過日、オリンピックの演出としてタレントの渡辺直美を「オリンピック」と「ピッグ(豚)」をかけた「オリンピッグ」として出演させる、というジェンダーギャップもルッキズムも甚だしい、恥ずかしい案に日本中が激怒した。そして私はと言えば、あの渡辺直美様なら、ものすごくカッコよくてファニーでセクシーな憧れのピッグをやってくれたりしちゃうんだろうな、と思いながらそれを眺めていた。

 私がなりたいと思う憧れの女性は渡辺直美、ファッションモデルの冨永愛、瀬戸内寂聴(!)、美輪明宏(?!)だ。

(撮影・三品鐘)

 特に今、渡辺直美様はかっこいい。最初は太った女芸人ということで男社会の芸人界で辛酸も舐(な)めたかと思うが、アメリカに行き大活躍、今や世界中が注目するインフルエンサーとしても脚光を浴びている。あのビッグサイズのボディーはもはや自虐やいじりの対象ではなく、堂々とした紛れもない自分を見せるもの。そんな感覚で惜しげもなくビッグサイズのボディーでセクシーに踊っている彼女をみると、いかに自分が世間で美しい、綺麗(きれい)とされている数値の常識に踊らされているか、よくわかる。そのくらい彼女は並外れてセクシーなのだ。そしてあの大きな三つ編みに、ビーズや毛糸まで編み込まれた常識外の髪型がアイコンになった彼女をみると、自分の「キレイ」は自分で作るものなのだという自信を与えてくれる。

 自信は地位や美貌や能力から湧いてくるものではない、といつも思っている。自分で自分がいけていると思えば、自信はそこから生まれる。私は料理が上手に作れる! oh great! 私は子育てのために毎日奮闘している! So great! 毎朝同じ時間に通勤している! Its great too! 自分で自分をいけていると信じて、人生というダンスフロアの上でセクシーに踊ってみよう。人々の脚光の目を浴びたら主役になれるのではない。あなたはあなたを生きているというだけでもう主役なのだ。

 馬鹿(ばか)にされてもけなされても、自信さえあれば私たちはセクシーなオリンピッグとして踊れる。あなたにそんなことをしてくる奴(やつ)は馬鹿極まりないけれど、あなたなら極上のオリンピッグにすらなれるだろう。


 岐阜市出身の歌人野口あや子さんによる、エッセー「身にあまるものたちへ」の連載。短歌の領域にとどまらず、音楽と融合した朗読ライブ、身体表現を試みた写真歌集の出版など多角的な活動に取り組む野口さんが、独自の感性で身辺をとらえて言葉を紡ぐ。写真家三品鐘さんの写真で、その作品世界を広げる。

 のぐち・あやこ 1987年、岐阜市生まれ。「幻桃」「未来」短歌会会員。2006年、「カシスドロップ」で第49回短歌研究新人賞。08年、岐阜市芸術文化奨励賞。10年、第1歌集「くびすじの欠片」で第54回現代歌人協会賞。作歌のほか、音楽などの他ジャンルと朗読活動もする。名古屋市在住。

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