現役時代のオグリキャップ。笠松デビュー30周年の今年、ひ孫のラインミーティアがGⅠに挑戦する
現役時代のオグリキャップ。笠松デビュー30周年の今年、ひ孫のラインミーティアがGⅠに挑戦する
新潟・アイビスサマーダッシュで鋭い切れ味を発揮。西田雄一郎騎手の手綱で重賞初勝利を飾ったラインミーティア(競馬ブック提供)
2005年、オグリキャップの里帰りセレモニーで笠松競馬場を訪れたアンカツさん。JRA移籍後、GⅠで22勝を挙げた

 オグリの血が騒ぐGⅠ初挑戦。夏のスプリント王者に輝いたオグリキャップのひ孫・ラインミーティア(牡7歳)が、10月1日・中山競馬場での「スプリンターズS」(芝1200メートル)の夢舞台にゲートインする。

 ゴール前200メートルから豪快な末脚を発揮し、西田雄一郎騎手とは最高のコンビ。アイビスSD(GⅢ)で重賞初制覇、セントウルS(GⅡ)2着と、夏場の活躍が目覚ましかった。スプリンターズSでは、意外と人気がないが、「最強の穴馬」として波乱を呼ぶか。厳しい戦いにはなるが、オグリ一族としては、オグリローマンの桜花賞制覇(1994年)以来となるGⅠ奪取を目指す。

 西田騎手は、オグリキャップの大ファンでもあった。10代の頃、有馬記念でのラストランにすごく感動し、最初に好きになった競走馬で、騎手を目指すきっかけにもなった。その血が入っているラインミーティアに騎乗できることは、この上ない喜びだろう。自ら手綱を取って、GⅢ制覇に続き、GⅠに挑む不思議な巡り合わせ。自身2度目のGⅠ挑戦で、一発を狙う。

 ラインミーティアは夏の上がり馬で、7歳にして本格化した大器晩成型か。470キロほどに馬体が絞れて、追い込みに徹する競馬で本領を発揮。「今回もこの馬のラストの切れ味を引き出すように乗り、勝負するだけ。通用する力はあるはず」と、マイペースでじっくりと走らせ、豪快な差し切りに懸ける。

 秋のGⅠシリーズ開幕戦となる今年のスプリンターズSは、2012、13年に連覇したロードカナロアのような絶対的エースは不在。混戦模様で、どの馬にも優勝のチャンスがありそうだ。昨年優勝のレッドファルクス、ここ2年の高松宮記念覇者のビッグアーサーとセイウンコウセイ、セントウルSを制したファインニードルらが上位人気を集めそうだ。

 夏場の疲れから回復したラインミーティア。追い切りでは、バネ十分のフットワークで前走時の好気配をキープし、中山コースも問題なさそうだ。GⅠということで、さらに相手が強くなるが、「あまり欲は出さずに、この馬の競馬をしてくれれば」と水野貴広調教師。前走のように内で脚をためて、馬群を割る形がベストで、どこまでやれるか。内枠を希望していたが、3枠5番に入った。

 スプリンターズSの過去10年の傾向はどうか。前走はセントウルS組が4勝、2着3回、3着4回と突出した強さで、最重要ステップといえる。ロードカナロアは、いずれもセントウルS2着から挑んで連覇を飾った。一昨年のストレイトガールも4着からの制覇。重賞1勝のみで、戦績では見劣るラインミーティアだが、セントウルS2着の勢いで、チャンスを生かしたい。

 JRA移籍後もGⅠハンター(22勝)として活躍したアンカツ(安藤勝己)さんだが、スプリンターズSの勝利はなく、2着が3回もある。惜しかったのは03年のビリーヴ。高松宮記念でアンカツさんにGⅠ初制覇をプレゼントしてくれた名牝だが、スプリンターズSではゴール寸前、デュランダルの強襲にハナ差で屈した。アンカツさんは08、09年のビービーガルダンでは3着、2着。11年のパドトロワも2着だったが、翌年のアイビスSD、キーンランドCを勝ち、夏のスプリント王者に導いている。

 オグリの血を継承する素質馬は、地方競馬でも走っている。9月の大井競馬では、キャップの孫オーロシスネ(牡4歳)が4月以来の復帰戦を圧勝し、4連勝を飾った。デビューは今年1月と遅れ、まだC級レベルだが、単勝1.2倍の圧倒的1番人気に応えた。中団から4コーナーで先頭に並びかけると、ラスト200メートルから豪快に突き抜けた。クラスが上がってからも、今後の成長が大変楽しみな1頭だ。

 オグリキャップの母・ホワイトナルビーから脈々と受け継がれてきた笠松発の血統ロマン。四半世紀の時を超えて、オグリ一族の闘志に再び火がついたかのようだ。中央のGⅠ制覇はキャップが4度、オグリローマンが1度。ラインミィーテアが挑む中山競馬場は、キャップがラストランの有馬記念で優勝し、伝説のオグリコールが響き渡った舞台でもある。

 勝敗は抜きにして、まずはGⅠの舞台にゲートインしてくれるだけでいい。オールドファンには、たまらない一瞬で、オグリキャップのように武者震いしたくなるかも。まずは単勝・複勝の「がんばれ馬券」で応援したい。