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ふるさとへの便り

不便でも楽しめた時間

ベナン



洋裁工房の生徒が昼ご飯を料理している様子=ベナン
洋裁工房の生徒が昼ご飯を料理している様子=ベナン

 日増しに寒くなっていくこの頃、赤土の国で過ごした8カ月間を思い出します。私はJICA青年海外協力隊として、今年の3月まで西アフリカのベナンで洋裁工房(アトリエ)を活性化する活動をしていました。

 任期を短縮し復職した現在、仕事から帰宅して電気やストーブをつけながら、ふと、任地での生活を思い出します。そういえば、ベナンの住宅では雨が降りそうになると停電してしまい、何もすることがなくて寝ていたこともあったな。温かいシャワーを浴びながら、ベナンは毎日暑いから水シャワーでも気にならなかったな、洗濯は朝、手洗いだったな。雨が降ると道がぬかるんで最悪だったな。みんな元気に過ごしているかな...。

 今は家庭科教諭として、保育と調理の学習を生徒と共に行っています。1部屋に八つの調理台、オーブンにガス台、調理器具、電子レンジに、発酵器。授業の一環で調理技術を教える、少人数での実習。蛇口をひねれば水が出る、ガスも使える、実習材料はすぐに近くのスーパーで手に入るなんて、日本の生活は「豊かで手厚くて便利」。

 ベナンでは、一般的にご飯を食べるためには炭で火をおこすところから始まります。水も家庭によっては制限があります。夕方ご飯食べにおいでよと誘われ、2時間くらい待って暗い中で食べたのはトウモロコシの辛い料理。「時間がかかるし不便」かもしれませんが、その時間が楽しかった。火の明かりと懐中電灯しかなく、言葉も十分に伝えられない時間だったけれど、深く心に残っています。

 この思いはベナンで過ごしたからこそ気付きました。早くて便利な時間を過ごすだけが幸せではないのだと、生徒たちに伝えていきたいです。

 外田有梨さん 教員。自己啓発休業制度で昨年7月からベナンに派遣。福祉センターで社会的弱者、洋裁工房を支援。高山市出身。30歳。




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