養蚕の伝統紡ぐ 飼育から5年、西濃唯一の「農家」に

2018年10月11日 09:36

  • 出荷前に繭の状況を念入りに確認する小塚誓治さん=8日、安八郡輪之内町四郷
  • 繭を作る棚「蔟」に並ぶ繭を見せる小塚誓治さん

 かつて岐阜県内でも盛んだった養蚕に安八郡輪之内町四郷、管工事業小塚誓治さん(67)が取り組んでいる。初めての経験に試行錯誤を重ね、5年を経て軌道に乗り始めた。県内で養蚕に携わる農家は戦後間もない頃には4万戸あったが、今では10戸。「伝統産業が廃れることなく後世に残ってほしい」と再興に挑む。

 養蚕に興味を持ち始めたのは6、7年前。カイコの餌になる桑を探していると、同町楡俣の長良川堤防近くで桑畑を見つけた。持ち主から畑の面倒を見られないと聞き、引き継いだ。

 約8千平方メートルの畑に新しく桑の木約2700本を植えた。道具は廃業した美濃加茂市の養蚕農家から譲り受けた。知り合いから桑の育て方やカイコの病気を一つ一つ聞きながらの手探りで、消毒の量が多すぎて桑の葉の生育が悪かったり、カイコが全部死んだりしたことも。今では140~150キロの繭を出荷できるまでになった。

 餌は一日3回、8時間おきに与える。多い日で300キロの葉が必要で、葉を摘むのは大変な作業。今秋は例年と比べ雨が多かったため毛虫が大量発生し、桑の木の管理が大変だった。

 飼育台に載った真っ白な繭を見ると、「シルバーがかった白色が本当にきれい」と思わず笑みがこぼれる。「苦労も多いが、この景色を見るために続けている」。今秋は9日に144・7キロを出荷した。

 県蚕糸協会(美濃加茂市)によると、かつては副業で養蚕を行う農家が多かった。1949年には県内で4万172戸。その後、安価な化学繊維の普及、農業の専業化などに伴い衰退。現在は可茂地域など一部で続き、西濃地域は小塚さんのみ。「自分の姿を見て、養蚕を始めてほしい」と町内での広がりを願っている。