YJS笠松ラウンド第1戦。1周目のゴール前を2、3番手で通過するダズリン(4番)に騎乗の東川慎騎手と、アイ(7番)に騎乗の深沢杏花騎手

 17~20歳の若手ジョッキーが集結し、地方・中央競馬の「新鮮力」が躍動した。ホームで地の利を生かしたかった東川慎騎手(19)と深沢杏花騎手(18)は懸命に前を追ったが、勝利は挙げられなかった。

 「ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)」の西日本地区トライアル最終ラウンドが4日、笠松競馬場で開催され、年末に園田、阪神で行われるファイナルラウンド進出者(地方、中央ともに4人ずつ)が決まった。11位で笠松ラウンドを迎えた東川騎手は1戦目3着、2戦目2着で上位騎手を猛追したが、惜しくも5位。「夢のファイナリスト」にはあと一歩届かなかった。
 
 東川騎手は昨年、落馬事故による負傷のためYJSに出場できず、今年がシリーズ初参戦。笠松第1戦(8R)は、2番人気・ダズリン(加藤幸保厩舎)に騎乗。2番手からの競馬で、逃げた1番人気・メイショウセントレ(栗本陽一厩舎)をぴったりとマーク。いい手応えで4コーナーを回ったが、最後の直線で伸び切れず、妹尾将充騎手(高知)騎乗のトリプルプレイ(栗本厩舎)にかわされて3着だった。メイショウセントレに騎乗した団野大成騎手(JRA)が逃げ切りVを飾った。

「来年は頑張ります」と意欲を示す東川騎手(中央)と深沢騎手(右)。この日勝った渡辺竜也騎手(左)と高木健騎手(後方)もVサインで激励していた

 東川騎手「下手に乗ってしまった。追いが足りなくて馬を動かせなかった。最後の直線では、馬が内にささって(斜行して)遊ばれてしまった。2着馬に差されたは僕のミスです」

 悔しさを胸に挑んだ第2戦(10R)は、前走1着馬10頭によるサバイバル戦。「ファイナル切符」をゲットするには勝利しかなかったが、騎乗馬は最低10番人気(単勝万馬券)のペイシャフレンチ(栗本厩舎)で、厳しいレースが予想された。東川騎手は後方2番手からじっくりと脚をためる作戦で、3~4コーナーから豪快に追い上げ、最後の直線では大外一気。5頭が横一戦となった2番手争いを制し、2着に食い込んだ。1番人気のルーラーザクイーン(笹野博司厩舎)が岩田望来騎手(JRA)の好騎乗で、内を突いて差し切りVを決めた。
 
 東川騎手「先生から『外を回したらそこそこ来るよ』と言われた通り、手応えが良かった。向正面からエンジン全開になって、よく追い込んでくれた」

 トライアルラウンド4戦を2着、3着2回、12着で合計51ポイント。4位の細川智史騎手(愛知、角田輝也厩舎)とはわずか1ポイント差でファイナルラウンド進出を逃した。

 東川騎手「今回はしょうがないです。まあまた来年頑張りたいですね。次は(ファイナルで)JRAのコースで乗りたい」

 このところ父・公則調教師の管理馬で好成績を挙げている。

 東川騎手「いい馬ばかり乗せてもらっています。これからは、もっと馬を動かせる騎手になりたいです」

 今年4月にデビューしたばかりの深沢騎手は、騎乗馬のくじ運に2戦とも恵まれず、相手関係で劣勢。専門紙の予想も無印で7番人気、9番人気。1戦目は、アイ(東川公則厩舎)に騎乗。積極策を敢行し、1周目ゴール前では3番手の好位につけていたが、第2コーナーから後退して10着。2戦目はマカレナダンス(伊藤強一厩舎)に騎乗。攻め馬の動きは良かったが最後方のまま伸びず、10着に終わった。

 深沢騎手「(騎乗馬に恵まれず)後方を回ってきただけで、何もないです。また来年頑張ります」

 地元の新人女性ジョッキーには、かわいそうに思える厳しいレースが続いた。もう少し勝負になる馬に騎乗していたら、結果は違っていただろう。思うようなレースができず、悔し涙を流していたようだが、来年へのステップにはなり、YJS再チャレンジに意欲を見せていた。最終レースを勝った渡辺竜也騎手は17、18年のYJSファイナリストで、笠松リーディングを争うまでに成長。来年以降もファイナルの夢舞台で騎乗するチャンスがある東川、深沢騎手の活躍を期待し、Vサインで激励していた。

1戦目で逃げ切り勝ちを飾った団野大成騎手(右)と、2戦目で差し切り勝ちを決めた岩田望来騎手。ファイナルラウンドでの優勝を目指している

 ■団野大成騎手と岩田望来騎手がV飾り、ファイナル進出

 この日の笠松ラウンドで勝利を飾ったジョッキーは、JRA勢の団野大成騎手と岩田望来騎手。ともに1番人気馬に騎乗し、2着馬に3馬身差でゴールを駆け抜けた。団野騎手は名古屋ラウンド2戦目に続いて2勝目。JRAでも今年50勝を挙げ、全国ランキング16位(11月6日まで)。岩田騎手は園田、高知ラウンド(2勝)に続いて4勝目。中央では今年62勝で全国ランキング9位と成長著しい。表彰セレモニーは集まったファンの前で開かれ、2人はこの日の勝利とファイナルラウンド進出の喜びに浸った。

 団野騎手「スタートをうまく切れて、いい勝負になると思った。(笠松コースとの相性は)初めて来た時にも勝たせてもらって、思い出深い競馬場です。(トライアルラウンドでは)2勝できましたが、逃げて勝つ競馬で、馬の力に助けてもらった。ファイナルラウンドでは優勝を狙いたいです」

 岩田騎手「後ろからでも大丈夫だと思って、馬の力を信じて乗りました。(大激戦となった最後の直線では)すごくいい脚で追い込んでくれました。(シリーズ4勝目で)いい馬に乗せていただいた。昨年はファイナルで悔しい思いをしたので、今年は1位を目指して頑張りたいです」

 西日本地区の全日程が終了したが、1番人気馬はやはり強かった。笠松では一昨年2勝、昨年は1勝。そして今年は2勝という結果。岩田騎手が勝ったルーラーザクイーンは単勝1.1倍。笠松では8馬身差Vを連発しており、力量的には誰が乗っても勝てるような馬だった。ポイント1位の岩田騎手が騎乗し、レース前から結果が見えていては面白くない。騎乗技術にはそれほど差がない若手ジョッキーたち。来年こそは混戦となるレース編成で、実力差のない馬での腕比べを期待したい。

5日の大井ラウンド(東日本地区)も終わって、12月24日に園田競馬場、26日に阪神競馬場で行われるファイナルラウンドに出場する東西のジョッキー16人が決まった。
 
 西日本地区の地方騎手では、1位が高知の塚本雄大騎手(69P=ポイント)、2位は佐賀の金山昇馬騎手(68P)、3位は佐賀の出水拓人騎手(67P)。大激戦だった4位争いは、愛知の細川智史騎手(52P)が逃げ切ってファイナルに進出する。5位以下は東川慎騎手(51P)、兵庫の石堂響騎手(51P)、金沢の兼子千央騎手(50P)が続いた。羽島市出身の愛知・浅野皓大騎手(今津博之厩舎)は10位(40P)。笠松ラウンドでは1戦のみの騎乗で7着だった。地元の深沢杏花騎手は14位(13P)に終わった。JRA勢は岩田騎手、団野騎手のほか、笠松でトークショーの経験もある川又賢治騎手や、亀田温心騎手が参戦する。

 東日本地区の地方代表は吉井章、仲原大生(大井)、福原杏(浦和)、池谷匠翔(川崎)の各騎手で、南関東勢が強さを発揮した。今冬、笠松での期間限定騎乗でも活躍した関本玲花騎手(岩手)は6位でファイナル進出を逃した。

笠松での最終レースに騎乗した愛知の細川智史騎手もファイナル進出が決まった

 ■愛知の細川智史騎手、1ポイント差でファイナル進出
 
 東海、北陸地区からただ一人ファイナリストになった細川智史騎手(愛知)は、21歳で鳥取県境港市出身。地方競馬教養センターでは深沢騎手と同期で今春、名古屋競馬でデビューしたばかり。調教師部門で今年の全国リーディングを快走している角田輝也厩舎に所属しており、陣営の期待は大きい。名古屋では14勝を挙げており、目標とする騎手は、10月に地方通算4000勝を達成した岡部誠騎手。笠松では6戦して2着1回。この日はYJSでの騎乗はなかったが、最終11Rに参戦。自厩舎のスマートユニバンスに騎乗し5着。YJSでは、佐賀での2着など堅実な騎乗ぶりでファイナル進出が決まった。
  
 細川騎手「(きょうの)結果を待つ形になりましたが、すごくうれしいです。(トライアルラウンドでは)自分がもっと優位になれる競馬をしたかったです。次のレースやファイナルラウンドにも生かせるようにしたいです」
 
 笠松競馬場の印象については。
 
 細川騎手「勝利はまだないですが、とても乗りやすいです。名古屋とは違ったペースなので、コースへの適性を磨いていきたいです」
 
 笠松での最終ラウンドが無事終了。場内には、笠松競馬場通いを生きがいにしているようなオールドファンのほか、お気に入りのジョッキーを応援する若者グループの姿も多く、活気にあふれていた。