ウインター争覇を制覇したキタノナシラと大畑雅章騎手

 寒波到来でようやく冬らしくなってきた。笠松競馬場で行われたウインター争覇(SPⅢ、1800メートル)は、地元・森山英雄厩舎のキタノナシラ(セン馬5歳)が最後の直線で抜け出し、重賞初制覇。6番人気の伏兵馬で栄冠をつかんだ大畑雅章騎手は、地方競馬通算1800勝を達成した。サムライドライブ(牝5歳、角田輝也厩舎)が踏ん張って2着、ニューホープ(牡4歳、田口輝彦厩舎)が3着に追い込んだ。1番人気のストーミーワンダー(牡6歳、笹野博司厩舎)は5着に終わった。

 ウインター争覇は一昨年、7年ぶりに復活した東海地区限定の重賞レース。V争いの一角だったチャイヤプーン(牡5歳、花本正三厩舎)は、調教中の左前球節捻挫のため出走を取り消したが、笠松勢7頭、名古屋勢2頭が参戦。重賞ウイナー6頭と豪華な顔ぶれになった。

 レースを引っ張ったのは、ライデンリーダー記念(17年)優勝馬で、笠松復帰2戦目のチェゴ(牝5歳、井上孝彦厩舎)だったが早々と失速。3~4コーナーでは、渡辺竜也騎手騎乗のストーミーワンダーと村上弘樹騎手騎乗のサムライドライブの2頭が先頭で並んだ。3番手から追撃したキタノナシラが脚色で勝り、サムライドライブに1馬身半差をつけて優勝をさらった。年末の東海ゴールドCを制覇したニューホープには筒井勇介騎手が騎乗し、7番手から鋭い差し脚を発揮したが、3着が精いっぱいだった。 

ウインター争覇Vのキタノナシラと喜びの森山英雄調教師(左)、大畑騎手(中央)ら

 勝利インタビューで大畑騎手は、「追い切りで1度またがっていて、いい雰囲気で乗れました。4コーナー手前から手応えがあって、ばっちりでしたね。素直な馬なんで、この先が楽しみです」と初コンビでの重賞Vを喜んだ。自身の通算1800勝については「全く知りませんでした。2000勝を目標にします」と答えると、ウイナーズサークル前から「3000勝を目指して!」といった声援も送られ、「頑張ります」とにっこり。大畑騎手は愛知所属ではあるが、カツゲキキトキトの主戦であり、昨年のオグリキャップ記念も制覇するなど笠松での活躍が目立っている。

ウインター争覇の1周目ゴール前、好位から進むストーミーワンダー(9)と渡辺竜也騎手

 キタノナシラで重賞Vを果たした森山調教師(64)。2005年4月、経営不振で廃止された群馬・高崎競馬場から笠松競馬場に、川嶋弘吉調教師(74)とともに移籍。苦労人2人の笠松競馬場の印象は「よく整備され、馬場の状況もよく、調教しやすい。手づくりの競馬場という感じ」と好印象だったそうだ。中学から高校1年までの4年間、厩務員の父と笠松競馬場近くに住んだことがあった森山調教師。移籍当時、笠松競馬は1年間の試験的な存続だったが、「高崎競馬場でも存続活動が一応行われたが、ここは存続に向けて皆が一丸になって頑張っている。雰囲気もいい」と存続を確信。笠松に移籍して15年になるが、これまでカキツバタロイヤル、ニュースターガールなどの重賞馬を育ててきた。
 
 キタノナシラは1800メートルを1分54秒1で駆け抜け、「馬の状態が良かったし、タイムは優秀。地元だけでなく、遠征にも行きたい。距離は長いところでも短いところでもいける馬。次走は(3月19日の)笠松のマーチカップかな。できれば地元で大きいレースを勝ってほしい。(4月の)オグリキャップ記念も使いたいが、ちょっと長いかも」と重賞戦線をにらんで手応え十分だった。森山厩舎には、2年連続リーディングに輝いたことがある吉井友彦騎手が所属。ウインター争覇ではヤマニンフレッチェ(森山厩舎)に騎乗し6着だったが、「幸福をもたらしてくれる」重賞馬の出現で、今年は森山厩舎にとって飛躍の年になりそうだ。

 昨年重賞5勝、笠松の大将・ストーミーワンダーは、4コーナーではサムライドライブをかわして先頭に立つ勢いだったが、ラスト200メートルで息切れした。笹野調教師は「八分ぐらいの出来。(昨年6月、休み明けで勝った)飛山濃水杯よりもいい状態で期待しています」と話していたが、やはり捻挫の影響で順調さを欠いていた。距離も8戦8勝の1600メートルがベストで、1800メートルはやや長かったようだ。

期間限定騎乗中の関本玲花騎手。7日の第2レースで笠松初Vを飾った

 笠松競馬で期間限定騎乗の関本玲花騎手は、華麗な逃げ切りで待望の笠松初Vを飾った。笠松24戦目となった7日第2レースで、3番人気・ナイトキャップ(牝3歳、藤田正治厩舎)に騎乗。ゲート内ではうるさい面を見せていたが、スタートダッシュを決めて先頭に立つと、1コーナーからスイスイとマイペースの逃げ。快調に4コーナーを回ると、右ムチをうならせてゴールへ。最後は筒井勇介騎手のズイーガーに詰め寄られたが、半馬身差で勝利を収めた。

 名古屋では既にハナ差で初Vを挙げており、「ぎりぎり勝てて良かったです」と話していたが、笠松では6日まで勝利がなかった。如月シリーズ初日の第5レースでは、3番人気のケープフィアに騎乗。先手を奪ったが、残り400メートルからキーフェイスとのマッチレースとなり、激しいたたき合いの末、惜しくもハナ差負け。なかなか1番人気の馬に騎乗できなかったが、「調教師の先生が決めることですから」とさらり。騎乗馬の力を引き出すことに専念。最終日に奮起し、ここ2走7着続きだったナイトキャップを、13戦目での初勝利に導いた。

 ナイトキャップは門別デビュー馬で、笠松移籍後5戦目。父はアンライバルドだが、「キャップ」と名の付いた馬での勝利となり、笠松ファンを喜ばせた。この日、関本騎手は前走1着馬ばかりがそろった「ミスミソウ特別」で笠松メインレースにも初騎乗し、最後方から追い上げて5着だった。関本騎手の笠松での期間限定騎乗は21日まで。如月シリーズが終わり、17~21日の梅花シリーズで2勝目を目指す。

「レディスヴィクトリーラウンド」の高知ラウンドに出場した関本騎手(左から2人目)、ミカエル・ミシェル騎手(同3人目)ら6人の女性ジョッキー(NAR提供)

 今月4日には、地方競馬で活躍する女性ジョッキーが腕を競う「レディスヴィクトリーラウンド」の高知ラウンド(2戦)も行われ、愛知の宮下瞳騎手が3着、2着にまとめて優勝。前回優勝の木之前葵騎手は6着、3着で3位だった。地方競馬の短期免許を取得し来日中で、「美しすぎるジョッキー」とも呼ばれるミカエル・ミシェル騎手(フランス)も参戦。1戦目は11着だったが、2戦目でハンゲキノノロシに騎乗し、好位から抜け出して圧勝。右手でガッツポーズも見せ、ファンの期待に応えた。高知初勝利で第1ラウンドは2位につけた。

 関本騎手もレディスヴィクトリーラウンドに参戦。高知では10番人気、7番人気と騎乗馬に恵まれなかったが、ともに2番手から積極的なレース運び。最後は息切れし、2レースとも7着に終わったが見せ場は十分。「前に行くようにと指示通りでしたが、思うようにいかなかった。もっとちゃんと乗れるように、先輩を見習って頑張ります」と意欲を示していた。22日に佐賀ラウンド、3月12日に最終の名古屋ラウンドが行われ、出場騎手は計6戦の合計ポイントで総合優勝を目指す。