日、笠松競馬場に里帰りしたアンカツさん。現役時代の減量苦から解放されて「太め残り」にはなったが、トークショーに予想会にアンカツ節は絶好調。進行役の長谷川満さんが本音を引き出し、詰め掛けた大勢のファンは大爆笑。笠松、中央時代に騎乗した競走馬ベスト3など興味深い話を聞くことができた。トークショーなどを振り返った。
 
 ―アンカツさん登場です。
 笠松は久々ですごく懐かしいね。電車で来たんだが、変わってないし、のどかな感じがするね。
 ―地方、中央通算で4464勝も挙げましたね。
 結構勝ってるなあ。JRAでは「1111勝」。これは覚えやすいからね。笠松での1年目は10月デビューであまり勝てなくて、12月までに9勝だった。翌年はリーディング2位になった。
 ―3年目からは、笠松で18年連続リーディングに。
 けがも少なく、恵まれていた。いい馬に乗ってたなあと思う。やっぱり「勝つ馬」でないとね。

長谷川満さんの軽妙な突っ込みに、アンカツ節は絶好調。詰め掛けたファンは大笑い

 
 ―毎年、連対率が5割近くあったが、そんなアンカツさんでも勝てない騎手がいた。
 (東海地区最初の2000勝騎手の)名古屋の坂本敏美さんがすごかった。何か違うものを持っていて、同じ馬に乗っても動きが違った。誰にも負けたくなかったが、自分がどう乗っても、坂本さんには勝てなかった。今まで見たジョッキーで1番は坂本さんだったなあ。(レースでは)馬は100%の力を出さないが、坂本さんは80%の力を出させたんだ。僕は60%ぐらいで、下手な騎手だと30~40%かな。馬の競走能力を100%引き出すことは、ほとんどできないからね。

 ―競馬で心掛けていたことは。
 笠松では先行有利だけど、後ろに下げていったら、すごい脚を使った馬がいた。勝つ気で乗り過ぎると、勝ち切れないし、「しまいだけ」でも間に合う馬もいたね。(笠松のダートでも)ラスト3ハロン(600メートル)を36秒台で来た馬もいたからね。

 ―アンカツさんが笠松と中央で騎乗した馬のベスト3を聞かせてください。

全国の地方競馬で活躍し、「ダート日本一」の実力を発揮したフェートノーザン

【笠松時代の騎乗馬ベスト3】 
 ■第3位 レジェンドハンター(中央芝GⅠの朝日杯3歳Sで半馬身差の2着)

 笠松でデビューしたが、すごいフットワークだった。「ジェット機」みたいで、スタートが桁違いだった。中央のデイリー杯を勝ったけど、朝日杯では俺が下手に乗って負けちゃったなあ。もう少し我慢すれば良かった。勝ったエイシンプレストンもその後、香港マイルを勝つなど強い馬だったからなあ。レジェンドハンターは、体全体を使ってクッションがすごく良かったね。

 ■第2位 フェートノーザン(笠松での第1回全日本サラブレッドカップでイナリワンに完勝、帝王賞も制覇)
 1987年に中央から笠松へ移籍してきた。レースではすごく乗りやすかった。ゴーサインを出すまでは動かないタイプの馬だった。(勝負どころで)ゴーサインを出すと、すごい脚を使った。ダート向きで乗り心地は悪かったが、筋肉もりもりの素晴らしい馬で、馬力があった。

1991年1月、笠松競馬場でのラストランとなったオグリキャップ引退式でコースを2周した安藤勝己さん

 ■第1位 オグリキャップ(ゴールドジュニアなどで騎乗し、7戦7勝)
 (笠松在籍は87年5月~88年1月)1年も一緒に居なかったが、騎乗して7連勝できた。正直言って、デビュー時は「ちんけな馬」だったが、見る見る変わっていった。6戦目(秋風ジュニア)から騎乗し、さらに調子が良くなった。精神的にすごい馬だった。動じず、どっしりしていた。先頭に立つとフラフラするところがあったが、他馬に並ばれると、耳をしぼり、歯を食いしばってゴールへ走った。笠松時代から連闘に近いレースも多かったが、すごくタフで、餌食いがとても良かった。ぐんぐん体重が増えて、内臓も強かった。

 ※2013年1月、アンカツさんの現役引退会見で聞いた時には、笠松時代の思い出の馬としてフェートノーザンの名前を挙げていたが...。この日は記念レースを意識してか、オグリキャップが第1位だった。ベスト3に桜花賞4着の女傑ライデンリーダーの名前はなかったのは意外だったが、それだけ、すごい馬たちに騎乗してきたということだ。

【中央時代の騎乗馬ベスト3】 
 ■第3位 ダイワメジャー(天皇賞・秋などGⅠ4勝)
 重量感があって、乗る頃には仕上がっていた。レースでは他馬が寄って来ると、相手に併せて走り、もう1回伸びる馬だった。
 ※瞬発力はないが、並ばれても抜かせない勝負強さを発揮した。

キングカメハメハでダービージョッキーとなった安藤勝己さん(2004年5月31日付・岐阜新聞)

 ■第2位 ダイワスカーレット(ダイワメジャーの妹で、有馬記念VなどGⅠ4勝)
 桜花賞ではウオッカやアストンマーチャンよりも先にスパートをかけて、勝つことができた。距離(1600メートル)がもたないかもと、トライアルのチューリップ賞で試して乗った(ウオッカに続く2着)。桜花賞では、武豊騎手に騎乗依頼があったが、俺にも声が掛かって騎乗できた。2000メートル以上でも大丈夫な馬だった。
 ※08年の天皇賞・秋では、わずか2センチ差でウオッカに敗れたが、歴史的な名勝負を演じた。

 ■第1位 キングカメハメハ(日本ダービーを制覇し、デビュー2年目でダービージョッキーの仲間入り)
 負けるとしたらNHKマイルCかと思ったが、勝つことができた。日本ダービーは、自分の家族も呼んでいて、「絶対に負けない、絶対に勝てる」と自信があった。最初はNHKマイルCだけで、ダービー騎乗は頼まれていなかった。武豊、福永祐一、外国人騎手らも候補だったが、最終的にはダービーに騎乗できて運が良かった。
 ※NHKマイルC→日本ダービーという変則2冠を制覇。1600~2400メートルでの対応力を示し、種牡馬としてもダイワメジャーと共に成績優秀で、産駒の活躍が楽しみだ。

オグリキャップ記念4勝目の岡部誠騎手(左)と、勝利を祝福する安藤勝己さん

 【予想会】
 中央ではパドック解説もしているが「あんなもの分かるはずがない。みんないい馬だもの」と、ぶっちゃけトーク全開でファンは大笑い。オグリキャップ記念については、「地方馬同士のレースは見る機会もなく正直分からない。エンパイアペガサスは5歳でまだ若いから要注意」と予想。アンカツさんの展開の読み通り、2番手から3コーナーで一気にまくって先頭に立ったエンパイアペガサスが、そのまま大差勝ち。天皇賞・春は、勝ったレインボーラインはノーマーク。◎シュヴァルグランが2着、▲クリンチャーが3着に踏ん張った。

 両レースともズバリ的中とはならなかったが、大いに楽しませてくれた。オグリキャップ記念は1998年にサンディチェリーで勝っているアンカツさん。地方・中央を駆け抜けた「天才ジョッキー」のオーラで レース表彰式も盛り上げてくれた。来年のオグリキャップ記念でまた会えるといいが...。