岐阜新聞Web

  • 美濃
  • 飛騨
  • 美濃
  • 飛騨


白菊の記憶 飛騨川バス転落事故から50年

防災工事のエキスパート育成 人と技術で被害防ぐ



  • 国道41号を寸断した岩の山=1968年8月18日、加茂郡白川町河岐 
  • 国道41号で行われるのり面の防災工事=7日、加茂郡白川町河岐 

 「土石流のメカニズムが解明されていない時代。予測は難しかっただろう」。斜面災害の専門家として知られる岐阜大工学部教授の沢田和秀(50)。飛騨川バス転落事故とは"同い年"だ。事故現場付近で行われる岐阜国道事務所の防災工事にも協力している。

 県内にも大きな被害をもたらした今年7月の西日本豪雨では、県内16観測地点で史上1位となる雨量(72時間、岐阜地方気象台調べ)を記録。郡上市の3観測地点で累積雨量が千ミリを超え、過去最高を更新した。

 雨の降り方の予想が難しい時代にあって、沢田は「一枚も二枚も上手のことを考えるべき」と警鐘を鳴らす。そこで、ハードの整備に加えて力を入れるのが人材育成だ。

 沢田がセンター長を務める工学部付属インフラマネジメント技術研究センターでは、インフラの点検や診断ができる高度な技術者「社会基盤メンテナンスエキスパート(ME)」の養成講座を開催。昨年度まで10年間で412人を育てた。

 特徴は、行政と民間の両方から人材を受け入れる点。共通の高度な知識を持った技術者を養成し「災害現場でのスムーズな連携につながっている」。

 事故現場の国道41号で、のり面の防災工事の経験がある丸ス産業(加茂郡白川町)の常務で、岐阜大工学部非常勤講師の加藤十良は、ME資格を取得した一人だ。

 かつては「洞門」と呼ばれるコンクリート製の屋根を設けたが、費用がかかり過ぎるため、近年は金網など柔らかい素材を使った「高エネルギー吸収」の対策へと進化。「とにかく道路に土砂や落石を出さない」ことを最優先にしている。

 バス転落事故以来、現場ではハードの対策工事が進む一方、全国初の雨量規制が敷かれ、人材も育つなどソフト面も充実。効果は見えづらいが、西日本豪雨では県内で土砂災害による死者は出なかった。沢田は「対策を講じてきたからこそ何もない。誰も気付かないが」と語る。(文中敬称略)

 飛騨川バス転落事故から半世紀がたった。毎年、遺族らが事故現場近くの慰霊塔「天心白菊の塔」に花を手向けるが、当時を知る人は減っている。その後の道路・防災行政に多大な影響を与えた大惨事の教訓は、現代にどう生かされているのか。事故の記憶と記録をたどる。

<8月16日朝刊掲載>




  • 1