整形外科医 今泉佳宣氏

 前回、関節リウマチのお話をしました。関節リウマチは全身の関節炎が進行して関節の痛みと機能障害を生じる病気ですが、最近は治療薬の進歩により関節リウマチの進行を抑えることが可能となりました。その進行を抑えるためには発病後のできるだけ早い時期に診断して、治療を始めることが重要です。

 関節リウマチの診断には、長い間1987年の米国リウマチ学会(ACR)による分類(診断)基準が使われてきました。しかし、この基準では早期の患者さんを関節リウマチと診断できないことが多く、早期診断には適していませんでした。こうしたことから、2010年にACRおよび欧州リウマチ学会(EULAR)が合同で新しい分類(診断)基準を発表しました=表=。

 この基準では、少なくとも一つ以上の関節で腫れを伴う炎症(滑膜炎)がみられ、その原因として関節リウマチ以外の病気が認められない場合に、①症状がある関節の数②リウマトイド因子(RF)または抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)③CRPまたは赤沈(血沈)④症状が続いている期間―の4項目についてのそれぞれの点数を合計し、6点以上であれば関節リウマチと診断し、抗リウマチ薬による治療を開始します。日本でもこの基準が検証され、早い時期での関節リウマチ診断に役立つことが示されました。ただし、関節リウマチ以外の病気でも合計6点以上になってしまうことがあり、点数をつける前に他の疾患がないか十分に検討する必要があります。

 症状がある関節は大関節と小関節に分けられます。大関節とは肩、肘、股、膝、足関節を指します。そして小関節とは、手指、足趾(そくし)、手関節などを指します。これらの関節に加えて顎関節、胸鎖関節、肩鎖関節を含めることもあります。そしてこれらの関節の症状が6週以上続くことがポイントとなります。

 血液検査で測定するリウマトイド因子や抗CCP抗体は患者さんの示す異常値の幅が大きく、正常上限の3倍までを低値陽性、3倍を超えるものを高値陽性としています。また、CRPや赤沈も血液検査で測定します。

 この表の中で最も項目が多いのは「症状がある関節の数」であり、患者さんの全身の関節を詳細に診ることが関節リウマチの診断で最も重要なことだといえます。

(朝日大学保健医療学部教授)