ドラッグストアの店先に並ぶ人たち。老若男女がマスクを求めて開店を待っていた=4日午前8時34分、岐阜市上尻毛八幡
市道沿いに複数のドラッグストアが立ち並ぶ通り=4日午前9時9分、岐阜市上尻毛八幡
マスクがないことを大きく掲示して知らせている店もあった=4日午前9時53分、岐阜市又丸

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い深刻化するマスク不足。「岐阜新聞あなた発!トクダネ取材班」には「備蓄が足りなくなってきた」との声が寄せられ始めた。わずかな入荷分を求めて、早朝から各地のドラッグストアに行列ができているとの情報もある。地元で「ドラッグストア街道」と呼ばれる岐阜市内の店舗密集地を訪ねると、複数の店を"転戦"する老若男女の姿があった。「マスクがないと不安なので」。一方、不足は診療所など医療機関でも顕著で、医師らは「本当に必要な人を優先してほしい」と訴える。

◆「ないと不安」 家族で複数の店へ

 街道は同市北西部の七郷地区にあり、市道約700メートルの道路沿いにドラッグストア5軒が立ち並ぶ。ある店先にできた行列の先頭にいた同市川部の60代女性は4日、午前8時ごろから開店を待った。「並ぶのは6回目」。愛知県在住で電車通勤している長男に「買って送って」と頼まれた。同市の男性会社員(46)は「市内を探し回った。この店だけは入荷の見込みを教えてくれた」。

 8時30分ごろ、店長がマスクの入荷状況を伝えに来た。「30枚入り7箱、7枚入り四つ」-。列は30人ほどに延び、開店時間の9時より5分早く店が開いた。後ろの方にいた人たちは売り切れが分かると店を後にし、道を挟んだ向かいの店に走った。行列は長くなったがマスクは売っていなかった。出てきた人たちは両手に5個セットの箱ティッシュを提げていた。

 同市下尻毛の大学生と中学生の3兄弟は各店に分かれて並び、三男が7枚入りを一つ買えた。長男(19)は「残る備蓄は60枚入りの1箱と数枚だけ。5人家族だし、不安で使うに使えない」とため息をついた。

 県が3日、スーパーやホームセンターを含めた県内274店舗に実施した需要動向調査によると「在庫なし」の店はマスクで93%、消毒液で86%に上った。ある店の男性店長は「入荷はわずかで、毎日はない。持病がある人など、本当に必要な人に行き渡っていない気がして心苦しい」とこぼす。

◆医療機関「不安で仕事できない」危機感

 一方、医療機関でも不足が著しい。県保険医協会によると、診療所の多くは協同組合などを経由して購入するが、先月中旬ごろから手に入らなくなり、加盟する診療所の関係者の中には早朝のドラッグストアに並んでいる人がいる。協会の調査の自由回答欄には、「診察ができない」「マスクを滅菌して再利用している」「不安で仕事ができない」といった切実な訴えが書かれていた。永田正和副会長は「このままでは診療所を閉めなければいけなくなる」と危機感をあらわにした。

 全国マスク工業会や厚生労働省などは、新型コロナウイルス対策として「風邪や感染症の疑いがある人たちに使ってもらうことが何より重要」とし、マスクがない場合はタオルなどで口を覆い飛沫(ひまつ)を防ぐよう呼び掛けている。

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