騎手免許試験に合格した長江慶悟候補生。笠松競馬10月開催での騎手デビューに向けて闘志満々だ(NAR提供)

 真新しい「水色十字たすき」の勝負服姿で、笠松競馬場のゴールを真っ先に駆け抜けたい―。7月9日まで半年間、笠松実習に励んだ長江慶悟騎手候補生(20)が、晴れて騎手免許試験に合格した(10月1日付で交付)。地方競馬全国協会(NAR)から発表され、笠松・後藤佑耶厩舎に所属。10月5日からの地元開催でデビューを目指しており、今年は深沢杏花騎手(18)に続いて2人目の新人ジョッキー誕生となる。

 1年前に名古屋競馬でデビューした浅野皓大騎手(19)は羽島市出身で、勝負服は「白十字たすき」。渡辺竜也騎手(20)は「緑V字たすき」。新人も増えており、いつか名古屋、笠松に5人ずつ所属する10~20代の若手ジョッキー限定レースが実現したら楽しいだろう。

 長江候補生は、愛知県春日井市出身。「騎手が少なくて、たくさん乗れる。佑耶先生の厩舎でお世話に」と笠松を希望。実習では、毎朝午前2時ごろからの攻め馬をみっちりと。レース開催日には先輩騎手の馬具の手入れなどに励んだ。佑耶調教師の父は名伯楽だった保さんで、兄も現調教師の正義さんという笠松の名門。地方競馬教養センター(栃木県)の第100期生として2年間、騎乗技術を磨いて騎手免許に合格した。

 競馬への興味は、中学時代にテレビ中継を見たことがきっかけ。高校3年の夏、就職をしようと考えていて「父親が『やりたいことをやっていいよ』と言ってくれたので、騎手になろうと決めた」とのこと。子どもの頃、神社で流鏑馬(やぶさめ)をしていた父の姿を見て「かっこいいと思った」と馬乗りに憧れていた。

 笠松競馬では8月1日、30代のジョッキー3人が、NARの騎手免許を更新されず「引退」扱いになった。このため、所属騎手は14人にまで激減。全国の地方競馬の騎手数は20人前後が多く、笠松は最少となっている。少数精鋭で騎乗機会には恵まれそうな長江候補生。実習中から「一頭の馬から多くのことを吸収して、自分の技術を高めたい」と闘志。デビュー後は減量騎手を早く卒業して、一人前のジョッキーになることが目標という。

今年1月、笠松競馬の実習で馬具の手入れなどに励んだ長江候補生。深沢騎手は4月にデビューし、笠松、名古屋で計11勝。YJS佐賀ラウンドにもチャレンジした

 ■深沢騎手、YJS佐賀ラウンドで5着

 深沢騎手は8日、佐賀競馬場に遠征。ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)の西日本地区トライアルラウンドに、女性騎手ではただ一人挑戦。無観客開催で2レースに騎乗し、11番人気、10番人気と騎乗馬には恵まれず。第5R、スタートは良かったが後方からの追走となり、伸び切れず11着。第6R、やや出遅れて最後方からメンバー2番目の上がりタイムで追い込んで5着。ネット投票(複勝)で応援したが、一歩届かなかった。11月4日の笠松ラウンドでは、上位を目指してほしい。

 翌日の笠松第10Rでは、湯前良人厩舎の馬で地方通算10勝目(笠松で8勝目)を飾った深沢騎手。2年前の西日本ダービー4着馬のシオジスターに騎乗し、大差で逃げ切った。11日第11Rでも自厩舎のナラに騎乗し、軽量を生かしてまたも逃げ切りV。2~4着には筒井勇介、渡辺竜也、水野翔騎手が続き、会心のレースとなった。ナラは佐賀・サマーチャンピオン(GⅢ)で6着の実力馬。全国遠征も多く、深沢騎手とのコンビでビッグレース挑戦もあるだろう。

 YJSトライアルラウンドの総合ポイント(地方競馬・西日本)では、佐賀の出水拓人騎手がトップ。東川慎騎手(19)は6位、深沢騎手は10位。佐賀ラウンドで4着、2着だった名古屋の新人・細川智史騎手(21)は5位につけている。出場15人のうち上位4人がファイナルラウンドに進出できる。

ファンの入場が再開された笠松競馬場内。特別観覧席の4分の1程度が「先着116人限定」で開放された

 ■笠松でも観客入場再開、22日からライブ観戦可能に
 
 新型コロナウイルス対策で、無観客開催が半年以上続いていた笠松競馬場だが、ファンの入場が再開された。14日から場外馬券が発売され(19日からJ―PLACEも)、22日からの笠松・長月シリーズではライブ観戦が可能となる。ただ、特別観覧席への「先着116人限定」(シアター恵那は78人)という入場制限付き。第4コーナー側にある観覧席からは、パドックやゴール前の攻防がよく見えないこともあって、ファンからは「早く上限なしで」と切実な願いも...。

 今夏の笠松競馬は、馬場改修のため7週間もレースが行われなかった。本来なら8月の新装オープンで、きれいになったコースをファンに見てもらうはずだった。場外では「調教師、騎手の馬券購入問題」で大揺れとなったままで、発覚から約3カ月が経過したが、捜査は長引いている。そんな状況下での観客入りのレース再開で、競馬場サイドもコロナ対策とともに、慎重な対応になったのだろう。
 
 観客入り再開初日の22日は祝日(秋分の日)でもあり、昨年の同じ日には1500人余りが来場した。今年は「先着116人」の狭き門をくぐり抜けようと、開場時間の10時30分には、ライブ観戦を楽しみにしている大勢のファンが並びそうだ。

 今夏は、オグリキャップを主人公とした漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」(週刊ヤングジャンプ)の連載がスタートし好評。笠松競馬場を舞台に地元の名所なども登場し、笠松時代のオグリのレースが描かれており興味深い。オグリ像との対面なども目指して、「聖地巡礼」的に遠くから「ウマ娘」ファンが訪れる可能性もあり、入場できない人が多く出そうだ。笠松競馬開催日にも人数制限を設けるなら、南関東のように事前予約制にしないと、混乱を招くかもしれない。今後、段階的に入場者を増やしていくだろうが、入場門での来場者の状況を見て、柔軟に対応してもらえるといい。

 全国の地方競馬場での対応はどうなのか。入場が再開されているのは、ばんえい帯広、岩手(盛岡、水沢)、名古屋、高知、佐賀で混雑時は入場制限。「指定席事前当選者」に限っているのが浦和、大井で、「先着順による入場制限」は実質的に笠松だけ。川崎は18日にプレオープン。門別、船橋、金沢、園田では無観客開催が続いている。

 このうち大井は事前応募制(抽選)で指定席145人、一般席300人が入場可能。10月5日からは指定席288人、一般席550人となる。浦和は最大331人、公式サイトで事前応募制。人数制限なしの名古屋は、通常の1100人ほどのファンが来場している。
 
 笠松場外では、名古屋開催があった15日は、午後2時前に上限の116人となり入場ストップ。笠松競馬場のホームページには「入れ替え入場なし。ナイター競馬利用者は午後4時から入場可能=空席の人数分」と案内があった。16日午後5時前に出掛けてみたが、検温や消毒は入場口ではなく特別観覧席入り口で行われ、あっさりと入場できた。全体的な印象としては、競馬場としてコロナ対策に万全を期している姿勢がよく伝わった。

来場するファンを迎えてくれるオグリキャップ像。制限エリアで近寄れない

 名古屋最終12Rが行われ、門別のナイター競馬もあったが、観覧席に専門紙やマークカードを残したまま帰ったファンが多かった。入場は正門のみで、笠松競馬のシンボルとしてファンを迎えてくれるオグリキャップ像前はエリア制限があり、近寄ることができない。470席ある観覧席は4分の1ほど(116席)が開放されていた。大井競馬の対応を参考にすれば、次の段階では半分程度(約230席)での入場可能になるのか。そして、早い段階で名古屋のように「入場制限なし」となるといいが。

 笠松競馬の魅力は、競走馬とファンの距離が近く、のどかな田園風景の中、疾走する競走馬の蹄音とコースを吹き抜ける風を体感しながら応援できること。今は閉鎖されている屋外の一般スタンドでの観戦が最高だ。久しぶりとなった馬券の購入とともに、焼きそばや串カツなど「あの味をまた楽しみたい」というファンも多い。人気の飲食店の再開なども含めて、笠松競馬場内の「日常」を早く取り戻してほしい。

 「長江騎手」デビュー後の紹介セレモニーは、ファンの前で開かれるといいが、現時点では、ウイナーズサークル前は立ち入れないエリア。できれば4月に無観客での紹介セレモニーとなった深沢騎手にも登場してもらいたい。2人そろってファンと交流しながら、笠松のフレッシュな顔をアピールできるといい。